「「「見えてる!?」」」
裏山に、声が重なった。
ケータ達四人が、一斉に朔夜へ詰め寄る。
「え、いや……」
「なんで!?」
「いつから見えてるの!?」
「術者でもないのに!?」
アキノリがぐいっと身を乗り出した。
#朔夜は思わず半歩下がる。
(近い近い近い)
『しかも普通に認識してたニャン……』
『ありえないでウィス……』
白いのまで青ざめていた。
「えっと……その……」
全員の視線が集まる。
#朔夜は一瞬だけ考え、
「……おばあちゃんの家で、百鬼夜行の掛け軸とか見たことあるから?」
とりあえず言ってみた。
沈黙。
「いや意味わかんないよ!?」
ケータが即座にツッコむ。
「掛け軸見たら妖怪見えるようになるの!?」
「知らないよ!」
朔夜も半分やけだった。
一方。
「え、ちょっと待って」
のび太が完全についていけてない顔をしている。
「さっきから何の話?」
「妖怪がどうとか言ってたよな……?」
ジャイアンも眉をひそめた。
しずかが不安そうに辺りを見る。
「本当に、何かいるの……?」
ドラえもんは腕を組み、難しい顔をしていた。
「でも#朔夜くんだけじゃなくて、あっちの子達も同じものを見てるんだよね……」
そして、ぽんと手を打つ。
「そうだ!」
四次元ポケットへ手を突っ込み、
「純真な目薬〜!」
小瓶を取り出した。
「じゅんしんなめぐすり?」
のび太が首を傾げる。
「先入観や思い込みをなくして、“見えないもの”を見やすくする道具だよ!」
「そんな便利なもんあんのか!?」
ジャイアンが軽く引いていた。
◇
「はい、みんな目を閉じて〜」
ドラえもんが順番に目薬を差していく。
「しみるぅぅ!?」
「のび太さん、大げさです」
わちゃわちゃしながら数秒。
「……で?」
スネ夫が目を開ける。
「何か変わっ――」
ぴたり。
全員の動きが止まった。
空間の一角。
そこに、“黒いモヤ”が浮いていた。
「うわっ!?」
のび太が飛び跳ねる。
モヤはゆらゆら揺れながら、少しずつ輪郭を持ち始める。
丸い。
白い。
浮いてる。
なんか顔がうるさそう。
「……う、うそぉ……」
しずかが青ざめた。
さらに隣。
二足歩行の猫がいた。
しかも喋っている。
『あ、見えてきたニャン』
『純真すぎるでウィスねぇ』
「ぎゃあああああああっ!!!」
のび太の悲鳴が裏山に響く。
「しゃ、喋ったぁ!!」
スネ夫も飛び退いた。
「うおっ!? マジでいたのか!?」
ジャイアンですら目を見開いている。
ドラえもんは感心したように頷いた。
「へぇ〜、ほんとにいたんだ」
「そこ驚くとこ!?」
ケータが叫ぶ。
場は一気に大混乱になった。
『失礼な反応でウィスねぇ!』
『初対面で悲鳴とかひどいニャン!』
「だ、だって化け物ぉ!」
のび太が涙目で叫ぶ。
「キモイやつがいる!!」
スネ夫が指差した。
◇◇
一瞬。
空気が止まった。
『…………』
ウィスパーの顔が引きつる。
『……今なんと?』
「あっ」
ケータが察した顔をする。
ナツメは静かに視線を逸らした。
トウマも何とも言えない顔をしている。
アキノリだけは小さく、
「まあ……気持ちは分からんでもない」
と呟いた。
『全員敵でウィスかぁぁぁぁぁ!!!』
ウィスパーが爆発した。
「うわっ!?」
「待てコラ金持ち小僧ぉぉぉ!!」
「なんでボクぅぅぅ!?」
スネ夫が全力で逃げ出す。
白いキモイやつが追う。
猫が「頑張れニャン!」と野次を飛ばす。
ジャイアンは大笑い。
のび太はまだ半泣き。
裏山は完全にカオスだった。
――その時。
再び。
黒い扉が、淡く光り始めた。
「……また?」
朔夜が振り返る。
さっきより強い光。
空気が変わる。
騒いでいた全員が、ゆっくり扉を見た。
そして。
光の中から、ひとりの少女が現れる。
燃えるような赤い髪。
白い服。
どこか異国めいた装飾。
少女はふらつきながら数歩進み――。
ぴたり、と。
ドラえもんを見た。
「……!」
その瞬間、少女の表情が変わる。
驚き。
困惑。
そして焦り。
少女は突然、早口で何かを話し始めた。
「――――!! ――――――!!」
「え?」
のび太達が固まる。
聞いたことのない言葉だった。
日本語じゃない。
英語でもない。
まるで歌みたいな、不思議な響き。
少女は必死だった。
何かを伝えようとしている。
だが――誰にも分からない。
ただひとり。
ドラえもんだけが、わずかに目を見開いていた。
「……この言語……どこかで……?」
空だけはただ、白み始めていた。
さて何故でしょうね~朔夜が妖怪見える理由。ここ当たりある人はコメントして教えてくれるとウレシイな。