ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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なぜ、雪なのか説明しますと…(分からなければ理科の先生に聞いてね)

「雪は、大きな氷のかたまりじゃなくて、小さな氷のつぶがふわふわ集まったものなんだ。
つぶとつぶの間には、空気がたくさん入っている。だから同じ大きさでも、雪のほうが中に入っている氷の量は少ない。
それに、小さなつぶは暖かい空気に触れるところが多いから、大きな氷より早く溶けるんだよ」
たとえば、
「四角い氷」と「かき氷」を同じ部屋に置いたら、かき氷のほうが早く溶けるでしょ?


#百六十三話

ドラえもんが、気象制御装置の電源へ手を伸ばした。

「本当に少しだけだからね」

念を押してから、丸い本体の側面にあるスイッチを押す。

低い作動音が境内へ響き、上部のアンテナがゆっくり回転し始めた。

しかし、すぐには何も起こらない。

空は薄く曇っているものの、雪が降る気配はなかった。

「ほら。やっぱり試作品じゃないか」

スネ夫が腕を組む。

「まだ起動したばかりだよ!」

ドラえもんが言い返した、その時だった。

装置の上に、白い靄が集まり始める。

空気中の水蒸気が吸い寄せられ、境内の上空で小さな雲へと形を変えていった。

「あっ!」

しずかが空を指差す。

雲から、白い粒が一つ落ちてきた。

続いて、もう一つ。

少しずつ数を増やしながら、雪が舞い始める。

「雪だ!」

のび太が両手を広げた。

つい先ほどまで召喚の失敗に落ち込んでいたのが嘘のように、境内を走り回る。

「本当に天気を変えた……」

ケースケは、手のひらへ落ちた雪を見つめていた。

「魔法じゃないのに、雪を降らせられるのね」

アニエスも感心したように空を見上げる。

その隣で、アデルは気象制御装置から目を離さなかった。

「制御できている間は、だがな」

「お姉ちゃん、心配しすぎよ」

「お前が先ほど、正体不明の存在を呼び出しかけた直後だからだ」

「それはもう謝ったでしょ!」

二人が言い合っている間にも、雪は静かに降り続けていた。

「フー!」

舞い落ちる雪を見て、フー子が飛び出す。

白い粒を追いかけるように空中を回り、風を起こして雪を舞い上げた。

「楽しそうだね、フー子!」

「フー!」

のび太の声に応えると、フー子は冷たい空気を上空へ運んでいく。

小さな雪雲は、風に支えられるように境内の真上へ留まり、柔らかな雪を降らせ続けた。

「未来の気象制御装置と、風を操る生命体の共同作業!」

イナホは観測機器を構え、忙しなく記録を取っていた。

「これは非常に貴重な映像です!」

「クリスマスくらい、普通に雪を楽しむダニ」

USAピョンが呆れた声を上げる。

もっとも、その姿が見えないケースケは、また誰もいない空間から聞こえた声に肩を揺らしていた。

しばらく雪の中を飛び回っていたフー子だったが、やがて動きが鈍くなった。

「フー……」

周囲を見回し、暖かそうな場所を探す。

そして、朔夜の背後へ回ると、そのままフードの中へ飛び込んだ。

「冷たっ!」

首筋へ冷えた身体が触れ、#朔夜は思わず声を上げた。

「フー子ちゃんも寒くなったんだね」

まなが笑う。

「風を操れるのに?」

#朔夜が振り向こうとすると、フードの中からフー子が顔だけを出した。

雪は見たいが、寒いのは嫌らしい。

「まあ、ここにいてもいいけど」

「フー!」

[newpage]

