ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百三十八話

湖が割れて現れた一本道を、#朔夜たちは静かに歩いていた。

左右には壁のようにそびえ立つ湖水。

その向こうでは、先ほどまで小舟の周囲を泳いでいた巨大な金魚たちが、ゆったりと尾を揺らしている。その姿は幻想的でありながら、どこか神聖で、人を寄せ付けない威圧感を放っていた。

誰一人として口を開かない。

聞こえるのは、自分たちの足音だけだった。

コツ……コツ……。

石畳へ靴底が触れる乾いた音だけが、静寂の世界へ吸い込まれていく。

やがて道の先に、巨大な門が姿を現した。

湖底に眠っていたとは思えないほど美しい石造りの建物。

苔一つ生えておらず、まるで今この瞬間まで誰かが手入れを続けていたかのようだった。

双子の少年は迷うことなく門をくぐる。

#朔夜たちも後に続いた。

建物の中はひんやりとしていた。

壁には古い文様が刻まれ、天井には北斗七星を模したような装飾が広がっている。

「……誰も、いないな。」

アキノリが小声で呟く。

しかし、その声さえ壁へ吸い込まれるようで、不思議と反響しない。

通路は真っ直ぐ続いていた。

左右へ分かれる道もない。

罠らしい罠も見当たらない。

あまりにも何も起こらないことが、逆に不気味だった。

数分ほど歩いた頃。

通路は突然、大きく開けた。

「……広間?」

ナツメが辺りを見回す。

そこは神殿の中心部と思われる円形の空間だった。

天井は見上げるほど高く、中央には巨大な円形の石床。

床には亀と蛇が絡み合う紋様が刻まれ、その四方には同じ姿をした石像が二対、互いに向かい合うように鎮座している。

[newpage]

玄武――。

誰もがそう思った。

「ここが……。」

トウマが言いかけた、その時だった。

カコンッ――。

乾いた音が、広間へ響いた。

「っ!?」

次の瞬間。

ゴゴゴゴゴ……!!

背後の通路から轟音が響く。

振り返ると、石壁が天井から勢いよく落下し、唯一の出口を完全に塞いでいた。

「しまった!」

アキノリが駆け寄る。

しかし押しても叩いても、石壁は微動だにしない。

その直後だった。

ゴボッ……

ゴボゴボゴボ……

広間に並ぶ玄武の石像が低く唸るような音を立てる。

その口から勢いよく水が噴き出した。

「み、水!?」

最初は細い水流だった。

だが、その勢いは見る間に増していく。

四つの石像から絶え間なく水が流れ込み、あっという間に床一面を覆っていった。

「早く出口を!」

ケータが叫ぶ。

だが、どこにも扉はない。

壁を探しても、隠し通路らしきものも見つからなかった。

[newpage]

水位は容赦なく上昇する。

足首。

膝。

腰。

胸。

冷たい水が身体を包み込んでいく。

「このままじゃ……!」

ナツメが顔を青くする。

全員が必死に壁へ手を伸ばすが、何も起こらない。

やがて床へ足が届かなくなった。

泳ぎながら必死に天井を見上げる。

それでも水位は止まらない。

首元。

顎。

口元。

「ぷはっ!」

残された空気は、ほんのわずか。

誰もが息を荒げ始める。

「#朔夜!」

アキノリの声が響く。

#朔夜も必死に周囲を見回した。

どこかに仕掛けがあるはずだ。

このまま終わるはずがない。

だが見つからない。

水面はついに天井目前まで迫った。

残された空間は、人が顔を出せる程度しかない。

「……っ!」

肺が苦しい。

空気も足りない。

もう限界だ――。

その瞬間。

胸元が熱を帯びた。

青い宝石が、水中で静かに輝き始める。

淡い光はゆっくりと強さを増し、やがて一本の光線となって水中を真っ直ぐ進んだ。

「……!」

光の先。

玄武の石像。

その額へ埋め込まれていた翡翠の宝玉へ、青白い光が吸い込まれていく。

キィィィン……

澄んだ音色が広間へ響いた。

次の瞬間。

ゴォン――。

神殿全体が震えた。

ピタリ、と。

四つの石像から噴き出していた水が止まる。

「止まった……!」

アキノリが驚きの声を漏らす。

それと同時に、広間の床から低い排水音が響き始めた。

ゴボゴボ……

渦を巻くように水位が下がっていく。

足が床へ届く。

膝。

足首。

やがて広間から水は完全に消え去っていた。

「助かった……。」

ケータがその場へ座り込む。

全員が荒い息を整えていた、その時。

ゴゴゴゴゴ……

再び地鳴りが響いた。

誰もが顔を上げる。

玄武の石像だった。

巨大な石の身体へ無数の亀裂が走る。

蛇の瞳がゆっくりと開く。

続いて亀の首が軋むような音を立てながら持ち上がった。

[newpage]

石ではない。

生きている。

いや――。

石像そのものが命を宿したかのようだった。

巨大な四肢が床を踏み鳴らす。

ズシン――。

広間全体が震える

双子の少年は静かにその姿を見つめ、小さく告げた。

「第一の試練。」

「玄武様がお目覚めになられた。」

#朔夜たちは息を呑みながら、ゆっくりと立ち上がる玄武を見上げていた。

 

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