ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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やっと12月。一年目終了(作中1/3)も夢じゃない


#百五十九話

琵琶湖でピー助たちと再会してから、数日が経った。

ドラえもんの飼育用ジオラマに保護されたピー助、キュー、ミューも、少しずつ落ち着きを取り戻し始めたようだった。

初めのうちは、小さな物音にも怯えていたキューとミューだったが、今ではのび太が顔を見せると、二匹そろって駆け寄ってくる。ピー助も、ジオラマの湖から長い首を伸ばし、嬉しそうな声を上げるようになった。

「ピー助、キュー、ミュー。行ってくるからね」

「ピューイ!」

「キュ!」

「ミュー!」

登校前、のび太がジオラマへ声をかけると、三匹から返事が返ってくる。

のび太は満足そうにうなずき、ランドセルを背負った。

「今度こそ行かないと、本当に遅刻するよ」

「分かってるよ、ドラえもん」

のび太が部屋を出ようとした、その時だった。

「フー!」

小さな影が、開いたままのランドセルへ飛び込んだ。

「あっ、フー子!」

ランドセルの中から、フー子がひょっこり顔を出す。

「駄目だよ。学校には連れていけないんだから」

「フー?」

「そんな顔をしても駄目!」

のび太が抱き上げて部屋へ戻す。

しかし、のび太が廊下へ出ると、フー子もふわふわと後を追ってきた。

「フー子、待って!」

階段を下りかけたフー子を、のび太は慌てて捕まえる。

その直後、台所から玉子が顔を出した。

「のび太、いつまで何をしてるの? 学校に遅れるわよ」

「な、何でもないよ!」

のび太はフー子を背中へ隠した。

だが、フー子はのび太の肩越しから顔を出そうとしている。

「最近、家の中で変な風が吹いている気がするんだけど」

「き、気のせいだよ!」

「そうかしら?」

のび太のママが首を傾げた瞬間、ドラえもんがフー子を抱え、階段の上へ引っ込めた。

「行ってきまーす!」

のび太は逃げるように玄関を飛び出した。

フー子が学校までついて行こうとしたのは、これが初めてではない。

ある日はランドセルの中。ある日は帽子の中。別の日には玄関から出たのび太を窓から追いかけようとした。

そのたびにママに見つかりそうになり、ドラえもんとのび太は苦しい言い訳を重ねていた。

フー子に悪気はない。

ようやく再会できたのび太と、少しでも長く一緒にいたいだけなのだ。

[newpage]

十二月に入り、町はすっかりクリスマスの雰囲気に包まれていた。

商店街の街灯には赤と緑の飾りが取り付けられ、店先には大小さまざまなクリスマスツリーが並んでいる。玩具店の窓には色鮮やかな箱が積み上げられ、洋菓子店にはクリスマスケーキの写真が大きく貼り出されていた。