雪は、有星神社の境内を薄く白く染め始めていた。

のび太たちが雪を集めている一方、ジャイアンは気象制御装置を眺めていた。

本体の正面には、雪雲の生成量を調整する大きなつまみが付いている。

現在は、一番低い位置に設定されていた。

「これを回せば、もっと雪が降るのか?」

ジャイアンがつまみへ手を伸ばす。

「触っちゃ駄目だよ!」

ドラえもんが慌てて止めた。

「これは試作品なんだ。最低出力より上げたら、何が起こるか分からないんだから」

「見るだけだよ」

「絶対に触らないでよ!」

ドラえもんはそう言い残し、のび太に呼ばれて装置から離れた。

ジャイアンはつまみを見つめる。

今の雪では、地面を白くする程度だ。

もっと強く降らせれば、大きな雪だるまも作れるかもしれない。

「少しくらいなら、大丈夫だろ」

「やめた方がいいんじゃない?」

近くにいたケースケが、不安そうに声をかける。

「ドラえもんも触るなって言ってたし」

「ちょっと回すだけだ」

ジャイアンはつまみを握った。

ゆっくり回そうとしたが、固くて動かない。

「なんだ、これ。固いな!」

「だからやめようよ!」

「このくらい……!」

ジャイアンが力を込める。

つまみが一気に回った。

同時に、

バキッ。

嫌な音が響いた。

ジャイアンの手には、根元から折れたつまみだけが残っていた。

「……取れた」

周囲が静まり返る。

ドラえもんが振り返り、ジャイアンの手と装置を見比べた。

「何やってるんだーっ!」

直後、装置から激しい警告音が鳴り始めた。

[newpage]

「つまみが最大出力の位置で壊れたんだ!」

ドラえもんが装置へ駆け寄る。

空気中の水蒸気が、先ほどとは比べものにならない勢いで吸い込まれていく。

境内の上に浮かんでいた小さな雲が、急速に膨張した。

空を覆い、さらに神社の外へ広がっていく。

静かに舞っていた雪は、数秒のうちに視界を塞ぐほどの吹雪へ変わった。

「急に降り方が変わった!」

ナツメが腕で顔を庇う。

「全員、社殿へ入れ!」

アデルが叫んだ。

強風に押され、ケースケがよろめく。ナツメが腕をつかみ、社殿へ引っ張った。

「姉ちゃん、これ本当にクリスマスの話だったよね!?」

「私もそう思ってた!」

フー子が朔夜のフードから飛び出し、雪雲へ向かおうとする。

「待って!」

#朔夜は咄嗟にフー子を抱き止めた。

「一人で行ったら危ない!」

「フー!」

「フー子、無理しちゃ駄目だ!」

のび太も駆け寄る。

フー子は風を操れる。

だが、装置が雪雲を作り出す速度は、フー子一人が風で散らせる量を遥かに上回っていた。

[newpage]

「電源が切れない!」

ドラえもんは何度もスイッチを押したが、装置は止まらなかった。

ブリザーガのような極端な環境でも作動を続けられるよう、内部にエネルギーを蓄える構造になっている。

「どうして、こういうところだけ頑丈なんだよ!」

壊れたつまみを戻そうとしても、軸が本体の奥へ食い込んで動かない。

アニエスとアデルが魔法で装置を包む。

しかし、機械の周囲へ結界を張っても、既に作られた雪雲は町へ広がっていた。

美夜子が観測装置を確認し、表情を曇らせる。

「上空の気温が急激に下がってる。このままだと、もっと広い範囲で雪が降るわ」

「内部構造を開いて、直接停止させれば!」

イナホが工具を持って近づく。

「勝手に開けないで! もっと壊れるよ!」

「もう十分壊れてるダニ!」

吹雪は、神社だけでなく町全体を包み始めた。

まなのスマートフォンへ、次々と通知が届く。

「電車が運転を見合わせたって。バスも止まってる」

「道路も動けなくなってるみたい」

しずかがニュース画面を覗き込む。

わずかな時間で雪が積もり、坂道では車が立ち往生していた。

商店街の店も次々と閉まり、予定されていたクリスマスイベントも中止になっている。

「サンタを呼びに来ただけなのに、どうして町が止まってるの……?」

ケースケは、もはや何度目か分からない困惑の表情を浮かべていた。

ジャイアンは壊れたつまみを握りしめる。

「俺が何とかする!」

神社の階段下で動けなくなった車を見つけ、雪の中へ飛び出した。

「ジャイアン!」

「俺が壊したんだから、俺が押す!」

スネ夫も後を追う。

「最初から触らなければよかったんだよ!」

「分かってるよ!」

ナツメたちも、転びそうになっている人々を社務所へ案内する。

#朔夜とまなは、寒さに震える小さな子どもを社殿へ連れていった。

[newpage]

