ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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あ~あ。梟がヤバい方向に…
んで、今コレ
零:「危険から遠ざけて保護する」
カイラ:「正体と懐かしい気配を調べる。危害は許さない」
梟:「朱夏候補として酒呑童子様の前へ連行する」
酒呑童子:「梟、待て。そいつを刺激するな」
ウォルフガング:「すぐ壊さず、まず実力を試したい」
カミーラ:「面白そうだからもう少し観察したい」
赤髪の女性:「命令には従わなければならないが、殺すことには迷いがある」
ペンダントの声:「脅威になる前に始末しろ」


#百五十二話

夜の街を、ひとつの影が音もなく渡っていた。

屋根から屋根へ。電柱からビルの屋上へ。人の目には映らぬ高さを選びながら、[[rb:梟 > フクロウ]]は眠りにつきつつある町を見下ろしていた。

朱夏様の生まれ変わり。

酒呑童子が探し求める姫君。

その手掛かりを求めて、梟は幾晩も飛び続けている。命じられたわけではない。だが、あの御方が望んでいる以上、自分が休む理由などなかった。

「酒呑童子様の御心を煩わせぬためにも……必ずや、我が」

呟いた声は、夜風に溶けた。

けれど、その日も確かな手掛かりは得られなかった。

翌日。梟は酒呑童子様の気配を追い、人気のない場所へ降り立った。

そこには酒呑童子のほか、妖怪探偵団の者たちが集まっていた。

話題は、先日の女郎蜘蛛の一件だった。

宝剣殿への侵入。土蜘蛛の動き。女郎蜘蛛の背後に、さらに何者かがいる可能性。そして――#兔谷#朔夜という少年が、その身へ玄武を宿したこと。

「青き宝石と、不動雷鳴剣が共鳴した……か」

酒呑童子様が低く呟く。

梟は離れた木陰から、その様子を見つめていた。

現場にいた者たちから話を聞くのは当然のことだ。そんなことは、梟にも分かっている。

それでも胸の奥には、鈍い痛みが残った。

かつて敵として刃を交えた者たちには声を掛ける。

しかし、自分には何も命じない。

話し合いが終わり、妖怪探偵団が立ち去った後、梟は意を決して酒呑童子様の前へ進み出た。

「酒呑童子様」

「何だ、梟」

「女郎蜘蛛の背後にいる者の探索、我にもお命じください。人目につかず動くことならば、我にも――」

「必要ない」

短い返答だった。

梟の言葉が止まる。

「しかし、我ならば敵の動きを探り――」

「今は勝手に動くな」

酒呑童子の声は冷たかった。

「敵の正体も、狙いも分からい。玄武まで関わった以上、軽々しく動けば事態を乱す。命があるまで待機せよ」

梟を危険から遠ざける意味も、その言葉には含まれていたのかもしれない。

だが、梟には届かなかった。

「……御意」

深く頭を下げる。

反論することなどできない。

酒呑童子様が間違っているはずもない。

任せてもらえないのは、自分に相応の力がないからだ。

ただ、それだけのことだった。

[newpage]

