ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第三十一話

「これ以上騒ぎを大きくする気はない」

低く響く声が森の中に広がった。

#朔夜たちが声のした方へ視線を向ける。

しかし木々が邪魔をして姿までは見えない。

ただ、その場の空気が一瞬で張り詰めたことだけは分かった。

「退くぞ、洞潔」

その言葉を聞いた巨大な妖怪が舌打ちをする。

「……承知しました」

巨大な妖怪はカイラを睨みつけた。

だが追撃はしない。

次の瞬間、その姿は黒い霧のように掻き消えた。

森に静寂が戻る。

先ほどまでの激しい戦闘が嘘のようだった。

「逃げた……?」

のび太が呆然と呟く。

「みたいだな」

アキノリも警戒を解かないまま辺りを見回した。

トウマを狙った妖怪たちは完全に姿を消していた。

ようやくナツメは息を吐く。

そして戦場の中心に立つ人物へ歩み寄った。

「カイラ様」

その呼びかけに、青髪の青年は静かに振り返る。

「なぜ、ここに?」

青髪の青年_ナツメにカイラ様と呼ばれていた_が言った。

「予言だ」

全員が首を傾げた。

「予言?」

トウマが聞き返す。

カイラは懐から一枚の紙を取り出した。

折り目だらけの紙。

端は少し破れている。

そして何より。

書かれた文字が異様に乱れていた。

急いで書かれたのだろう。

筆圧も不安定で、ところどころ掠れている。

まるで何かに追われながら残した走り書きのようだった。

「読め」

カイラ様はそう言って紙を差し出した。

近くにいた#朔夜が受け取る。

全員が覗き込んだ。

そこにはこう記されていた。

[newpage]

[chapter:黒き門、セカイをつなぎ――]

 

[chapter:災厄は境界(セカイ)を超える]

 

[chapter:チカラあるもの、集結せよ]

 

[chapter:さもなくば]

 

[chapter:王ですら、終焉(ホウカイ)を止められぬ]

 

[newpage]

しばし沈黙が流れた。

「……なんだこれ」

ジャイアンが率直な感想を漏らす。

「予言?」

スネ夫が言う。

「いや、それは分かるけどさ」

「内容が全然分かんないんだよ!」

それには#朔夜も同意だった。

黒き門。

災厄。

境界。

終焉。

どれも不穏な単語ばかりだ。

だが具体的なことは何も分からない。

「王って……カイラ様のこと?」

ナツメが尋ねる。

「分からん」

カイラ様は腕を組んだ。

「だが見過ごすわけにもいかん」

その表情は珍しく真剣だった。

#朔夜は少し驚く。

先ほどから見ていて思った。

この人は随分と偉そうだ。

だが、それに見合うだけの力と責任を背負っているらしい。

「でもさ」

空気を破ったのはケータだった。

「不動雷鳴剣があるじゃん?」

その言葉にナツメたちの顔色が変わった。

ケータは首を傾げる。

「え?」

トウマが苦い顔をする。

「それなんだけどさ……」

頭を掻きながら言った。

「使えなくなったんだ」

「ええっ!?」

ドラえもんたちが声を揃える。

「使えなくなったって!」

「そんな大事なものが!?」

「色々あったんだよ……」

トウマは疲れたように肩を落とした。

どうやら今回の件も、その延長線上にあるらしい。

[newpage]

カイラ様は話を続けた。

「双天山へ行けば良い」

「双天山?」

ドラえもんが聞き返した。

カイラ様は頷く。

「妖聖剣に関わる場所だ」

「そこに手掛かりがあるやもしれん」

全員が顔を見合わせた。

他に当てもない。

ならば行くしかない。

「分かった」

ナツメが言う。

「行こう」

カイラ様は静かに目を閉じた。

次の瞬間。

強い風が吹き抜ける。

景色が揺らいだ。

「うわっ!?」

のび太が悲鳴を上げる。

#朔夜も思わず目を閉じた。

そして。

再び目を開けた時。

そこは全く別の場所だった。

「なっ……!?」

遠くまで続く山並み。

そして。

天を突くように聳え立つ二つの巨大な山。

双天山。

その麓だった。

「すげぇ……」

スネ夫が呆然と呟く。

「一瞬で移動した……」

ドラえもんですら驚いている。

だが当の本人は平然としていた。

「行け」

それだけ言う。

「よーし!」

真っ先に飛び出したのはドラえもんだった。

[newpage]

しかし。

ゴンッ!

「いたぁっ!?」

何もない空間で弾かれ、尻もちをつく。

「ドラえもん!?」

のび太たちが慌てて駆け寄る。

「何かある!」

前方には何も見えない。

だが確かに壁が存在していた。

しずかも触れてみる。

硬い感触。

完全に遮断されている。

「結界……?」

アキノリが呟いた。

ナツメたちは試しに進んでみる。

すると。

何事もなく通り抜けた。

「通れる?」

「こっちは平気だぞ!」

続いて#朔夜も恐る恐る足を踏み出す。

そして。

何の抵抗もなく結界を通過した。

「え?」

思わず振り返る。

ドラえもんたちは向こう側。

#朔夜はこちら側。

「なんで!?」

のび太が叫ぶ。

「#朔夜は通れたのに!」

ドラえもんは慌てて通り抜けフープを取り出した。

しかし。

結果は同じ。

見えない壁を突破できない。

「そんな……」

珍しくドラえもんが言葉を失う。

その時だった。

ドラえもんは何かを決意したようにポケットへ手を入れる。

「#朔夜!」

投げ渡されたのは予備の四次元ポケットだった。

「これ持って行って!」

「えっ!?」

「予備だから大丈夫!」

大丈夫なのだろうか。

色々と不安だったが、今は言っている場合ではない。

#朔夜は受け取った。

「頼んだよ!」

ドラえもんの声に頷く。

ナツメたちは既に先へ進み始めていた。

#朔夜も慌てて後を追う。

ふと振り返る。

そこにはドラえもんたち。

そして。

なぜか動こうとしないカイラ様の姿があった。

「……?」

だが呼びかける前に、ナツメたちが遠くへ進んでしまう。

#朔夜は慌てて駆け出した。

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