黒い扉を抜けた瞬間。
ふわり、と空気が変わった。
「うわぁ……」
のび太が目を丸くする。
見知らぬ町。
見知らぬ空。
だが、どこか日本の町並みに似ている。
夕暮れの風景の中へ、一行が足を踏み入れた、その時だった。
「ほぉ」
しわがれた声。
「お主らが……アキノリ達の“異界友人”じゃな?」
「!?」
全員が振り向く。
そこにいたのは、小柄な老婆だった。
神社の境内。
掃除道具を片手に、こちらをじっと見ている。
鋭い目。
けれど不思議と怖くはない。
「あ、えっと……」
のび太が戸惑う。
老婆は構わず、神社の奥へ向かって声を張った。
「アキノリ! 来ておるぞー!」
「はいはーい!」
ぱたぱたと足音。
裏手から、見慣れた面々が現れる。
アキノリ。
ケータ。
トウマ。
ナツメ。
妖怪探偵団の四人だった。
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「おっ、来た来た!」
ケータが手を振る。
だが次の瞬間、目を丸くした。
「あれ?」
視線が、のび太達へ向く。
「のび太達には秘密なんじゃ……?」
「バレちゃった☆彡」
ドラえもんが軽く舌を出した。
「軽っ!?」
トウマが即ツッコむ。
「いや、普通に尾行されてたからね?」
#朔夜が肩をすくめる。
「君たち、隠密向いてなさすぎ……」
ナツメが呆れたように言った。
「だって気になるじゃん!」
のび太が抗議する。
「最近ほんと怪しかったし!」
「それは……ごめん」
ドラえもんは少し申し訳なさそうだった。
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「で?」
ジャイアンが腕を組む。
「結局なんの話なんだよ」
「オレ達、まだちゃんと聞いてねーぞ?」
しずかも頷く。
「迷子の件、関係あるんでしょう?」
聞かされていなかった組は、完全に置いていかれていた。
ドラえもんは少し考え込み――。
「……うん」
観念したように頷いた。
境内の空気が、少し静まる。
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事情説明は、簡潔だった。
迷子の子。
道のループ。
秘密道具でも原因不明だったこと。
そして。
最近、未来新聞で報じられている歴史異変。
「ボク、近所の猫達にも協力してもらってたんだ」
ドラえもんが言う。
「猫?」
スネ夫が首を傾げる。
「うん。最近、“帰れなくなる人”の噂が増えてるって」
「迷子?」
「大人も子供も」
その言葉に、空気が少し冷えた。
「しかも、みんな似たこと言うんだ」
『同じ場所を回ってた』
『気づいたら知らない場所にいた』
『時間がおかしかった』
「……怖」
のび太が小さく呟く。
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その時だった。
「ふむ」
いつの間にか、先ほどの老婆が近くに来ていた。
話を聞いていたらしい。
「まるで、キツネに化かされたようじゃな」
しわがれた声が、静かに響く。
「「「…………」」」
一瞬で全員が黙った。
「え」
「キツネ?」
「化かすって……」
スネ夫が青ざめる。
老婆は平然としていた。
「昔からある話じゃ」
「道をぐるぐる回されたり」
「知らぬ場所へ連れて行かれたり」
「時間を狂わされたり」
「そういうのは、大抵“境界”の妖怪の仕業よ」
#朔夜は、思わず昨日の道祖神を思い出した。
(やっぱり……)
未来道具では解決できず。
供物だけが効いた。
全部、繋がっている。
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「つまり妖怪ってこと!?」
ケータが身を乗り出す。
「可能性は高いのぅ」
老婆は頷いた。
「じゃあ犯人探しだな!」
アキノリが拳を握る。
だが老婆は、すぐに続けた。
「ただし」
空気が少し変わる。
「相手が“境界”を渡る類なら、普通には捕まらん」
「え?」
「結界を張る必要がある」
その言葉に、トウマが反応した。
「ばあちゃん、できるの?」
「できるとも」
当然のように言う。
「準備が必要じゃがな」
老婆は掃除道具を肩へ担ぎ直した。
「捕まえたら連絡せい」
「閉じ込める準備をしておく」
そう言い残し、神社の奥へ消えていく。
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静寂。
数秒後。
「……なんか」
のび太がぽつりと言った。
「本格的になってきた……」
「今さら?」
ナツメが即答する。
「宇宙行った時点で手遅れよ」
それはそうだった。
「で、どうする?」
ジャイアンが腕を鳴らす。
「捕まえるんだろ?」
「問題は方法だよなぁ」
ケータが頭を掻く。
「相手、普通に逃げる系っぽいし」
「しかも道を狂わせる能力持ち」
トウマが難しい顔をする。
ドラえもんも腕を組んだ。
「秘密道具で拘束するにしても、まず見つけないと……」
「じゃあ」
#朔夜が静かに口を開く。
全員の視線が集まる。
「まず、“どうやって誘き出すか”から考えよう」
夕暮れの神社に。
妖怪探偵団と未来の猫型ロボット達の、作戦会議が始まった。