ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

25 / 165
#第二十五話 ヒミツ道具、"ただの栄養ドリンク~!"

山道を登り始めてから十五分。

「はぁ……はぁ……」

のび太が完全に止まった。

「む、無理……」

その場にしゃがみ込む。

「もう歩けない……」

「早っ!」

ケータが思わず声を上げた。

「いや、でも」

#朔夜は少し考える。

「のび太にしては結構持った方じゃない?」

「確かに」

トウマが頷く。

普段ならもっと早い段階で音を上げている。

のび太は涙目だった。

「だって山だよ!?」

「坂だよ!?」

「石とか木の根っことかいっぱいあるんだよ!?」

「山だからな」

ジャイアンが呆れたように言った。

その時。

「しょうがないなぁ」

ドラえもんが四次元ポケットへ手を突っ込んだ。

取り出したのは小さな茶色い瓶。

どこからどう見ても栄養ドリンクだった。

「これ飲みなよ」

「なにそれ?」

「元気が出る」

「ほんと!?」

のび太は飛びついた。

ごくごくごく。

一気飲み。

数秒後。

「おおっ!」

勢いよく立ち上がる。

「なんか元気出た!」

「単純だなぁ」

ナツメが苦笑した。

「準備が良いのう」

アキノリの祖母が感心したように言う。

「いやぁ、それほどでも」

ドラえもんが照れたように頭を掻く。

その様子を見ながら。

#朔夜はこっそりドラえもんへ近付いた。

「ねぇ」

「ん?」

「アレ、本当に秘密道具?」

小声だった。

ドラえもんも周囲を確認してから答える。

「違う」

「違うの!?」

「ただの栄養ドリンク」

「えぇ……」

思わず引く。

ドラえもんはさらに声を潜めた。

「たまたまポケットに入ってたんだ」

「いつから?」

「さぁ?」

「さぁ?」

「四次元ポケットって時間経過しないから」

さらっと恐ろしいことを言う。

#朔夜は黙った。

(いつ入れたやつなんだ……)

聞かない方がいい気がした。

[newpage]

それからさらに歩くことしばらく。

土の山道は少しずつ姿を変え始めた。

「お?」

アキノリが前を指差す。

木々の間から石段が現れた。

綺麗に整備されている。

「階段よ」

しずかが呟く。

「ということは」

トウマが言った。

「もうすぐ着くね」

石段は長かった。

だが終わりは見えている。

全員が黙々と登り続ける。

そして――

「着いたぁぁぁ……」

石段を登り切ったのび太が地面へ倒れ込んだ。

「まだ何もしてないのに……」

スネ夫も肩で息をしている。

ジャイアンでさえ額に汗を浮かべていた。

朔夜も小さく息を吐く。

さすがに疲れる。

「ふむ」

おばばが腕時計を見る。

「ちょうど良い時間じゃな」

「時間?」

ケータが首を傾げた。

「昼飯じゃ」

全員の動きが止まった。

次の瞬間。

ぐぅぅぅぅぅ……

盛大な腹の音。

犯人はジャイアンだった。

「…………」

「…………」

「…………」

少しだけ気まずい。

「悪いか!」

「誰も何も言ってないよ!?」

[newpage]

一行は倉庫の隣に建つロッジへ移動した。

木造の建物。

古いがしっかり手入れされている。

「先に昼飯の準備をするかの」

おばばが奥へ向かう。

その背中へ。

「手伝います」

しずかが言った。

「ボクも」

ドラえもん。

「じゃあ自分も」

#朔夜も続く。

「助かるのう」

おばばは笑った。

[newpage]

キッチンは思ったより綺麗だった。

冷蔵庫。

電子レンジ。

照明。

普通に電気が通っている。

「意外だ」

#朔夜が呟く。

祖母は鍋へ湯を張りながら言った。

「太陽光発電じゃよ」

「太陽光?」

「蓄電設備もある」

「へぇ……」

少し驚く。

「年に一度点検も入るしの」

「自分でやるんですか?」

「いや」

おばばは首を振る。

「有星家の関係者が順番に見ておる」

なるほど。

神社なのに妙に設備が整っている理由が分かった。

[newpage]

やがて鍋の湯が沸く。

素麺が投入された。

その間に。

「飲み物を配ってくれるかの」

祖母が冷蔵庫を指差した。

「はい」

#朔夜達は麦茶やジュースを取り出して運ぶ。

しずかは箸を並べ。

ドラえもんは器を配る。

意外と手際が良かった。

[newpage]

十分後。

「いただきます!」

全員の声が重なった。

冷たい素麺。

疲れた身体に染み渡る。

「うまっ!」

ケータが叫ぶ。

「生き返る……」

のび太は半分泣いていた。

ジャイアンは既に二杯目へ突入している。

「食べるの早っ」

スネ夫が引いた。

「こういうのは勢いだ!」

意味不明だった。

さらに。

祖母特製の漬物。

ぽりぽり。

程よい塩気。

素麺との相性が抜群だった。

「これ美味しいですね」

#朔夜が言う。

「去年漬けたやつじゃ」

祖母が嬉しそうに笑った。

[newpage]

食事が終わる。

満腹。

涼しいロッジ。

心地良い疲労。

誰も動かない。

「もう帰りたい……」

のび太が転がる。

「まだ何もしてないだろ」

トウマが呆れた。

ジャイアンも壁にもたれている。

スネ夫は椅子へ突っ伏していた。

しずかも少し眠そうだ。

そんな空気の中。

祖母が立ち上がる。

そして。

にっこり笑った。

「さて」

嫌な予感しかしない。

「片付けを始めようかの」

一瞬の沈黙。

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

のび太達の悲鳴が山へ響いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。