ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#百三十九話

巨大な石像だった玄武は、ゆっくりと四肢を動かし始めた。

石が擦れ合う重々しい音が神殿中へ響く。

やがてその瞳が淡く青白く輝き、#朔夜たちを見据えた。

「……来るぞ!」

アキノリの叫びと同時だった。

ズンッ!!

巨体からは想像もつかない速度で玄武が地を蹴る。

床石が砕け、広間全体が震えた。

「速っ!?」

ケータが慌てて飛び退く。

次の瞬間、玄武の前足が振り抜かれ、衝撃波が石畳を一直線に砕きながら迫る。

#朔夜は咄嗟に跳び退き、その一撃をかわした。

轟音と共に背後の石柱が粉々に砕け散る。

「おいおい……試練ってレベルじゃない!」

トウマが顔を引きつらせた。

玄武は何も語らない。

ただ侵入者を排除する。

その意思だけが、圧倒的な威圧感となって空間を支配していた。

「玄武!」

炎をまとった朱雀が空へ舞い上がる。

「目を覚ませ! こやつらは敵ではない!」

しかし玄武は朱雀を一瞥しただけだった。

「……黙れ、朱雀。」

低く重い声が響く。

「その姿で我に語る資格はない。」

朱雀は苦々しく舌打ちした。

「……相変わらず堅物だな。」

「貴様こそ変わらぬ。」

玄武は容赦なく口を開いた。

「幻王様を『幻ちゃん』などと呼び、剣武魔人の資格を失った愚か者が。」

「…………。」

その一言に朱雀の顔がぴくりと引きつる。

「そ、それは若気の至りというやつだ!」

「自業自得だ。」

「うぐっ……。」

反論できなかった。

「そこは否定しないんだ……。」

ケータが思わず小声で突っ込む。

だが、そんなやり取りも束の間だった。

玄武が再び巨体を沈める。

[newpage]

「来る!」

#朔夜が叫ぶ。

「ナツメさんは私が守る!」

ミッチーが颯爽と前へ飛び出した。

「おおっ!」

ナツメが少し期待した、その瞬間。

ドゴォォォン!!

玄武の尻尾が軽く薙ぎ払われる。

「なッ!!!!!!?」

ミッチーは綺麗な放物線を描きながら彼方へ消えていった。

「ミッチーッ!!」

「早っ!」

「一瞬だったズラ……。」

まさに即落ち二コマだった。

「ジバニャン!」

「任せるニャン!」

ジバニャンが勢いよく飛び出す。

「百烈肉球!」

無数の拳が玄武へ叩き込まれる。

ドドドドドドドドッ!!

連続する打撃音が神殿へ響く。

「まだズラァ!」

コマさんが大きく跳び上がった。

「落下犬岩石ズラァァ!!」

巨大な岩石となって玄武の甲羅へ激突する。

ゴォォォン!!

重い衝撃音。

玄武の巨体がわずかに後退した。

「効いてる!」

トウマが声を上げる。

さらに朱雀が炎を纏って急降下する。

「はぁぁぁっ!!」

炎の翼が玄武を包み込んだ。

爆炎が巻き起こる。

砂煙が広間を覆った。

[newpage]

「やったか!?」

ケータが息を呑む。

その煙の中から、ゆっくりと巨大な影が現れる。

玄武だった。

傷こそ付いているものの、その眼光はまるで衰えていない。

「……まだだ。」

玄武は静かに呟いた。

そして。

その視線が、#朔夜へ向けられる。

「……?」

#朔夜は胸元へ手を当てた。

青い宝石が、淡く輝いている。

玄武は宝石を見る。

そして#朔夜を見る。

まるで何かを確かめるように。

「なるほど……。」

低く呟いた、その瞬間だった。

玄武の身体が青白い光へ変わる。

「えっ!?」

「玄武が!」

一筋の光。

まるで流星のように一直線となって。

#朔夜へ飛び込んだ。

「#朔夜!!」

ナツメの叫び。

光は#朔夜の胸を貫き、その身体へ吸い込まれていく。

「がっ……!」

全身を焼かれるような熱。

膨大な妖力が身体中を駆け巡る。

足元がふらつき、朔夜はその場へ膝をついた。

[newpage]

「#朔夜!」

ナツメたちが駆け寄ってくる。

大丈夫。

そう言おうとした。

しかし。

「……え?」

口が動かない。

身体も。

指一本すら思うように動かなかった。

何かが内側から溢れてくる。

止められない。

『器よ。』

頭の中へ響く重々しい声。

『その身体、借り受ける。』

「や……め……。」

声にならない。

右腕が勝手に持ち上がる。

「#朔夜……?」

ナツメが足を止めた。

その瞳に、不安が広がる。

#朔夜は必死に抗う。

動くな。

止まれ。

みんなを傷付けるな。

しかし身体は言うことを聞かない。

右腕へ膨大な力が集まる。

周囲の空気中から水滴が集まり、一つの巨大な水球を形成した。

「まずい!」

アキノリが叫ぶ。

次の瞬間。

水球が圧縮され、極太の激流となって放たれた。

まるで巨大な滝が一直線に襲い掛かるかのような一撃。

「伏せろォ!!」

全員が咄嗟に飛び退く。

激流は石壁へ直撃し、その一角を容易く粉砕した。

「はぁ……はぁ……。」

#朔夜の意識は残っている。

だが、身体はもう自分のものではなかった。

[newpage]

全身を青白い妖気が包み込む。

瞳の色が静かに変わる。

足元から水流が渦を巻き始める。

その姿は、もはや人ではない。

#朔夜の姿を借りた、もう一柱の神。

剣武魔人――

**玄武。**

その力が、今ここに顕現した___

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