ケースケは何かしてる!?と警戒中。
日曜日。
待ち合わせ場所へ着いた朔夜は、思わず足を止めた。
「……あれ?」
思っていたより人が多い。
アキノリ、ナツメ、トウマ、ケータ。
そこまでは予想通りだった。
だが、その隣には。
「あっ、#朔夜くん!」
ドラえもん。
そして。
「おはよう!」
しずか。
「よぉ」
ジャイアン。
「ふわぁ……」
大あくびをしているのび太。
「なんでいるの?」
朔夜が素直に聞いた。
「ドラえもんが呼んだんだよ」
しずかが苦笑する。
「人数多い方が掃除も早く終わるだろって」
「あー」
納得した。
確かに人手は多い方がいい。
その時。
「ひどいよぉ……」
のび太がふらふらと近づいてきた。
目の下に薄っすら隈ができている。
「どうしたの?」
「朝だよ……」
「朝だけど」
「日曜日だよ……?」
「日曜日だけど」
会話になっていない。
「ドラえもんがさぁ!」
のび太が悲痛な声を上げる。
「朝早くから叩き起こしたんだよ!?」
「だって集合時間あるじゃないか」
ドラえもんが当然のように言う。
「ぼく、まだ夢の途中だったのに……」
「どうせ二度寝してたでしょ」
「うっ」
図星だったらしい。
#朔夜は少し納得した。
普段なら遅刻常習犯ののび太が、今日は時間通りに来ている。
そういう理由だったのか。
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「それにしても」
スネ夫が辺りを見回した。
「どこ行くんだろうね」
「神社の倉庫だろ?」
ジャイアンが言う。
「でも神社なら近くだよな?」
確かにそうだ。
有星神社なら、わざわざ集合する必要もない。
その疑問に答えたのは――。
「おーい!」
聞き覚えのある声だった。
全員が振り向く。
神社の方から一台のミニバスがゆっくり近づいてきていた。
運転席にはアキノリの祖母。
窓を開けて手を振っている。
「乗るぞー!」
「え?」
「車?」
「バス?」
「思ったより本格的!」
のび太達がざわつく。
ミニバスは全員の前で停車した。
「本当の目的地は山の方じゃ」
おばあちゃんが言う。
「歩いて行くには少し遠いからの」
なるほど。
だから車だったのか。
「お世話になります」
#朔夜が頭を下げる。
「うむうむ」
「お願いします!」
「失礼しまーす!」
みんなが次々に乗り込む。
アキノリだけが妙に得意げだった。
「へへん」
「なんじゃその顔は」
おばあちゃんが即座にツッコむ。
「いや、オレん家のバスだから!」
「お前のじゃない」
「ですよねー」
一秒で終わった。
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車内には様々な荷物が積まれていた。
木箱。
縄。
紙で包まれた細長い何か。
見たことのない祭具らしき道具。
少し散らかっている。
「ごちゃごちゃしててすまんの」
おばあちゃんが苦笑した。
「祭りや行事で使う道具が多くてな」
「すごい……」
しずかが興味深そうに見回す。
ドラえもんも目を輝かせていた。
「神社ってこういうの保管してるんだ」
バスはゆっくりと町を離れていく。
住宅街を抜け。
田畑を越え。
徐々に山道へ入っていった。
その途中。
ふと#朔夜は思い出した。
「そういえば」
「ん?」
運転席のおばあちゃんがミラー越しに見る。
「このサイズのバスって、普通免許じゃ運転できなかった気がするんだけど……」
おばあちゃんの眉が少し上がった。
「ほぉ」
意外そうな声。
「よく知っとるな」
「父さんが前に話してたから」
「なるほどの」
少し嬉しそうに頷く。
「その通りじゃ」
「やっぱり」
「大型免許を持っとる」
車内が静かになった。
数秒後。
「えっ」
「大型!?」
「マジで!?」
ジャイアンとスネ夫が同時に声を上げた。
おばあちゃんは平然としている。
「若い頃に取ったんじゃ」
「なんでまた?」
ナツメが尋ねる。
おばあちゃんは少し懐かしそうな顔になった。
「昔の有星神社は今よりずっと賑わっとってな」
窓の外へ目を向ける。
「祭事も多かった」
「へぇ」
アキノリも知らなかったらしい。
少し驚いていた。
「荷物を運んだり、人を送迎したり」
「それで必要になったんじゃ」
「大変そう……」
しずかが呟く。
「苦労したぞ」
おばあちゃんは笑った。
「教習所の坂道発進で何度怒られたことか」
「想像できない……」
トウマがぽつりと言った。
確かに。
今のおばあちゃんが怒られている姿は想像しにくい。
そんな話をしているうちに。
周囲の景色は完全に山へ変わっていた。
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ミニバスは小さな駐車場へ入る。
「着いたぞ」
ブレーキが掛かる。
全員が外へ降りた。
澄んだ空気。
鳥の声。
目の前には山道が続いている。
「ここから?」
のび太が嫌な予感を覚えたような顔をした。
「少し待っとれ」
おばあちゃんはそう言うと、近くの管理小屋へ向かう。
しばらくして。
残された面々は自然と雑談を始めた。
「結局なにがあるんだろうね」
のび太が言う。
「さぁ?」
ケータが首を傾げた。
「アキノリ知らないの?」
「前に来たのずいぶん昔だからなぁ」
アキノリも曖昧だった。
「古い書物とかじゃね?」
「適当だなぁ」
#朔夜が苦笑する。
そんな話をしていると。
管理小屋からおばあちゃんが戻ってきた。
「待たせたの」
「何してたんですか?」
ドラえもんが尋ねる。
「入山届じゃ」
「入山届?」
「山へ入る以上は必要じゃろ」
当然のように言う。
ドラえもんは少し気まずそうになった。
「そういうの、ちゃんとあるんだ……」
「当たり前じゃ」
おばあちゃんが呆れる。
「山を甘く見るでない」
「すみません……」
どこか小さくなるドラえもんだった。
おばあちゃんは満足そうに頷き。
そして山道へ向き直る。
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「さて」
一本の杖を手に取る。
「ここからは歩きじゃ」
静寂。
数秒後。
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
のび太の絶叫が山へ響いた。
「聞いてないよ!?」
「今言ったじゃろ」
「そういう問題じゃない!」
「もう疲れた!」
「まだ何もしてねぇだろ」
ジャイアンが呆れる。
「帰りたい……」
「早すぎるよ!?」
スネ夫がツッコんだ。
そんな騒がしい声を聞きながら。
#朔夜は山の奥を見上げる。
木々の向こう。
有星家の倉庫。
そこに何が眠っているのか。
少しだけ胸が高鳴っていた。
そして一行は、山道へと足を踏み入れた。