ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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百合ティストでプロット出ししてみました。朔夜は無自覚百合体質ですが、まなちゃんはグイグイ行く系の天然百合体質かなぁ?と。


#百四十九話

日が暮れていくのに比例するように、#朔夜の持つ荷物は増えていった。

黒猫マカロンの箱。墓石ティラミスの紙袋。ハロウィン限定の小物に、撮影用として購入したカボチャの飾り。

両手だけでは足りず、腕にまで袋が掛かっている。

「#朔夜、大丈夫?」

ナツメに声を掛けられ、#朔夜は荷物の隙間から顔を覗かせた。

「大丈夫ですけど……これ、僕の物は一つもないですよね?」

「あ……」

全員の動きが止まった。

どうやら、ようやく気付いたらしい。

「ご、ごめん。さすがに持たせすぎたね」

ナツメが自分の紙袋を取り、しずかとアヤメもそれぞれの荷物を引き取った。まなも慌てて、菓子の箱を朔夜の腕から外す。

「ごめんね、#朔夜くん。ついお願いしちゃって」

「いえ。持てないわけじゃなくて…」

「そういう問題じゃないでしょ」

猫娘も呆れたように言いながら、自分の袋を取った。

一気に腕が軽くなり、#朔夜は小さく息を吐く。手元に残ったのは、全員で買った土産と撮影用の小物だけだった。

「これくらいなら...」

「最初から言えばよかったのに」

「言おうとする前に増えていったんだ……」

その返事に、皆から笑いがこぼれた。

 

     ◇

 

次に入ったカフェでは、夕方からの限定メニューが販売されていた。

赤いベリーソースを添えた棺型のチョコレートケーキ。紫色のクリームが乗った魔女のカップケーキ。血を模した赤い炭酸飲料。

窓の外では、明かりを灯したカボチャのランタンが揺れている。

スイーツを食べ終えた頃、しずかが席を立った。

「私、少しお手洗いへ行ってくるわね」

「私もご一緒します」

アヤメも続き、二人は店の奥へ向かっていった。

席に残ったのは、#朔夜、ナツメ、まな、猫娘の四人。

まなは先ほど撮った写真を眺めながら、楽しそうに猫娘へ話し掛けている。

「猫姉さん、この写真すごくよく撮れてますよ!」

「そう? まあ、悪くないじゃない」

猫娘は答えながらも、時折#朔夜へ視線を向けていた。

やがて、まなが写真を拡大することに夢中になった頃。

猫娘が少し身を乗り出し、声を落とす。

「ねえ、#朔夜」

「はい?」

「あなたって……女の子だよね?」

あまりにも唐突だった。

#朔夜は目を瞬き、素直に頷く。

「え? はい」

「やっぱり」

「えええっ!?」

大声を上げたのは、猫娘ではなくまなだった。

店内の客が何人か振り返り、朔夜は肩を跳ねさせる。

「まなさん、声が……」

「だ、だって! #朔夜くん、女の子なの!?」

「そうだよ?」

ナツメが、さも当然のことのように答えた。

「#朔夜は勘違いされやすいけど、女の子だよ?」

「ナツメちゃんは知ってたの!?」

「もちろん。しずかちゃんもアヤメちゃんも知ってるよ」

まなはナツメと#朔夜を交互に見た。

驚きで大きくなっていた目が、今度は輝き始める。

「#朔夜ちゃんだったんだ!」

「え――」

次の瞬間、まなが勢いよく朔夜へ抱きついた。

[newpage]