ドラえもんは、クルトとヒャッコイ博士へ通信を繋ごうとしていた。

吹雪の影響で映像は乱れ、激しい雑音が入る。

『……ドラえもん……聞こえる?』

「クルト! 出力調整のつまみが壊れたんだ!」

『壊れた!?』

「最大まで回した状態で、根元から折れた!」

通信の向こうで、クルトが息を呑む。

続いて、ヒャッコイ博士らしい声が割り込んだ。

『装置の上部にある――を開けて、寒気の流れを直接――』

「何だって!? 聞こえないよ!」

『だから、上部の――』

大きな雑音が走り、通信が途切れた。

「肝心なところが聞こえなかった!」

装置は雪に半分埋まりながらも、警告音を鳴らし続けている。

電源は切れない。

魔法でも止められない。

風で雪雲を散らしても、すぐに新しい雲が作られる。

装置の周囲は特に吹雪が激しく、近づくことさえ難しくなっていた。

「このままじゃ、町の外まで広がる」

#朔夜は腕で顔を庇いながら、雪の向こうにある装置を見た。

ドラえもんも、答えを見つけられずに立ち尽くす。

「どうすればいいんだ……」

その時だった。

吹雪の音に混じって、澄んだ音が聞こえた。

シャン。

シャン、シャン。

「……鈴?」

のび太が顔を上げる。

音は上空から近づいてくる。

全員が厚い雪雲を見上げた。

白い闇の中に、赤い光が浮かぶ。

最初に姿を現したのは、赤い鼻を輝かせるトナカイだった。

その後ろには、大きなソリ。

ソリの上には、赤と白の服を身にまとい、長い白髭を蓄えた老人が立っていた。

「……サンタ?」

ケースケが呟く。

スネ夫も口を開けたまま、何も言えない。

老人はソリから飛び降り、暴走する気象制御装置の上へ静かに着地した。

「まったく。配達前に、派手なことをしてくれたものじゃ」

老人が片手を掲げる。

金色の光が装置を包み込んだ。

装置の周囲を渦巻いていた寒気が、逆向きに流れ始める。

膨れ上がった雪雲が少しずつ薄くなり、警告音も途切れた。

やがて吹雪は弱まり、空から降る雪は、最初のように穏やかなものへ戻っていった。

「止まった……」

ドラえもんは雪をかき分け、老人の前へ進む。

「助けてくれて、ありがとうございます! それと、本当にごめんなさい!」

老人は腹を揺らし、豪快に笑った。

「ほっほっほ。反省しておるなら、それでよい」

のび太は、目の前の老人を見上げている。

「本物の……サンタさん?」

「さて、どうかのう?」

サンタは愉快そうに髭を撫でた。

そして、雪で止まった町を見回す。

「しかし、この雪のせいで、今夜の配達に少々遅れが出そうじゃ」

ドラえもんたちの間に、嫌な予感が走った。

サンタは大きな袋を肩へ担ぐ。

「装置を壊した埋め合わせに、君たちにも配達を手伝ってもらおうかのう!」

「僕も!?」

ケースケが自分を指差す。

「ここまで来たら、たぶん全員だね」

ナツメが苦笑した。

#朔夜はフードの中へ戻ってきたフー子を支えながら、小さく息を吐く。

「えぇ……」

のび太だけは、雪の中で目を輝かせていた。

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