次でちょっと出した情報をまとめようかなと。
また、サンタの『気の合わないヤツ』とは、ブラックサンタです。ます。なまはげと何が違うんだろう。
[ブラックサンタ]
悪い行いをした子供に罰を与える存在。炭や、動物の臓物を置いて去るのだとか。もっとひどい場合には、連れ去られます。その麻袋に入れられて。まぁ、いろいろ所説あるので、調べてみてはどうでしょうか?
暴走していた気象制御装置が停止し、町を覆っていた猛吹雪は、次第に穏やかな雪へ変わっていった。
有星神社の境内には、雪の上へ座り込む者、呆然と空を見上げる者、目の前の老人を何度も見直す者がいた。
赤と白の服。
長く伸びた白い髭。
大きな袋と、赤鼻のトナカイが引くソリ。
どう見ても、絵本に描かれているサンタクロースそのものだった。
「本物の……サンタさん?」
のび太が恐る恐る尋ねる。
老人は白い髭を撫で、腹を揺らして笑った。
「さて、どうかのう?」
「ここまで来て、まだごまかすのかよ!」
スネ夫が思わず声を上げる。
先ほどまでサンタクロースの存在を否定していた彼も、目の前の光景を説明できずにいた。
サンタは雪に埋もれた町を見回した。
「この大雪では、今夜の配達に遅れが出そうじゃ」
「……俺のせいだ」
ジャイアンが肩を落とす。
壊れたつまみは、まだ手の中に握られていた。
「俺が機械を壊したから……」
「反省しておるなら、働いて埋め合わせればよい」
サンタは豪快に笑う。
「今夜の配達を、君たちにも手伝ってもらおうかのう!」
「僕も!?」
ケースケが、自分を指差した。
「僕、姉ちゃんについてきただけなんだけど!」
「ここまで来たら、もう諦めた方がいいと思う」
ナツメが静かに答える。
「姉ちゃん、毎回こうなの!?」
「今日はまだ平和な方かな」
「これで!?」
ケースケの叫びが、雪の残る境内へ響いた。
[newpage]
配達の準備を始めようとした時、のび太が何かを思い出した。
「あの、サンタさん」
「何じゃ?」
「僕たち、さっき魔法でサンタさんを呼ぼうとしたんだ」
サンタが不思議そうに眉を上げる。
「わしを?」
「うん。アニエスさんが魔法陣を作って、もう少しで何か出てきそうだったんだよ」
「あと少しだったのよ」
アニエスも口を挟む。
「赤い光が集まって、人の形になりかけていたわ」
のび太はサンタを見上げた。
「どうして応えてくれなかったの?」
サンタはしばらく考えたあと、ゆっくりと首を横へ振った。
「呼ばれた覚えはないのう」
「えっ?」
のび太だけでなく、アニエスも目を見開いた。
「でも、魔法陣には確かに反応があったのよ!」
「だから言っただろう」
アデルが険しい表情で魔術書を見る。
「あの術式は、サンタクロース本人を指定するものではなかった。聖夜に贈り物を運ぶ力へ、無差別に接続しようとしていたんだ」
「無差別って……」
ケースケが顔を引きつらせた。
サンタは髭へ手を当て、空を見上げる。
「そういえば、先ほど異様な気配を感じたの」
先ほどまでの陽気な声が、僅かに低くなった。
「わしとは気の合わない奴が近くを通ったのかと思ったが……どうやら違ったようじゃ」
アデルの顔が強張る。
サンタは何かを思い出すように目を細めた。
「あれはもっと、異界の……」
そこまで言うと、サンタは口を閉じた。
周囲には、まだ状況を理解できていない子どもたちもいる。
サンタは再び笑顔を浮かべた。
「なんにせよ、運が良かったのう」
「何が出てくるところだったの?」
アニエスが尋ねる。
「知らん方がよいこともある」
サンタはそれ以上答えず、大きな袋を肩へ担ぎ直した。
アデルだけは、消えた魔法陣を見つめたままだった。
[newpage]
サンタは一同へ、今夜の配達方法を説明した。
世界中のすべての家を、一人だけで回っているわけではない。
地域ごとに協力者がおり、魔法の通路や転送地点を使ってプレゼントを運んでいるという。
「この町の周辺だけでも手伝ってもらえれば、遅れを取り戻せるじゃろう」
「世界中じゃなくてよかった……」
ケースケが胸を撫で下ろす。
「終わり次第、ほかの地域も頼むかもしれんがのう」
「終わらないやつじゃん!」
サンタが袋へ手を入れると、底が見えないほど深い内部から、一つの包みが浮かび上がった。
イナホは目を輝かせる。
「やはり四次元収納技術です!」
「魔法じゃないかと思うダニ」
「内部を観測させてもらえませんか!?」
「駄目じゃ」
即答だった。
イナホは肩を落としたが、すぐに観測機器を取り出した。
サンタは一同を複数の班へ分ける。
ドラえもんと美夜子は地図と経路の確認。
アニエスとアデルは飛行魔法で、高い建物や雪に閉ざされた場所を担当する。
ジャイアン、アキノリ、ケータは大きな荷物と雪かき。
スネ夫とケースケは住所と包みの整理。