「ちょ、待って……!」

背中が椅子へ押しつけられ、まなの腕の中に完全に閉じ込められる。

身動きが取れない。

「ま、待って……息できない……!」

「あっ!」

まなが慌てて腕を緩めた。

解放された朔夜は、机へ手をついて息を整える。

「ご、ごめんね! 嬉しくて、つい……」

「びっくりした……」

すっかり敬語が抜けている#朔夜を見て、ナツメが笑いを堪えていた。猫娘も口元へ手を当てている。

「それにしても、よく分かりましたね」

落ち着きを取り戻した#朔夜が、猫娘へ尋ねた。

「今日一日見てればね。ナツメたちの接し方もそうだし、何となく気付いてたのよ」

「そうだったんですね」

「どうして訂正しなかったの?」

「隠しているわけではないんです。ただ、最初に間違えられて……訂正する機会を逃しているうちに、そのままになってしまって」

「そんなことまで流されるんじゃないわよ」

「えぇ……今さら言うのも気まずくて」

「今さらだから言うの!」

猫娘の即答に、ナツメが吹き出した。

まなはまだ興奮が収まらないらしく、#朔夜の顔を間近から見つめている。

「じゃあ、これから朔夜ちゃんって呼んでいい?」

「呼びやすい方で構いませんよ」

「やった! #朔夜ちゃん!」

「近い、近いです」

再び抱きつかれそうになり、#朔夜は椅子ごと僅かに後ろへ下がった。

そこへ、しずかとアヤメが戻ってくる。

「どうしたの? ずいぶん賑やかだけど」

「#朔夜くんが朔夜ちゃんだったの!」

まなが勢いよく報告した。

しずかは一度目を瞬き、穏やかに頷く。

「ええ、そうよ?」

「まなさんは知らなかったんですね」

アヤメも不思議そうに首を傾げた。

「二人とも反応が軽い!」

「皆さんにとっては、前から知っていることだから……」

#朔夜が困ったように答えると、再び笑いが起きた。

 

     ◇

 

カフェを出る頃には、日はすっかり沈んでいた。

通りは昼間以上の人混みになっている。

魔女、幽霊、狼男、全身に包帯を巻いたミイラ。色とりどりの仮装をした人々が行き交い、店先から賑やかな音楽が流れていた。

「夜になると、もっとすごいね!」

まなが目を輝かせる。

#朔夜は皆とはぐれないよう、少しだけ歩幅を狭めた。

ふと、黒いマントを翻す一団が目に入った。

青白い肌。

尖った牙。

赤い瞳。

吸血鬼の仮装だった。

一組だけではない。

向かいの店にも、路地の入口にも、同じような格好をした者たちがいる。

「……吸血鬼、多くない?」

思わず口にすると、ナツメも周囲を見回した。

「今年の流行なのかな?」

「ハロウィンらしくて格好いいよね!」

まなは気にした様子もなく、吸血鬼姿の集団を眺めている。

けれど、猫娘は答えなかった。

黄色い瞳を細め、雑踏の奥を見つめている。

「猫娘さん?」

「……何でもないわ。みんな、離れないで」

その声は普段どおりに聞こえたが、どこか固かった。

#朔夜も改めて辺りを見る。

仮装にしては、妙に動きが揃っている。

通りを楽しんでいるように見えながら、時折、全員が同じ方向へ視線を送っていた。

[newpage]

その先。

人混みの向こうに、一人の女が立っている。

黒い衣装。

青白い肌。

暗がりの中でもはっきりと分かる、赤い瞳。

周囲の吸血鬼たちとは比べものにならないほど、完成度の高い仮装だった。

彼女は遠くから、こちらを眺めているように見えた。

「……あの人」

「どうしたの、#朔夜ちゃん?」

まなに呼ばれ、#朔夜が一瞬だけ目を離す。

もう一度見た時には、女の姿は人混みの中へ消えていた。

「いえ……何でもありません」

気のせいかもしれない。

ハロウィンなのだから、吸血鬼が多くても不思議ではない。

そう思いながらも、胸の奥には小さな違和感が残った。

 

     ◇

 

少し離れた建物の屋上。

暗闇に潜んでいたウォルフガングは、街へ満ち始めた吸血鬼の気配を察し、低く鼻を鳴らした。

「……横槍か」

標的の姿さえ、まだ確かめていない。

ここで動けば、余計な争いに巻き込まれるだけだ。

ウォルフガングは賑わう通りを見下ろした後、音もなく闇へ姿を消した。

入れ替わるように、人混みの奥で赤い瞳が細められる。

「人と怪物の境目が曖昧になる夜……」

カミーラは、楽しげに微笑んだ。

「ハロウィンとは、本当に都合のよい祭りですこと」

吸血鬼たちは仮装客へ紛れ、静かに街の各所へ散っていく。

\賑やかな夜の中へ本物の闇が入り込み始めていることを、#朔夜たちはまだ知らなかった。

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