人の姿を取り、梟は町外れの公園にあるベンチへ腰を下ろしていた。

遊具には誰もいない。夕暮れの空を、鳥の群れが横切っていく。

「我は……何のために」

そこまで口にして、梟は俯いた。

「あの……」

不意に、横から声がした。

顔を上げると、一人の少女が少し離れたところに立っていた。手には買い物袋を提げている。

「お兄さん、大丈夫ですか?」

「……私のことか?」

「ほかに誰もいないし。すごく元気がなさそうだったから」

見知らぬ人間の娘だった。

妖怪である自分の正体にも、当然気づいていない。

「人間の娘には関係のないことだ」

梟は立ち上がろうとした。

「そうかもしれないけど……一人で悩んでると、もっとつらくならない?」

足が止まる。

少女は困ったように笑った。

「話したくないことまで話さなくていいよ。ただ、少しだけなら聞けるから」

なぜ、自分は見ず知らずの人間に足を止めたのだろう。

梟にも分からなかった。

「私には、お仕えしたい御方がいる」

妖怪のことも、姫君のことも伏せたまま、言葉を選ぶ。

「その御方のお役に立ちたいと、常に願っておる。されど、あの御方は私を頼ってはくださらぬ」

「お仕事を任せてもらえないの?」

「……そのようなものだ。我よりも、かつて敵対していた者たちの力を借りておられる」

少女はしばらく考え込んだ。

「その人にも、何か理由があるのかもしれないけど……」

そう前置きしてから、まっすぐ梟を見る。

「頼まれたことだけが、誰かの役に立つことじゃないと思うよ」

「何?」

「お兄さんにできることをやればいいんじゃないかな。大きなことじゃなくても、できることから」

梟は目を見開いた。

「私に……できること」

「うん。自分を責めてばっかりじゃ、見つかるものも見つからないよ」

少女の意図は、ほんの少し気持ちを軽くしてほしいという、それだけだった。

だが梟の胸には、別の形で言葉が落ちた。

命を待つだけではない。

自分にしかできぬ使命を果たせばよい。

「そうか……そういうことであったか」

「え?」

梟は立ち上がった。

沈んでいた瞳に、再び強い光が宿る。

「礼を言う、人間の娘よ。私は私にしか果たせぬ使命を、必ず成し遂げてみせる」

「え、あの……無理はしないでね?」

返事も待たず、梟は歩き出した。

取り残された少女――フミカは、その背中を見送りながら首を傾げた。

「……元気にはなった、よね?」

[newpage]

自分にしかできぬ使命。

それは、朱夏様の生まれ変わりを見つけ出すこと。

梟は今までとは別の視点から、人間たちを観察し始めた。

妖怪の気配を持つ者ではない。

妖怪を見るための道具を持たず、それでも妖怪を認識できる者。

最初に見つけたのは、未空イナホだった。

彼女の腕には妖怪ウォッチがない。

それにもかかわらず、隣を歩く妖怪へ話しかけ、返事を聞いて笑っている。

「道具を持たずして、妖怪を見ておる……」

梟の目が鋭く細められた。

 

次に見つけたのは、犬山まな。

彼女もまた、何の道具も持たぬまま、鬼太郎や猫娘と自然に言葉を交わしていた。

猫娘を「猫姉さん」と呼ぶ声音には、長く離れていた家族へ向けるような親しさがある。

「あの娘も……妖怪と深い縁を持つか」

候補は一人ではなかった。

 

そして三人目。

#兔谷#朔夜。

妖怪探偵団の者たちと歩く少年は、傍らにいる妖怪の言葉へ何の迷いもなく返事をしていた。腕に妖怪ウォッチはない。

それだけではない。

目を凝らせば、その身に微かだが重く静かな妖気が残っている。

女郎蜘蛛の一件で聞いた、四神――玄武の力。

胸元からは、青い宝石の不可思議な気配も漂っていた。

「妖怪を見るのみならず、四神をその身へ宿す者……」

だが、あの者は少年だ。

一度は否定しかけ、梟は考え直す。

「転生とは、かつてと同じ姿で生まれることではない。姫君が男児として転生する可能性とて、否定はできぬ」

 

 イナホ。

 まな。

 朔夜。

 

三人とも、普通の人間にはないものを持っている。

「一人であれば、その者こそ姫君と判断できた。されど……」

自分では、選べない。

ならば。

 

[chapter:「私に見分けられぬのであれば、酒呑童子様にお確かめいただけばよい」]

梟の中で、答えがつながった。

三人へ事情を話せば、拒まれるかもしれない。

仲間へ知らせれば、また邪魔が入る。

ならば三人を同時に確保し、酒呑童子の御前へ連れていけばいい。

姫君の可能性を持つ者たちを保護するのだ。

多少強引な手段になろうとも、やむを得ない。

[newpage]

夜。梟は三人の名と行動を記した紙を広げた。

 

 未空イナホ。

 犬山まな。

 #兔谷#朔夜。

 

「今度こそ、酒呑童子様のお役に立ってみせる」

その顔には、久しく失っていた希望が戻っていた。

「姫君の候補、三人すべてを――必ず、あの御方の御前へお連れする」

窓の外で、不穏な風が鳴った。

だが梟は、それを吉兆と信じて疑わなかった。

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