白い光は、夜の裏山を昼間みたいに照らしていた。
誰も動けない。
風だけが、ざわざわと木々を揺らしている。
そして――。
扉の向こうから、人影が現れた。
最初に出てきたのは、赤いパーカーを着た少年。
続いて、長身の少女。
さらに、気弱そうな少年と道着らしきものを着た少年。
道着を着た少年以外は、見慣れない形の大きな腕時計をつけていた。
「……は?」
ジャイアンが間抜けな声を漏らす。のび太は口をぱくぱくさせていた。
「人……?」
しずかが呟く。#朔夜は静かに目を細める。
(……誰)
服装も雰囲気も、この辺りの子じゃない。
けれど。
一番気になるのは、そこじゃなかった。
四人の後ろ。開いた扉の向こうに、何か“別の気配”が混ざっている。
「うわぁっ!?」
赤いパーカーの少年が飛び退いた。
「なんで人がいるの!?!?」
「それこっちの台詞なんだけど!?」
のび太も叫び返す。
「落ち着きなさい、ケータ」
長身の少女が冷静に周囲を見回す。
「ここ、さくらニュータウンじゃない……」
「というか森の匂いが違うよ。僕らの知っている森の匂いじゃない」
気弱そうな少年がその言葉に返した。
ドラえもんは警戒しつつ、一歩前へ出る。
「きみたち、誰?」
四人は揃ってドラえもんを見た。
沈黙。
数秒後。
「……タヌキ?」
「猫型ロボットだよ!!」
即座にツッコミが飛ぶ。その勢いで、少し空気が緩んだ。
「あ、えっと……」
赤いパーカを着た少年が頭を掻く。
「オレ、天野ケータ! こっちは――」
その時。
「おいおい」
ジャイアンがずいっと前に出た。
「いきなり現れて何モンだよ、お前ら」
威圧するように腕を組む。
ケータが「うっ」とたじろいだ。
#朔夜は思わず額を押さえる。
(あー……始まった)
いつものことだ。
ただ。
(客観的に見ると、小学生が年上に喧嘩売ってる図なんだよなぁ……)
実際、向こうの四人は#朔夜達より年上に見える。
特に気弱そうな少年は、中学生くらいだ。
「え~?ちょっと待ってよ!」
おちゃらけた声色。
道着を着た少年が慌てた様子で前に進み出た。
ジャイアンと真正面から視線がぶつかった。
空気が張る。
「アキノリ」
長身の少女が呆れたように言う。
「任せたわ」
「任された…ってオイ!?」
道着をきた少年がツッコミを入れた。
片一方は威圧していて、もう片方は意に介していない。というか、ノリツッコミをする余裕もあるらしい。
(.....横幅だけはどっこい、どっこいなんだけどな)
#朔夜はそのシュール過ぎる状況にそんなこを感じていた。
「ジャイアン!」
しずかが慌てて止めに入った。
ジャイアンは「ちぇっ」と鼻を鳴らす。
トウマも肩をすくめた。
「僕はトウマ。よろしくね」
それをきっかけに、改めて自己紹介が始まった。
◇
天野ケータ。
天野ナツメ。
あまりにも似ているので、姉弟かと思えば違うらしい。
月浪トウマ。
有星アキノリ。
のび太達も順番に名乗っていく。
野比のび太。
源しずか。
骨川スネ夫。
剛田武。
そしてドラえもん。
「……それで」
最後に、ナツメの視線が朔夜へ向いた。
「君は?」
一瞬。
#朔夜は言葉を止めた。
――君は?
◇◇
その問いが、不思議と妙に響いた。
まるで、“確認”するみたいに。
「私は――」
#朔夜が名乗ろうとした、その時。
『しかし驚いたでウィスなぁ』
『まさか別の世界と繋がるニャンて』
声。
いや、“声達”。
#朔夜はぴくりと眉を動かした。
(……誰?)
視線を向ける。
ケータ達の近く。
何もない空間。
そこに――いた。
白くて妙にうるさそうな奴。
昔の漫画みたいな猫。
普通に喋っている。
普通にそこにいる。
なのに。
誰も反応していない。
(……え?)
朔夜は瞬きをした。
見間違いじゃない。
いる。
確かにいる。
『いや〜、これは歴史的大発見ズラ!』
『ウィスパー、声大きいニャン!』
わちゃわちゃしている。
なのに。
ケータ達は、“そこに誰もいない”前提で話している。#朔夜の背筋に、ぞわりとしたものが走った。
「……見えてない?」
思わず、口から漏れた。
瞬間。
場が静まり返る。
「……え?」
ケータが固まる。
「は!?」
白いのが飛び上がった。
ドラえもん達は、きょとんとしていた。
「何が?」
のび太が首を傾げる。
#朔夜はゆっくり、“そこ”を指差した。
「いや……その白いの達」
数秒。
沈黙。
そして。
「「「「えええええええっ!?!?」」」」
裏山に絶叫が響き渡った。
そういえば、pixivみたいに名前変換できる機能ってないんですね。初めて知ったかも。