ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第三十七話。

双天山の麓。

赤い光が消えると同時に、一行は見慣れた景色の中へと戻っていた。

「うわっ!」

「戻ってきた!」

「すげぇ……」

ケータが辺りを見回す。

先程まで天高くそびえる山の頂にいたとは思えない。

「やっぱり朱雀様ってすごいなぁ……」

ナツメが感心したように呟いた。

その隣ではトウマが大きく伸びをしている。

「とりあえず、生きて帰ってこられただけでも良かった……」

その言葉に全員が頷いた。

双天山での出来事は濃すぎた。

巨大な怪鳥との戦闘。

麒麟の試練。

別行動になったアキノリと#朔夜。

そして――予言。

考えることが多すぎる。

[newpage]

「おかえり!」

ドラえもんが駆け寄ってくる。

「遅かったね!」

「色々あったんだよ」

アキノリが苦笑した。

「本当に色々な」

#朔夜も同意する。

その時だった。

「あ」

#朔夜が小さく声を上げた。

「どうした?」

アキノリが振り返る。

#朔夜は周囲を見回していた。

一人。

足りない。

「カイラ様がいない」

その言葉にナツメ達も辺りを見回した。

言われてみればそうだった。

双天山へ向かう前までいたはずの人物。

しかし今は姿が見えない。

「あれ?」

「そういえば……」

「どこ行ったんだ?」

トウマも首を傾げる。

そこでドラえもんが思い出したように言った。

「ああ、カイラ様なら先に行っちゃったよ」

「行った?」

「うん」

ドラえもんは頷く。

「僕たちに色々質問した後、急に慌てだしてさ」

「質問?」

ナツメが聞き返した。

「黒いドアのこととか、最近変わったことはないかとか」

ドラえもんは思い出しながら答える。

「それで急に顔色を変えて、『急ぐ必要がある』って」

「そのまま消えちゃったんだ」

「カイラ様が……?」

ナツメが眉をひそめる。

ただ事ではない。

そんな気がした。

しかし。

今ここで考えても答えは出ない。

カイラ様が動く理由はカイラ様にしか分からない。

#朔夜も小さく息を吐いた。

胸の奥に妙な引っ掛かりだけが残る。

けれど。

今はそれよりも。

疲れた。

とにかく疲れた。

[newpage]

「……帰りたい」

誰かが呟いた。

全員が頷いた。

「分かる」

「俺も」

「同感」

「寝たい」

「風呂入りたい」

次々に本音が飛び出す。

さっきまで世界の危機だの予言だの話していた面々とは思えない。

だが、それが普通だった。

命懸けの試練を終えたのだ。

疲れない方がおかしい。

「じゃあ今日は解散かな」

ナツメがそう言う。

誰も反対しなかった。

「また何かあったら連絡する」

「うん」

「分かった」

それぞれ返事をする。

トウマは大きくあくびをした。

ケータは既に眠そうだ。

ドラえもんものび太達と帰る準備を始めている。

そんな中。

アキノリがふと自分の手元を見る。

麒麟アーク。

朱雀アーク。

そして新しいウォッチ。

今日手に入れたものだった。

「なんか……実感ないな」

「そのうち出てくると思う」

#朔夜が言う。

「そういうもんか?」

「多分」

適当だった。

だがアキノリは少し笑った。

「まあ、そうか」

その時。

#朔夜はドラえもんへスペアポケットを差し出した。

「これ」

「あっ、ありがとう!」

ドラえもんが受け取る。

中身を確認した後、

「……減ってないよね?」

と少し不安そうに聞いた。

「たぶん」

「たぶん?」

「たぶん」

ドラえもんは急に不安になった。

だが今は確認する元気もない。

「あとで見る……」

そう呟き、肩を落とした。

その様子にアキノリと朔夜は顔を見合わせる。

少しだけ笑った。

夕日が山の向こうへ沈み始めていた。

[newpage]

予言のこと。

カイラ様のこと。

黒いドアのこと。

気になることは山ほどある。

けれど今だけは。

束の間の休息だった。

それぞれが帰路につく。

そして誰も知らない。

今この瞬間もどこかで、静かに"境界"が揺らぎ始めていることを――。

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