ナツメ、トウマ、しずか、まな、朔夜は、家の中へ静かにプレゼントを届ける役目になった。
「僕も家の中に入るの?」
#朔夜が尋ねる。
「おぬしは音や気配に敏いようじゃからのう。誰かが目を覚ましそうになったら、仲間へ知らせてくれ」
「そのための能力じゃないんですけど……」
「サンタ向きなんじゃない?」
まなが笑った。
フー子はソリの周りを元気よく飛び、風で雪を払い始める。
しかし寒くなると、すぐに#朔夜のフードへ潜り込んだ。
「フー子、手伝うんじゃなかったの?」
「フー……」
「寒い時だけ僕のところに来るよね」
[newpage]
夜の町を、ソリと魔法、どこでもドアが行き交った。
雪の積もった一軒家。
高層マンション。
病院。
親が夜勤で不在の家。
さまざまな場所へ、プレゼントを届けていく。
ある家の窓から中を覗くと、一人の父親が子どもの枕元へ包みを置いていた。
サンタはそれを確認すると、その家へ入らずに通り過ぎる。
「届けなくていいの?」
のび太が尋ねた。
「あの家には、もうサンタがおる」
「でも、今のはお父さんだったよ?」
「その家の子を喜ばせようと、贈り物を用意した。その者も立派なサンタクロースじゃ」
別の家では、母親がプレゼントを抱えたまま眠っていた。
サンタは静かに包みを受け取り、代わりに枕元へ置いた。
さらに、親が用意したプレゼントへ小さなお菓子を加える家もあった。
その様子を見ながら、スネ夫が尋ねる。
「じゃあ、プレゼントを置いているのが親の家も、本当にあるの?」
「もちろんじゃ」
「でも、本物のサンタさんもいるよね?」
のび太が身を乗り出す。
「おぬしの目の前におるじゃろう」
サンタは笑った。
「親や家族が用意できる家では、その者たちがサンタになる。事情があって難しい家には、わしや仲間が届ける。誰かを喜ばせようと贈り物を用意した者は、その夜だけ皆サンタクロースになるのじゃ」
のび太とスネ夫は顔を見合わせた。
「じゃあ、僕たち二人とも正しかったの?」
「そういうことじゃ」
「僕の家はどっちだったの?」
のび太が尋ねると、サンタは片目を閉じる。
「それを教えては、夢がなくなるじゃろう」
「結局そこは教えないのかよ!」
スネ夫が叫んだ。
[newpage]
配達先の一つで、朔夜が部屋へ入った時だった。
床板が僅かに軋む。
ベッドで眠っていた小さな子どもが、ゆっくりと目を開けた。
まなとナツメは咄嗟に物陰へ隠れたが、#朔夜は逃げ遅れる。
子どもは眠そうな目で、フードを被った朔夜を見つめた。
「サンタさん……?」
#朔夜は困った。
白い髭はない。
フードからは、フー子が顔を出している。
「僕は……」
どう答えるべきか考え、枕元の包みを見る。
「……今夜だけは、たぶん」
子どもは安心したように笑い、再び目を閉じた。
#朔夜は音を立てないように包みを置き、部屋を出る。
外で待っていたまなが、楽しそうに笑った。
「#朔夜ちゃんもサンタになったね」
「僕まで?」
「プレゼントを届けたんだから、そうでしょ」
#朔夜は少しだけ考え、頷いた。
[newpage]
最後の配達を終えた頃、空が白み始めていた。
一同は疲れ切った状態で、有星神社へ戻ってきた。
ケースケは雪の上へ座り込む。
「もう二度と、何をするか知らないまま姉ちゃんについて行かない……」
「今日はまだ平和な方だったよ」
「それ、さっきも聞いた!」
サンタがソリへ乗ろうとした時、急に足を止めた。
「おっと、忘れるところじゃった」
大きな袋から、次々に包みを取り出す。
のび太、ドラえもん、しずか、ジャイアン、スネ夫。
#朔夜、まな、ナツメたち妖怪探偵団。
美夜子、アニエス、アデル、イナホ、USAピョン、ケースケ。
全員へ、それぞれに合ったプレゼントが渡された。
フー子には、小さな風鈴。
ピー助、キュー、ミューの分は、のび太へ託される。
ジャイアンへ包みを渡したサンタは、少しだけ真剣な顔をした。
「来年は、つまみを壊さんようにな」
「……はい」
ジャイアンは素直に頭を下げた。
赤鼻のトナカイが走り出し、ソリがゆっくり空へ浮かぶ。
「それでは、また来年!Merry Christmas!」
鈴の音を響かせながら、サンタは朝焼けの空へ消えていった。
のび太は、姿が見えなくなるまで手を振り続ける。
スネ夫も、もうサンタクロースの存在を否定しなかった。
#朔夜は手元のプレゼントを見つめ、それから空を見る。
サンタクロースは、本当に存在した。
そして今夜は、自分たちも誰かへ贈り物を届けた。
誰かを喜ばせようとした者は、その夜だけ皆サンタクロースになる。
朝日が昇り始める中、アデルだけは笑わずに空を見つめていた。
サンタが口にしかけた言葉。
異界の何か。
その気配が、一度こちらへ手を伸ばしかけていたことを、彼女だけは忘れられずにいた。