双天山の麓。
赤い光が消えると同時に、一行は見慣れた景色の中へと戻っていた。
「うわっ!」
「戻ってきた!」
「すげぇ……」
ケータが辺りを見回す。
先程まで天高くそびえる山の頂にいたとは思えない。
「やっぱり朱雀様ってすごいなぁ……」
ナツメが感心したように呟いた。
その隣ではトウマが大きく伸びをしている。
「とりあえず、生きて帰ってこられただけでも良かった……」
その言葉に全員が頷いた。
双天山での出来事は濃すぎた。
巨大な怪鳥との戦闘。
麒麟の試練。
別行動になったアキノリと#朔夜。
そして――予言。
考えることが多すぎる。
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「おかえり!」
ドラえもんが駆け寄ってくる。
「遅かったね!」
「色々あったんだよ」
アキノリが苦笑した。
「本当に色々な」
#朔夜も同意する。
その時だった。
「あ」
#朔夜が小さく声を上げた。
「どうした?」
アキノリが振り返る。
#朔夜は周囲を見回していた。
一人。
足りない。
「カイラ様がいない」
その言葉にナツメ達も辺りを見回した。
言われてみればそうだった。
双天山へ向かう前までいたはずの人物。
しかし今は姿が見えない。
「あれ?」
「そういえば……」
「どこ行ったんだ?」
トウマも首を傾げる。
そこでドラえもんが思い出したように言った。
「ああ、カイラ様なら先に行っちゃったよ」
「行った?」
「うん」
ドラえもんは頷く。
「僕たちに色々質問した後、急に慌てだしてさ」
「質問?」
ナツメが聞き返した。
「黒いドアのこととか、最近変わったことはないかとか」
ドラえもんは思い出しながら答える。
「それで急に顔色を変えて、『急ぐ必要がある』って」
「そのまま消えちゃったんだ」
「カイラ様が……?」
ナツメが眉をひそめる。
ただ事ではない。
そんな気がした。
しかし。
今ここで考えても答えは出ない。
カイラ様が動く理由はカイラ様にしか分からない。
#朔夜も小さく息を吐いた。
胸の奥に妙な引っ掛かりだけが残る。
けれど。
今はそれよりも。
疲れた。
とにかく疲れた。
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「……帰りたい」
誰かが呟いた。
全員が頷いた。
「分かる」
「俺も」
「同感」
「寝たい」
「風呂入りたい」
次々に本音が飛び出す。
さっきまで世界の危機だの予言だの話していた面々とは思えない。
だが、それが普通だった。
命懸けの試練を終えたのだ。
疲れない方がおかしい。
「じゃあ今日は解散かな」
ナツメがそう言う。
誰も反対しなかった。
「また何かあったら連絡する」
「うん」
「分かった」
それぞれ返事をする。
トウマは大きくあくびをした。
ケータは既に眠そうだ。
ドラえもんものび太達と帰る準備を始めている。
そんな中。
アキノリがふと自分の手元を見る。
麒麟アーク。
朱雀アーク。
そして新しいウォッチ。
今日手に入れたものだった。
「なんか……実感ないな」
「そのうち出てくると思う」
#朔夜が言う。
「そういうもんか?」
「多分」
適当だった。
だがアキノリは少し笑った。
「まあ、そうか」
その時。
#朔夜はドラえもんへスペアポケットを差し出した。
「これ」
「あっ、ありがとう!」
ドラえもんが受け取る。
中身を確認した後、
「……減ってないよね?」
と少し不安そうに聞いた。
「たぶん」
「たぶん?」
「たぶん」
ドラえもんは急に不安になった。
だが今は確認する元気もない。
「あとで見る……」
そう呟き、肩を落とした。
その様子にアキノリと朔夜は顔を見合わせる。
少しだけ笑った。
夕日が山の向こうへ沈み始めていた。
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予言のこと。
カイラ様のこと。
黒いドアのこと。
気になることは山ほどある。
けれど今だけは。
束の間の休息だった。
それぞれが帰路につく。
そして誰も知らない。
今この瞬間もどこかで、静かに"境界"が揺らぎ始めていることを――。