一方その頃。
双天山の別ルートへ飛ばされてしまった#朔夜とアキノリは、岩肌の露出した山道を進んでいた。
「ナツメたち、大丈夫かな」
アキノリが空を見上げる。
「きっと、向こうもそう思ってる」
#朔夜は短く答えた。
どちらにせよ、今は合流する方法がない。
進むしかなかった。
◇
その頃、ナツメたちも目的地へ辿り着いていた。
鳥たちが降り立ち、一行は次々と背中から降りる。
「着いたー!」
ケータが伸びをする。
しかし次の瞬間。
「あれ?」
ナツメが周囲を見回した。
「アキノリは?」
トウマも気付く。
「#朔夜もいない」
全員が辺りを見回した。
だが二人の姿はどこにもない。
「まさか……途中ではぐれた?」
「そんな!」
ケータが顔を青くする。
ナツメは唇を噛んだ。
だが来た道を振り返る。
鳥たちは既に姿を消している。
そして目の前には先へ続く一本道。
「戻れない……」
静かに呟く。
カイラ様から聞いた予言。
不動明王に関わる異変。
今は立ち止まっている場合ではない。
「アキノリなら大丈夫」
トウマが言った。
「#朔夜もいるし」
ナツメは小さく頷く。
「信じて進もう」
そうして一行は再び歩き始めた。
[newpage]
その頃。
「……終わった」
アキノリが絶望した顔で立ち尽くしていた。
目の前には崩れた橋。
本来なら谷を渡るための縄橋だったのだろう。
しかし支えていたロープが切れてしまったらしく、橋は谷底近くまで垂れ下がっている。
「これは無理」
#朔夜も頷いた。
飛び越えられる距離ではない。
谷底も見えないほど深い。
「どうする?」
アキノリが尋ねる。
#朔夜はドラえもんから預かったスペアポケットを開いた。
ごそごそと中を探る。
「あった」
取り出したのは小さな青いロボットだった。
「……誰?」
「ミニドラ」
「ドラえもんの親戚?」
「違うと思う」
アキノリは余計に混乱した。
ミニドラは元気よく敬礼する。
「ミニミニー!」
#朔夜はしゃがみ込んだ。
「橋を作ってほしいんだ。お願いできる?」
「ミニミニ!」
元気よく返事をするミニドラ。
どうやら了承してくれたらしい。
「通じてるのか?」
「たぶん」
#朔夜は矢を一本取り出した。
そしてミニドラを器用に括り付ける。
「ちょっ、雑!」
「落ちなければ大丈夫」
そう言って弓を構えた。
狙うは向こう岸。
シュッ!
矢は綺麗な弧を描き、無事に対岸へ到着した。
「ミニー!」
ミニドラが手を振る。
続いて#朔夜はロープを括り付けた矢を放つ。
こちらも成功。
するとミニドラはロープを器用に編み始めた。
「あいつ凄くないか?」
「たしかに」
数分後。
簡易的ではあるものの、しっかりした網橋が完成した。
「できた!」
アキノリが感心する。
「ドラえもん、じゃないな」
「?」
「ドラえもんにしては小さい」
「ミニドラだから」
「そのまんまじゃねぇか」
二人は顔を見合わせて笑った。
[newpage]
橋を渡ってしばらく進む。
今度は開けた崖地帯へ出た。
その瞬間。
ゴォォォォォッ!!
突風が吹き荒れた。
「うわっ!」
アキノリがよろめく。
立っているのも難しい。
風は絶え間なく吹き続けていた。
「これ進める?」
「無理そうだな」
#朔夜はポケットを漁る。
その時。
何かが転がり落ちた。
銀色の懐中時計だった。
「あ」
拾い上げようとした瞬間。
カチッ。
何かが押された。
すると。
風が止んだ。
「……え?」
アキノリが固まる。
さっきまで荒れ狂っていた風が嘘のように消えている。
木々も揺れていない。
空気そのものが静止したようだった。
「壊した?」
「いや……」
#朔夜も困惑する。
だが考えていても仕方がない。
「今のうちに行こう」
二人は慎重に進んだ。
風は吹かない。
崖道も安全に通れる。
そして危険地帯を抜けた頃。
#朔夜は何気なく時計を見た。
「……もう一回押してみよう」
カチッ。
次の瞬間。
ゴォォォォォォッ!!
「うわぁぁぁっ!?」
猛烈な風が復活した。
慌てて岩陰へ飛び込む二人。
しばらくして落ち着く。
「なるほど」
#朔夜が呟いた。
「時間を止める道具」
「今ので理解したのかよ」
アキノリは半ば呆れ顔だった。
だが結果的には助かった。
双天山の試練はまだ続く。
それでも。
二人は少しだけ自信を付けていた。
「行くか」
「ああ」
先に何が待っているのかは分からない。
だが。
仲間たちと再会するためにも。
二人は再び山の奥へと歩き出したのだった。