ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第三十三話

第一の試練を突破した#朔夜たちは、しばらく山道を進んでいた。

巨大な怪鳥との戦いを終えたばかりだというのに、休んでいる暇はない。

双天山の空気はどこか張りつめていて、立ち止まることを許してくれないようだった。

「まだ先があるのかよ……」

アキノリが肩を落とす。

「今さらだよね」

#朔夜が苦笑する。

その時だった。

頭上から軽やかな羽音が聞こえてきた。

一行が見上げる。

「……あれ?」

ナツメが目を瞬かせた。

空を舞っていたのは、先ほどの巨大な怪鳥ではなかった。

細身の鳥だ。

全身を覆う鮮やかな赤い羽毛。

長い尾羽には緑色の飾り羽が混ざっている。

大きさは人間を乗せられるほどで、普通の鳥とは比べ物にならない。

しかし先ほどの怪鳥ほどの威圧感はなかった。

どちらかと言えば神聖な雰囲気すら感じる。

鳥たちは一行の周囲を旋回すると、地面へ降り立った。

そして背を向ける。

「……乗れってこと?」

ケータが首を傾げる。

「たぶんね」

ナツメが答えた。

トウマも頷く。

「案内役ってところか」

どうやら敵意はないらしい。

試練を突破した者を先へ導く存在なのだろう。

「だったら遠慮なく乗らせてもらうか」

アキノリがそう言って鳥の背に跨った。

#朔夜もその後ろへ乗る。

しっかりと羽毛を掴んだ。

「落ちるなよ」

「それはこっちの台詞だ」

そんなやり取りをしているうちに、鳥たちは一斉に飛び立った。

[newpage]

――バサァッ!

強い羽ばたき。

地面が一気に遠ざかる。

「うおっ!?」

アキノリが思わず声を上げた。

風が顔に叩きつけられる。

眼下には岩山。

木々。

細い山道。

あっという間に景色が小さくなっていく。

「すげぇ……」

#朔夜も思わず呟いた。

気付けば、雲が近い。

さっきまで歩いていた場所など、豆粒のようだった。

「いつの間にこんな高さまで……」

鳥たちは整然と編隊を組み、二つの山の間を進んでいく。

先頭にはナツメたち。

#朔夜とアキノリの鳥は少し後方を飛んでいた。

「そういえばさ」

アキノリが振り返る。

「さっきは助かった」

「何が?」

「怪鳥だよ」

「ああ」

「あの矢がなかったら、まだ戦ってた気がする」

#朔夜は少し考えた。

「みんなが戦ってたから見つけられただけ」

「相変わらず謙虚だな」

アキノリが笑う。

その時だった。

――ゴォォォォォッ!!

突風が吹いた。

それは風というより、空気の塊だった。

鳥たちの編隊が大きく揺れる。

「うわっ!?」

「!?」

#朔夜は反射的に羽毛を掴んだ。

しかし。

後方を飛んでいた鳥だけが大きく煽られる。

「まずい!」

アキノリが叫ぶ。

鳥が悲鳴のような鳴き声を上げた。

翼が乱れる。

高度が下がる。

そして。

進行方向から大きく逸れた。

「待て!」

アキノリが声を上げる。

「ナツメー!!」

#朔夜も叫んだ。

だが。

返事はない。

風の轟音に全て掻き消されてしまう。

前方を飛ぶ鳥たちは気付いていないようだった。

どんどん離れていく。

[newpage]

「くそっ!」

アキノリが歯噛みする。

鳥は必死に体勢を立て直している。

しかし元の進路へ戻れない。

風に流されるまま、別方向へと運ばれていった。

どれほど飛んだだろう。

やがて鳥は高度を下げ始めた。

岩場が近付く。

山肌が迫る。

そして。

――ドサッ。

二人は山道へ降ろされた。

「いてて……」

アキノリが腰をさする。

#朔夜も周囲を見回した。

「ここ……」

違和感があった。

見覚えがない。

いや。

そもそも向かっていた場所ではない。

二人は崖の縁まで歩く。

そして遠くを見た。

「あ」

アキノリが固まる。

向こうに見える。

本来向かっていたはずの山が。

遥か彼方に。

「……マジか」

#朔夜も思わず呟いた。

今いる場所は別の山だった。

双天山。

二つ並ぶ巨大な山。

その片方へ向かっていたはずなのに。

気付けば、もう片方の山の途中に立っている。

「どうする?」

#朔夜が聞く。

アキノリはしばらく考えた。

だが答えはすぐに出た。

「進むしかないだろ」

そう言って前を見る。

山道は奥へと続いていた。

まるで。

最初から二人が来ることを知っていたかのように。

風が吹く。

遠くで鳥の鳴き声が響いた。

双天山はまだ何かを試そうとしている。

そんな予感がした。

二人は顔を見合わせる。

そして静かに頷いた。

「行こう」

「ああ」

そうして。

#朔夜とアキノリは、仲間たちとは別の道を歩き始めたのだった。

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