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道祖神とはその名の通り道を守る神様です。民俗学に詳しい人にとってはお馴染みの言葉ですよね。
また、wikiで調べてみたのですが、村と村をつなぐ道(旅路)によくあるそうで。村を外から持ち込まれる疫病から守る意味もあったようです。あるいは有るモノを村から出さないとか。
まぁ、私自身道祖神を始めて知ったのは洒落怖の『八尺様』ですからね。
夕暮れの商店街。
「じゃあ交番まで一緒に行こうか」
#朔夜がそう言うと、迷子の少年は小さく頷いた。
ドラえもんも紙袋を抱え直す。
「近くなら、あっちだね」
三人は商店街を抜け、住宅街へ入っていった。
――数分後。
「……あれ?」
#朔夜は足を止めた。
見覚えのある自販機。
見覚えのある電柱。
「ここ、さっき通らなかった?」
ドラえもんも辺りを見回す。
「……通った」
「だよね」
迷子の少年だけは、きょとんとしていた。
「道、間違えた?」
「いや……」
#朔夜は眉をひそめる。
一本道だ。
曲がり角も少ない。
迷うような場所じゃない。
それなのに。
また同じ場所へ戻っている。
[newpage]
さらに十分後。
「……またここ」
完全に同じ場所だった。
「うそぉ……」
ドラえもんが難しい顔をする。
「これはちょっと変だな」
「やっぱり?
#朔夜も違和感を確信していた。
ただの迷子じゃない。
空気そのものが、妙に歪んでいる。
「もしかして……」
ドラえもんの表情が引き締まる。
未来新聞。
歴史犯罪者消失事件。
“本来存在しない異変”。
そこへ来て、この不可解な現象。
「秘密道具が悪用されてる可能性もある……」
ぶつぶつ呟きながら、ドラえもんは四次元ポケットへ手を突っ込んだ。
「こういう時はこれ!」
取り出したのは、鹿撃ち帽にパイプ、虫眼鏡がセットになった妙に本格的な箱。
「シャーロック・ホームズセット〜!」
「うわ、まんま……」
#朔夜は思わず呟いた。未来なのに、発想がやたら古典的である。
[newpage]
ドラえもんは帽子を被り、パイプを咥え、虫眼鏡を構えた。
「ふむ……」
急にそれっぽくなる。
「足跡よし」
「風向きよし」
「空間歪曲反応……なし?」
「空間歪曲って何」
「ボクもよく知らない」
「知らないんだ……」
だが、ドラえもんの顔色は徐々に曇っていった。
「おかしいなぁ」
機械を取り出して測定する。
「未来道具の反応なし」
「時空犯罪の痕跡なし」
「幻覚ガス系でもない……」
「つまり?」
「分からない」
即答だった。
「えぇ……」
#朔夜は若干引いた。
未来の探偵セットなのに、分からないらしい。
いや。
むしろ。
(……壊れてる?)
ふと、そんな感覚がよぎる。
道具は正常に動いている。
でも、“何か”だけを認識できていない。
そんな違和感。
[newpage]
その時。
#朔夜の視界に、小さな石像が入った。
道端の隅。
苔むした、小さな道祖神。
「……あ」
足が止まる。
祖母の家で見たことがあった。
境界を守る神様。
道を見守る存在。
「どうしたの?」
ドラえもんが首を傾げる。
#朔夜は少し考え――。
パーカーのポケットを探った。
出てきたのは、飴玉。
道場帰りにもらったものだ。
「……気休めだけど」
ぽん、と道祖神の前へ置く。ドラえもんが目を丸くした。
「え、何してるの?」
「こういうの、怒らせると面倒って、おばあちゃんが」
「えぇ……」
半信半疑の顔。
だが数秒後。
ドラえもんも、じーっと紙袋を見た。
「……嫌だなぁ」
「何が」
「これ、高いやつなのに……」
ぶつぶつ言いながら、どら焼きを一個取り出す。
そして、渋々供えた。
「これでいい?」
「たぶん」
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――その直後。
風が吹いた。
ざわり、と。
空気が変わる。
「……あれ?
ドラえもんが顔を上げた。
目の前。
交番へ続く道が、まっすぐ伸びている。
さっきまで無かったはずの景色。
「戻ってる……?」
#朔夜が呟く。
試しに歩いてみる。
今度は、同じ場所へ戻らない。
普通に進める。
数分後。
本当に交番へ着いてしまった。
「……え?」
ドラえもんが時計を見る。
「そんな」
「どうしたの?」
「ボク達、体感だと三十分以上歩いてたよね?」
「うん」
「でも実際は……五分しか経ってない」
沈黙。
お巡りさんは、そんな二人を不思議そうに見ていた。
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迷子の少年は、無事保護された。
「ありがとうございます」
警官が頭を下げる。
少年は振り返り、小さく手を振った。
その目が、一瞬だけ細く笑った気がして。
#朔夜は、何となく胸騒ぎを覚えた。
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その日の夜。
夕食後。
何となく点けたテレビから、ニュースキャスターの声が流れていた。
『本日、隣町で行方不明となっていた園児が無事保護されました』
「……え?」
#朔夜は顔を上げる。
画面に映った写真。
夕暮れに出会った、あの少年だった。
『発見時、男児は月見町付近にいたとのことです』
『しかし、幼稚園児が単独で隣町まで移動したとは考えにくく――』
キャスターが困惑気味に話している。
画面の端には、保護された場所の地図。
かなり離れていた。
普通なら、子供が歩ける距離じゃない。
「……」
#朔夜は無言でテレビを見つめた。
ふと。
脳裏に蘇る。
あの言葉。
『“向こう”の匂いがする』
窓の外では、夜風が静かに揺れていた。