ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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道祖神とはその名の通り道を守る神様です。民俗学に詳しい人にとってはお馴染みの言葉ですよね。
また、wikiで調べてみたのですが、村と村をつなぐ道(旅路)によくあるそうで。村を外から持ち込まれる疫病から守る意味もあったようです。あるいは有るモノを村から出さないとか。
まぁ、私自身道祖神を始めて知ったのは洒落怖の『八尺様』ですからね。



#第十五話 マヨイミチ

夕暮れの商店街。

「じゃあ交番まで一緒に行こうか」

#朔夜がそう言うと、迷子の少年は小さく頷いた。

ドラえもんも紙袋を抱え直す。

「近くなら、あっちだね」

三人は商店街を抜け、住宅街へ入っていった。

――数分後。

「……あれ?」

#朔夜は足を止めた。

見覚えのある自販機。

見覚えのある電柱。

「ここ、さっき通らなかった?」

ドラえもんも辺りを見回す。

「……通った」

「だよね」

迷子の少年だけは、きょとんとしていた。

「道、間違えた?」

「いや……」

#朔夜は眉をひそめる。

一本道だ。

曲がり角も少ない。

迷うような場所じゃない。

それなのに。

また同じ場所へ戻っている。

[newpage]

さらに十分後。

「……またここ」

完全に同じ場所だった。

「うそぉ……」

ドラえもんが難しい顔をする。

「これはちょっと変だな」

「やっぱり?

#朔夜も違和感を確信していた。

ただの迷子じゃない。

空気そのものが、妙に歪んでいる。

「もしかして……」

ドラえもんの表情が引き締まる。

未来新聞。

歴史犯罪者消失事件。

“本来存在しない異変”。

そこへ来て、この不可解な現象。

「秘密道具が悪用されてる可能性もある……」

ぶつぶつ呟きながら、ドラえもんは四次元ポケットへ手を突っ込んだ。

「こういう時はこれ!」

取り出したのは、鹿撃ち帽にパイプ、虫眼鏡がセットになった妙に本格的な箱。

「シャーロック・ホームズセット〜!」

「うわ、まんま……」

#朔夜は思わず呟いた。未来なのに、発想がやたら古典的である。

[newpage]

ドラえもんは帽子を被り、パイプを咥え、虫眼鏡を構えた。

「ふむ……」

急にそれっぽくなる。

「足跡よし」

「風向きよし」

「空間歪曲反応……なし?」

「空間歪曲って何」

「ボクもよく知らない」

「知らないんだ……」

だが、ドラえもんの顔色は徐々に曇っていった。

「おかしいなぁ」

機械を取り出して測定する。

「未来道具の反応なし」

「時空犯罪の痕跡なし」

「幻覚ガス系でもない……」

「つまり?」

「分からない」

即答だった。

「えぇ……」

#朔夜は若干引いた。

未来の探偵セットなのに、分からないらしい。

いや。

むしろ。

(……壊れてる?)

ふと、そんな感覚がよぎる。

道具は正常に動いている。

でも、“何か”だけを認識できていない。

そんな違和感。

[newpage]

その時。

#朔夜の視界に、小さな石像が入った。

道端の隅。

苔むした、小さな道祖神。

「……あ」

足が止まる。

祖母の家で見たことがあった。

境界を守る神様。

道を見守る存在。

「どうしたの?」

ドラえもんが首を傾げる。

#朔夜は少し考え――。

パーカーのポケットを探った。

出てきたのは、飴玉。

道場帰りにもらったものだ。

「……気休めだけど」

ぽん、と道祖神の前へ置く。ドラえもんが目を丸くした。

「え、何してるの?」

「こういうの、怒らせると面倒って、おばあちゃんが」

「えぇ……」

半信半疑の顔。

だが数秒後。

ドラえもんも、じーっと紙袋を見た。

「……嫌だなぁ」

「何が」

「これ、高いやつなのに……」

ぶつぶつ言いながら、どら焼きを一個取り出す。

そして、渋々供えた。

「これでいい?」

「たぶん」

[newpage]

――その直後。

風が吹いた。

ざわり、と。

空気が変わる。

「……あれ?

ドラえもんが顔を上げた。

目の前。

交番へ続く道が、まっすぐ伸びている。

さっきまで無かったはずの景色。

「戻ってる……?」

#朔夜が呟く。

試しに歩いてみる。

今度は、同じ場所へ戻らない。

普通に進める。

数分後。

本当に交番へ着いてしまった。

「……え?」

ドラえもんが時計を見る。

「そんな」

「どうしたの?」

「ボク達、体感だと三十分以上歩いてたよね?」

「うん」

「でも実際は……五分しか経ってない」

沈黙。

お巡りさんは、そんな二人を不思議そうに見ていた。

[newpage]

迷子の少年は、無事保護された。

「ありがとうございます」

警官が頭を下げる。

少年は振り返り、小さく手を振った。

その目が、一瞬だけ細く笑った気がして。

#朔夜は、何となく胸騒ぎを覚えた。

[newpage]

その日の夜。

夕食後。

何となく点けたテレビから、ニュースキャスターの声が流れていた。

『本日、隣町で行方不明となっていた園児が無事保護されました』

「……え?」

#朔夜は顔を上げる。

画面に映った写真。

夕暮れに出会った、あの少年だった。

『発見時、男児は月見町付近にいたとのことです』

『しかし、幼稚園児が単独で隣町まで移動したとは考えにくく――』

キャスターが困惑気味に話している。

画面の端には、保護された場所の地図。

かなり離れていた。

普通なら、子供が歩ける距離じゃない。

「……」

#朔夜は無言でテレビを見つめた。

ふと。

脳裏に蘇る。

あの言葉。

『“向こう”の匂いがする』

窓の外では、夜風が静かに揺れていた。

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