ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第三十二話

双天山の山道は想像以上に険しかった。

岩肌が剥き出しになった斜面。

足場も悪い。

それでもナツメたちは迷うことなく進んでいく。

#朔夜もその後に続いた。

ドラえもんたちは結界の向こう。

今ここにいるのは、

ナツメ、トウマ、アキノリ、そして朔夜たちだけだった。

「結構きついな……」

額の汗を拭う。

しばらく進むと視界が開けた。

二つの巨大な山。

まるで空を支える柱のようにそびえ立っている。

その麓へ辿り着いた瞬間だった。

――ゴォォォォッ!!

突風が吹き荒れた。

「っ!?」

思わず腕で顔を庇う。

空が陰った。

見上げた全員が息を呑む。

巨大だった。

紫色の羽毛。

黄金色の鬣。

岩を砕けそうな鉤爪。

そして頭部から伸びる角。

怪鳥は悠然と空中で旋回している。

その威圧感だけで足が竦みそうだった。

[newpage]

『資格を示せ』

声だった。

口は動いていない。

だが確かに頭の中へ響いた。

『進む資格を示せ』

次の瞬間。

怪鳥が急降下した。

「来るぞ!」

トウマが叫ぶ。

ドォォォン!!

地面が爆発したように揺れた。

間一髪で回避したものの、

砕けた岩が飛び散る。

「なんだよあれ!」

アキノリが悲鳴を上げる。

返事をする暇はない。

怪鳥は再び上昇した。

翼を大きく広げる。

そして。

ギャアアアアアアア!!

轟音。

鼓膜が破れそうだった。

思わず耳を塞ぐ。

身体が硬直する。

「うっ……!」

ナツメが膝をついた。

トウマも顔をしかめている。

威圧。

それだけで人の動きを鈍らせるほどの咆哮だった。

「くそっ!」

トウマが斬りかかる。

刃が怪鳥の翼を掠めた。

羽が舞う。

確かに傷は付いた。

だが。

「……え?」

傷口が塞がった。

みるみるうちに。

何事もなかったように。

「回復してる!?」

アキノリが叫ぶ。

その直後。

怪鳥が口を開いた。

紫色の霧。

「伏せろ!」

#朔夜が叫ぶ。

全員が咄嗟に岩陰へ飛び込んだ。

霧が通り過ぎる。

地面の草が黒く変色した。

[newpage]

「毒か……!」

トウマが顔をしかめる。

まともに浴びれば危険だった。

怪鳥は再び空へ。

何度攻撃しても。

傷は塞がる。

疲れるのはこちらだけだった。

「どうすんだよ!」

アキノリが叫ぶ。

「このままじゃ!」

#朔夜は弓を構えたまま怪鳥を見ていた。

攻撃。

回復。

突進。

咆哮。

毒。

その全てを観察する。

違和感があった。

「……待って」

「え?」

「何か変だ」

怪鳥が旋回する。

そのたびに。

首元。

黄金色の鬣の奥。

何かが光る。

「アキノリ!」

「なんだ!?」

「首だ!」

「首?」

「回復してるのはそこだ!」

アキノリが目を凝らす。

確かに見えた。

護符のようなもの。

怪鳥の身体に埋め込まれている。

[newpage]

「あれか!」

だが高すぎる。

近付けない。

怪鳥は再び上空へ。

急降下の構え。

「来るぞ!」

全員が身構える。

#朔夜は深く息を吸った。

周囲の音が遠くなる。

道場。

的。

呼吸。

雑念を捨てる。

目玉おやじさんの言葉が脳裏を過った。

――心を乱されるな。

怪鳥が降下する。

速い。

だが。

見える。

「……そこだ」

矢を放った。

一直線。

風を裂く。

そして。

ガキィン!!

首元へ突き刺さる。

護符が砕けた。

怪鳥が初めて苦しそうな声を上げた。

『グォォォォ!!』

「今だ!」

#朔夜が叫ぶ。

トウマが飛び出す。

ナツメも続いた。

アキノリの妖術が炸裂する。

連続攻撃。

怪鳥は迎撃しようとする。

だが。

もう回復しない。

『グァァァァァ!!』

最後の一撃。

眩い光が怪鳥を包んだ。

巨大な身体が崩れていく。

風に溶けるように。

羽が舞った。

『……資格を示した』

声が響く。

先ほどまでの威圧感はない。

どこか穏やかだった。

[newpage]

『進め』

怪鳥は光となって消えた。

静寂が戻る。

全員が息を切らしていた。

「勝った……?」

アキノリが呟く。

トウマが剣を下ろす。

「いや」

ナツメは前方を見ていた。

山道の奥。

先ほどまで存在しなかった道が現れている。

「試されたんだ」

朔夜も同じことを思っていた。

怪鳥は侵入者を排除しようとしていたわけじゃない。

進む資格を確かめていたのだ。

そして。

試練は終わった。

だが。

双天山の本当の試練は、

まだ始まったばかりだった――。

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