学校でも、冬休みやクリスマスの話題が増えている。

「今年は何をもらう?」

「うちは新しいゲーム!」

「クリスマスケーキ、もう予約したんだって」

帰りの会が終わると、教室のあちこちから楽しそうな声が上がった。

#朔夜は教科書をランドセルにしまい、窓の外へ目を向けた。

空は薄い灰色だが、雪が降りそうな気配はない。

教室を出て、校門を抜ける。同級生たちがそれぞれの方向へ帰っていく中、朔夜も一人で住宅街を歩き始めた。

少し前を、二人の少女が歩いている。

一人は#朔夜と同じくらいの年齢で、もう一人は小学校低学年ほどだろうか。よく似た顔立ちからして、おそらく姉妹なのだろう。

妹らしい少女が、姉の袖をつかんでいた。

「サンタさんはいるもん!」

「まだそんなこと言ってるの?」

「いるもん! 去年もプレゼントくれたもん!」

「それ、お父さんかお母さんが置いたんでしょ」

「違うよ! サンタさんだよ!」

妹は頬を膨らませる。

姉は、くだらないと言いたげにため息をついた。

「トナカイが空を飛んで、世界中の家を一晩で回るなんて無理に決まってるじゃない」

「でも、朝起きたら枕元にあったもん!」

「寝てる間に親が置いたんだって」

「お母さんに聞いたら、知らないって言ったもん!」

「サンタのふりをしてるんだから、ごまかすに決まってるでしょ」

「サンタさんはいる!」

少女の声が住宅街へ響く。

二人は言い争いながら角を曲がり、見えなくなった。

#朔夜は歩きながら、先ほどの会話を思い返す。

「サンタクロースか……」

考えてみれば、もうすぐクリスマスだ。

小さい頃、#朔夜の枕元にもプレゼントが置かれていたことがある。誰が置いたのか家族に尋ねても、曖昧に笑ってごまかされるだけだった。

親が用意していたのかもしれない。

本当にサンタクロースが来たのかもしれない。

今まで、深く考えたことはなかった。

妖怪も、魔女も、宇宙人も、未来から来たロボットもいる。

それなら、サンタクロースが実在していても、それほど不思議ではないような気がする。

#朔夜は曇り空を見上げた。

「今年は雪、降るのかな」

吐いた息が、白く空気へ溶けていった。

[newpage]

