ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#二十六話

倉庫の掃除は、思った以上に大変だった。

「うわっ、埃!」

のび太が盛大にくしゃみをする。

「だから言ったよね、マスクしたほうがいいって」

トウマが呆れたように言った。

山の上にある古い保管庫。

有星家の関係者しかほとんど使わない場所らしく、長い年月の積み重なった埃が容赦なく襲ってくる。

朔夜も棚の整理を手伝っていた。

木箱をどかし、積まれた書類を分けていく。

その時だった。

ガタッ。

「あ」

上の棚が少し揺れた。

次の瞬間。

バサバサッ!

「うおっ!?」

一冊の古びた本が頭上から落下してきた。

反射的に受け止める。

「大丈夫?」

しずかが駆け寄る。

「平気」

#朔夜は本の表紙を見た。

だが。

「……読めない」

文字が潰れている。

というより、崩されすぎている。

のび太達も興味津々で集まってきた。

[newpage]

「なになに?」

「古文書?」

「宝の地図だったりして!」

ジャイアンが勝手なことを言う。

アキノリも覗き込んだ。

「んー……」

数秒。

「読めなくはないけど」

「マジ?」

「神社の家系だからな」

アキノリは少し得意げに笑う。

「でも崩し字がもっとひどかったらオレも無理」

「へぇ」

朔夜は素直に感心した。

すると。

「そんな時はこれ!」

ドラえもんがポケットへ手を突っ込む。

ぽん。

取り出したのは見慣れた灰色の塊。

「ほんやくコンニャク!」

「出た」

#朔夜が即座に反応した。

「万能アイテム」

「便利だよ?」

ドラえもんは笑う。

全員で少しずつ分けて食べる。

しばらくすると。

本の文字が自然と読めるようになった。

「じゃあ読んでみるね」

しずかが本を開いた。

皆が周りに集まる。

倉庫の片隅。

小さな読み聞かせ会の始まりだった。

しずかはゆっくりと読み上げる。

「今は昔、竹取の翁という者がいました――」

静かな声が倉庫に響く。

「野山へ行って竹を取り、それを様々なことに使っていました――」

読み進むにつれ。

小学生組は首を傾げ始めた。

「なんか聞いたことあるな」

ジャイアンが言う。

「うーん」

のび太も考え込む。

その一方。

ナツメ達は。

「あー」

「なるほど」

「そういうことか」

妙に納得した顔をしていた。

#朔夜も気付いている。

だが、まだ口には出さない。

ナツメがアキノリを見る。

「言う?」

アキノリはニヤリと笑った。

「いや」

「もうちょい待とうぜ」

絶対に面白がっている顔だった。

しずかはさらに読み進める。

「根元が光る竹が一本ありました。不思議に思って近寄ると、その竹の中が光っています――」

「その筒の中を見ると、三寸ほどの小さな人が、とてもかわいらしい姿で座っていました――」

[newpage]

「あっ!」

スネ夫が声を上げた。

「分かった!」

「何?」

「これかぐや姫じゃん!」

「あー!」

ジャイアンもようやく気付く。

「聞いたことあると思った!」

「かぐや姫の物語か!」

のび太も納得したように頷いた。

しずかが笑う。

「正解」

中学生組も顔を見合わせる。

「やっと気付いた」

「意外と時間かかったな」

トウマが苦笑した。

その時だった。

「……懐かしいな」

ぽつりと。

のび太が呟いた。

全員の視線が向く。

のび太は少し遠くを見るような顔をしていた。

「月で出会ったみんな、元気かな」

一瞬。

ドラえもんも動きを止める。

そして小さく笑った。

「そうだね」

「元気にしてるといいな」

しずかも頷く。

「ル……」

言いかけて止まる。

スネ夫も少し笑った。

「また会えるかな」

ジャイアンは腕を組んだ。

「きっと会えるだろ」

その会話を聞きながら。

ナツメ達は顔を見合わせる。

「知り合い?」

ナツメが首を傾げた。

「たぶん」

ケータも頷く。

「昔の友達とか?」

そんな雰囲気だった。

詳しいことは誰も聞かない。

けれど。

#朔夜は知っていた。

のび太達が、普通の人では経験しないような冒険をいくつもしてきたことを。

宇宙。

未来。

異世界。

そして妖怪。

今の反応を見る限り。

きっとその時に出会った誰か。

大切な友人なのだろう。

そう思った。

「おーい!」

突然。

奥の部屋から声が飛んできた。

「休憩は終わりじゃぞー!」

アキノリの祖母だった。

全員がびくりとする。

「げっ」

「バレた」

「サボってたわけじゃないのに……」

のび太が肩を落とした。

するとアキノリが笑いながら別の箱を指差した。

「ほら」

「次はこっち」

「えぇぇぇ!?」

倉庫の奥には、まだまだ大量の荷物が残っていた。

「終わらない……」

のび太が絶望する。

そんな彼を見て。

朔夜は思わず笑った。

掃除はまだ続く。

そして古い物語の本は、一旦そっと箱の上へ戻された。

まるで。

その続きを読む時が来るのを待つように。

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