ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

36 / 165
#第三十六話

その頃――

双天山のもう一方の頂。

ナツメ達はようやく山頂へと辿り着いていた。

「つ、着いたぁ……」

ケータがその場にへたり込む。

トウマも肩で息をしていた。

「思ったよりキツかったな……」

しかし。

ナツメは辺りを見回して首を傾げる。

「……あれ?」

探していたものがない。

妖聖剣だ。

頂上には祭壇のような場所があるだけで、剣らしきものは見当たらなかった。

その時。

アキノリから預かっていた妖魔レーダーが反応する。

ピピッ――

矢印が示していた先は。

自分達が登ってきた山ではない。

向かい側の山だった。

「え?」

「向こう……?」

トウマも顔をしかめる。

「まさか、剣はあっちにあるのか?」

その時だった。

ゴォッ――

強い風が吹き抜ける。

気付けば。

祭壇の上に一体の存在が立っていた。

黄金の鬣。

鋭い眼光。

神々しい気配。

まるで神話から抜け出してきたような獣。

「麒麟……!」

ナツメが息を呑む。

麒麟は静かに一行を見下ろした。

『ここまで来たか』

重々しい声。

『剣を求めているのだろう』

「知ってるのか!?」

トウマが前に出る。

だが。

麒麟は答えなかった。

代わりに前足を踏み鳴らす。

[newpage]

ドォン!!

衝撃が走る。

「うわっ!?」

「きゃっ!」

面々が吹き飛ばされる。

そして。

試練が始まった。

麒麟は強かった。

圧倒的に。

雷。

風。

衝撃波。

そのどれもが強力だった。

ナツメ達は必死に応戦する。

しかし。

攻撃は届かない。

届いても浅い。

「くっ……!」

トウマが歯を食いしばる。

「まだだ!」

ケータも立ち上がる。

だが。

麒麟の一撃が炸裂した。

轟音。

閃光。

全員が地面へ叩き付けられる。

「ぐっ……!」

ナツメは膝をついた。

もう立つ力が残っていない。

トウマも。

ケータも。

みんな満身創痍だった。

麒麟がゆっくり近付いてくる。

『終わりか』

その言葉が聞こえた。

もうダメだ。

誰もがそう思った時。

――影が差した。

「ん?」

ケータが空を見上げる。

太陽が隠れた。

巨大な影。

何かが空から降りてくる。

「誰か来る!」

ナツメが叫ぶ。

次の瞬間。

ドォン!!

地面が揺れた。

土煙が舞う。

その中から二つの人影が現れる。

一人は弓を背負った少年。

もう一人は見慣れた仲間。

「アキノリ!?」

「#朔夜!?」

歓声が上がる。

アキノリは軽く手を上げた。

「間に合ったみたいだな」

「ギリギリだったけどな」

#朔夜も息を吐く。

その姿を見たケータが思わず叫ぶ。

「誰!?」

「え?」

アキノリが固まる。

続いて。

ナツメが目を見開いた。

「イケメン!?」

「は?」

今度はアキノリの顔が引きつった。

トウマがまじまじと見つめる。

「……言われてみれば」

「痩せてるな」

「え?」

「え?」

アキノリ本人だけが理解していなかった。

朔夜は黙って視線を逸らした。

(今さらか)

その時。

空が赤く染まった。

巨大な翼が広がる。

朱雀だった。

[newpage]

『麒麟よ』

麒麟が顔を上げる。

『来たか』

二柱の幻獣が向かい合う。

そして麒麟が静かに言った。

『良いのか?』

『何がだ』

『資格を与えて』

麒麟の視線がアキノリへ向く。

しかし。

朱雀は迷わなかった。

『この者らは既に資格を得ている』

静かな言葉だった。

だが確信に満ちていた。

麒麟はしばらく黙る。

明らかに不服そうだった。

だが。

やがてため息を吐いた。

『……甘いな』

『厳しすぎるだけだ』

朱雀が返す。

しばらくの沈黙。

そして。

麒麟はアキノリの前へ降り立った。

『来い』

「俺?」

『そうだ』

アキノリは一歩前へ出る。

すると。

黄金の光が溢れた。

光の中から現れたのは妖怪ウォッチ_アニマス。

そして。

二枚のアーク。

麒麟。

朱雀。

『受け取れ』

アキノリは無言でそれらを受け取った。

その瞬間。

光が身体を包み込む。

新たな力が宿る。

アノニマスだった。

すると。

麒麟と朱雀が同時にこちらを見た。

『お前にも与えよう』

『縁ある者だからな』

「?」

意味が分からない。

その時。

#朔夜の額が光った。

淡い光。

朱雀を思わせる模様。

麒麟を思わせる模様。

二つが重なり合う。

[newpage]

「うおっ!?」

「朔夜!?」

周囲が驚く。

しかし。

本人には見えない。

数秒後。

紋様は光となり。

額へ吸い込まれるように消えた。

「今、何した?」

『いずれ分かる』

『時が来ればな』

二柱はそれ以上語らなかった。

そして。

ケータ達は期待に満ちた目を向ける。

「朱雀様!」

「剣武魔神は!?」

「変身は!?」

朱雀は沈黙した。

そして。

『無理だ』

全員。

「えええええっ!?」

『事情がある』

『今は力を貸せぬ』

あまりにもあっさりした返答だった。

ケータが崩れ落ちる。

トウマも肩を落とした。

ナツメも苦笑するしかない。

『だが』

朱雀が翼を広げた。

『麓へ送ることはできる』

その瞬間。

赤い光が広がる。

景色が歪む。

空間そのものが捻じ曲がる。

そして――

気付けば。

一行は双天山の麓に立っていた。

目の前には。

待ちくたびれた様子のドラえもん達。

「遅かったね!」

ドラえもんが駆け寄ってくる。

アキノリは苦笑した。

「色々あったんだよ」

#朔夜も頷く。

「本当に色々な」

予言。

試練。

幻獣。

そして新たな力。

双天山で得たものは決して小さくなかった。

だが彼らはまだ知らない。

これが、これから始まる大きな運命の序章に過ぎないことを――。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。