帰宅した朔夜は、ランドセルを置いてから空き地へ向かった。

特に約束をしていたわけではないが、放課後になれば、ドラえもんたちの誰かがいることが多い。

空き地へ近づくと、大きな声が聞こえてきた。

「絶対にいるんだよ!」

「いるわけないだろ!」

「サンタさんはいる!」

空き地の中央で、のび太が駄々をこねていた。

両手を握りしめ、今にも地面へ寝転がって暴れ始めそうな勢いである。

その向かいでは、スネ夫が腕を組んでいた。しずかとドラえもんは困った顔をし、ジャイアンは面倒そうに二人を見ている。

「去年だって、その前だって、僕の枕元にプレゼントが置いてあったんだ!」

「だから、君のママが夜中に置いたんだろ」

「違うよ! ママは知らないって言ったんだ!」

「子どもの夢を壊さないように、ごまかしただけだよ」

「ママは嘘なんかつかないよ!」

「サンタのことなら、ごまかすだろ」

「違う!」

「違わない!」

つい先ほど見た姉妹と、ほとんど同じ言い争いだった。

#朔夜が空き地へ入ると、ドラえもんが助けを求めるような顔を向けてきた。

「#朔夜、ちょうどよかった」

「何があったの?」

「スネ夫が、サンタさんなんていないって言うんだ!」

のび太が駆け寄ってくる。

「いないんじゃなくて、プレゼントを置いているのは親だって言ってるんだよ」

スネ夫も負けじと反論する。

「親じゃない!」

「だったら誰なんだよ!」

「サンタさんだよ!」

「だから、サンタが本当にいる証拠はあるのかって聞いてるんだ!」

「プレゼントがあったことが証拠だよ!」

「それは親が置いた証拠にもなるだろ!」

スネ夫は腰へ手を当て、のび太へ人差し指を向けた。

「君のママが置いたんじゃないっていうなら、いったい誰が置いたんだよ!」

「だからサンタさんだってば!」

二人の話は、同じ場所をぐるぐる回っている。

しずかは困ったように笑った。

「本当にいないと決まったわけじゃないと思うけど……」

「しずかちゃん!」

のび太の表情が明るくなる。

「しずかちゃんは、サンタさんがいると思うんだね!」

「いると言い切ったわけじゃないわ。でも、本当にいてくれたら素敵でしょう?」

ジャイアンは頭を掻いた。

「プレゼントをくれるなら、親でもサンタでもどっちでもいいじゃねえか」

「よくないよ!」

「何が違うんだよ」

「夢が違うんだよ!」

「意味が分からねえ!」

#朔夜はしばらく全員を眺めていたが、やがて口を開いた。

「誰かが自分のためにプレゼントを用意してくれたなら、どっちでもよくない?」

「よくない!」

のび太とスネ夫の声が綺麗に重なった。

「えぇ……」

#朔夜は困惑して一歩下がる。

のび太はそんな#朔夜の両手を握った。

「#朔夜、お願い!」

「何?」

「サンタさんを調べるの、手伝って!」

「なんで僕が?」

「#朔夜なら、小さな音にも気づけるし、変な気配がしたら分かるでしょ!」

「サンタを探すための能力じゃないよ」

「動物にも好かれるじゃないか!」

「トナカイを捕まえるつもり?」

「捕まえるんじゃなくて、話を聞くだけだよ!」

のび太は両手を合わせて頭を下げた。

「お願い! サンタさんが本当にいるって証明したいんだ!」

スネ夫も腕を組んだまま口を挟む。

「君が調べるなら、公平な結果になるかもしれないね。のび太一人だと、自分に都合のいい話しか集めなさそうだし」

「何だよ、それ!」

「二人だけに任せたら、また喧嘩になるものね」

しずかまで加わる。

#朔夜はドラえもんを見た。

「助けて」

「たぶん断っても、のび太君は何度も頼みに来ると思うよ」

「……だよね」

#朔夜は小さくため息をついた。

本当は面倒なことに巻き込まれたと思っていた。

けれど、帰り道で見た姉妹の会話も気になっている。

妖怪や魔女が存在するこの世界で、サンタクロースだけが完全な作り話だと、どうして言い切れるのだろう。

「分かった。少しだけ調べてみる」

「本当!?」

「ただし、サンタさんがいないって結果になっても怒らないでよ」

「絶対にいるから大丈夫!」

「もう結論が決まってるじゃないか」

スネ夫が呆れたように言った。

[newpage]

その日の夕方。

#朔夜は自室のベッドへ座り、スマートフォンを手に取った。

まず、サンタクロースについて何か知っていそうな人物を考える。

妖怪や不可思議な事件に詳しそうな人物。

#朔夜は石動零へLI○Eを送った。

『零さんは、サンタクロースっていると思いますか?』

既読はすぐについた。

返事も早かった。

『知らん』

それだけだった。

しばらくすると、もう一通届く。

『お前、熱でもあるのか』

『ありません』

『ならいい』

サンタについては投げやりなのに、体調だけは心配された。

「……聞く相手を間違えたかな」

続いて、まなへ連絡する。

『まな先輩は、サンタクロースっていると思いますか?』

今度は少し間を置いて返事が来た。

『普通に考えたら、親が置いてるんだと思うけど』

『でも、妖怪も本当にいたからね』

『サンタさんだけ絶対にいないって言い切るのも、変なのかな?』

#朔夜は零とのやり取りを見比べた。

「この温度差は何なんだ……」

その時、スマートフォンが続けて鳴り始めた。

一件、二件ではない。

ドラえもんたちと妖怪探偵団が参加しているグループチャットから、次々に通知が届いている。

#朔夜が画面を開く。

 

『サンタさんは絶対にいる!』

 のび太だった。

 

『親が置いているに決まってるだろ』

 スネ夫。

 

『イエス・キリスト関係だったっけ?』

 ナツメ。

 

『聖ニコラウスだよ』

 トウマ。

 

『初耳! そんなの気にしたことなかった!』

 アキノリ。

 

『俺も!』

 ケータ。

 

ツッコミまで混ざり、会話は恐ろしい速度で流れていく。

そのうち、サンタが妖怪なのか、人間なのか、外国の神様なのかという新しい議論まで始まった。

#朔夜はしばらく画面を眺めていたが、そっとスマートフォンを伏せた。

「……余計に分からなくなった」

それでも、少しだけ興味が湧いている。

サンタクロースは、本当にいるのか。

それとも、親たちが演じているだけなのか。

#朔夜は枕元へスマートフォンを置いた。

「明日から、ちゃんと調べてみよう」

クリスマスまで、あとわずか。

こうして#朔夜は、サンタクロースの正体を調べることになった。

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