ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#二十三話 倉庫掃除のお誘い

休日の朝。

目を開けた瞬間、#朔夜は違和感を覚えた。

静かだ。

カーテンの隙間から差し込む光はもう高く、いつもの休日より明るい。

枕元のスマホを見る。

「……うわ」

少し目を見開く。

思ったより遅い時間だった。

昨日は帰ってからすぐ寝たわけじゃない。

疲れていたはずなのに、なかなか眠れなかった。

頭の中でずっと同じ言葉が回っていた。

――悲しいかな、妖怪は“ソレ”が存在意義なのじゃ。

目玉おやじさんの声。

静かで、否定も肯定もしていない声。

結局、考えているうちに眠ったらしい。

#朔夜は髪を軽くかき上げ、部屋を出た。

リビングへ降りる。

コーヒーの香り。

テレビの音。

父は新聞を読み、母は何やら紙を広げていた。

「あら」

母が顔を上げる。

「珍しいわね、こんな時間まで寝てるなんて」

「……昨日ちょっと疲れてて」

曖昧に返す。

父は新聞から少しだけ目を上げた。

#朔夜を見る。

一瞬だけ。

それから何も言わず、また紙面へ視線を戻した。

「?」

なんだろう。

少しだけ引っかかったが、気にしないことにした。

その時。

「あ、そうそう」

母が机の上のチラシを持ち上げた。

「骨川さんのお宅、中学受験するんだって」

「へぇ」

適当に返す。

母は構わず続けた。

「最近説明会とか増えてるみたいよ? ほらこれ」

差し出されたチラシ。

私立中学校合同説明会。

難しそうな校名。

日程。

会場。

色々書いてある。

[newpage]

「#朔夜も――」

聞こえていない。

視界にはチラシ。

でも頭の中では別のものが浮かんでいた。

黒い扉。

ムジナ。

鬼太郎。

目玉おやじさん。

――存在意義。

「……そうだ」

朔夜は小さく呟いた。

「今日、道場行こう」

「聞いてた?」

「聞いてる聞いてる」

母は疑わしそうだった。

父だけが新聞を持ったまま、小さく口元を緩めた。

[newpage]

午後。

月見台の道場。

板張りの空間。

静かな空気。

弓を握る。

足を整える。

呼吸を整える。

矢を番える。

的を見る。

ただ、それだけ。

余計なことは考えない。

考えてはいけない。

弓は素直だ。

迷えばぶれる。

――ビィン。

矢が飛ぶ。

刺さる。

もう一度。

構える。

放つ。

繰り返す。

その間だけは、何も考えない。

……はずだった。

ふと。

頭に浮かぶ。

『止めると消滅してしまう』

指先が少しズレた。

矢が外れる。

「……」

小さく息を吐く。

また構える。

今度は。

『また、脅されたのか』

鬼太郎の言葉。

また。

前にもあった。

悪いことをした。

でも。

今回も本当にそうなのか。

それとも違うのか。

――ビィン。

また少し外れる。

朔夜は目を閉じた。

集中しろ。

考えるな。

今は弓だけ。

そう思うほど、雑念は消えなかった。

[newpage]

気づけば、道場の終わる時間だった。

片付け。

帰り支度。

外へ出る。

夕方の空気。

結局、何も整理できなかった。

帰り道。

スマホが震えた。

通知。

【境界観測チャット(仮)】

【ナツメ】

『明日暇?』

【アキノリ】

『手伝ってほしいことある!』

朔夜が画面を開く。

『何?』

すぐ返事。

【アキノリ】

『倉庫掃除』

【朔夜】

『……倉庫?』

【ナツメ】

『家系の倉庫』

【トウマ】

『神社側』

【ケータ】

『古いものいっぱいあるらしい!』

神社。

古い倉庫。

朔夜は少し考えた。

境界。

昔話。

妖怪。

何かあるかもしれない。

少なくとも。

今のモヤモヤを整理する手掛かりくらいは。

【朔夜】

『行く』

即答だった。

[newpage]

夜。

夕食。

味噌汁。

焼き魚。

いつもの食卓。

朔夜は箸を動かしながら言った。

「明日、友達の家行く」

嘘は言ってない。

母が頷く。

「あらそう」

一拍。

それから。

「遅くなる前に帰ってきなさい」

それだけだった。

朔夜は少し驚いた。

この前のこと。

何か言われると思った。

でも、それだけ。

父はコーヒーを飲みながら新聞をめくる。

何も言わない。

少しだけ肩の力が抜けた。

「うん」

[newpage]

翌朝。

朝食。

準備。

靴を履く。

玄関のドアへ手をかける。

奥から母の声。

「遅くなる前に帰ってきなさい!」

朔夜は苦笑した。

「昨日もそれ聞いた〜」

軽く返す。

外へ出る。

春の風。

スマホ。

待ち合わせ。

倉庫掃除。

……たぶん、普通の日。

そう思いながら。

朔夜は歩き出した。

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