ナツメとしずかに両腕を掴まれたまま、#朔夜は砂浜を引っ張られていた。
「ちょ、ちょっと待って……!」
「ダメ」
「逃がさないわ」
即答だった。
嫌な予感しかしない。
そして案の定――。
「みんなー! 連れてきたよー!」
ナツメの声に、その場にいた全員の視線が集まった。
#朔夜は反射的に肩を震わせる。
(終わった……)
そう思った瞬間。
くるりと身を翻し、しずかとナツメの後ろへ隠れた。
「え?」
「どうした?」
集まってきたのび太達が首を傾げる。
だが、隠れようとした#朔夜の肩をナツメががっちり掴んだ。
「はい、前へ」
「やだ」
「ダメ」
「やだ!」
珍しく即答だった。
しかし抵抗も虚しく、ずるずると前へ押し出される。
そして。
#朔夜の姿が全員の前に晒された。
普段は大きめのパーカーと短パンに隠れている身体。
だが今は違う。
黒と白のギンガムチェック柄のフリル付きトップス。
肩が出るデザインで、普段見慣れない白い肌が陽光を受けていた。
腰には黒いスカート付きのボトム。
海風を受けるたびに裾が揺れ、そのたびに朔夜本人が落ち着かなさそうに視線を泳がせる。
さらに今日は、いつも後ろで軽くまとめている髪ではない。
長い水色の髪は丁寧な三つ編みにされ、肩へ流されていた。
そして何より――。
顔が真っ赤だった。
耳までしっかり赤い。
視線は地面を行ったり来たり。
両手は落ち着きなく胸元で握られている。
完全に羞恥心で限界だった。
[newpage]
「……」
「……」
男子勢が固まる。
のび太。
スネ夫。
ジャイアン。
ケータ。
アキノリ。
トウマ。
全員、一瞬言葉を失った。
その反応に#朔夜はさらに赤くなる。
「み、見ないで……」
小さな声。
だがしっかり聞こえた。
その破壊力で男子勢の思考が一瞬止まる。
ただし。
誰一人として余計なことは言わなかった。
本能的に理解したのだ。
ここで何か言えば危険だと。
非常に危険だと。
だから全員、必死に別の感想を探した。
「に、似合ってるんじゃないか?」
最初に言ったのはドラえもんだった。
極めて無難。
極めて安全。
「そ、そうだよ!」
「うんうん!」
「変じゃないぞ!」
慌てて全員が続く。
#朔夜は顔を伏せた。
嬉しいとかそういう問題ではない。
とにかく恥ずかしい。
「やっぱり着替える!」
そう叫んで更衣室へ走ろうとする。
だが。
がしっ。
腕を掴まれた。
「離して」
「離さない」
ナツメだった。
「似合ってるんだからいいじゃん」
「よくない……」
「いいの」
「よくない……」
半泣きである。
そんな様子を見ていたしずかは苦笑した。
[newpage]
一方ナツメは、ちらりと#朔夜の肩を見る。
白い。
びっくりするほど白い。
普段ほとんど肌を出さないせいもあるだろう。
「……なんか悔しい」
「え?」
「何でもない」
ナツメは視線を逸らした。
その時。
「だったらさ」
ドラえもんが提案する。
「ラッシュガードを着ればいいんじゃない?」
#朔夜の目が輝いた。
救世主を見る目だった。
「着る」
即答。
「絶対着る」
数分後。
ラッシュガードを羽織った#朔夜は、ようやく落ち着きを取り戻していた。
肩も隠れた。
風も気にならない。
安心感が違う。
「はぁ……」
安堵のため息。
そんな朔夜を見て、ナツメとしずかは顔を見合わせる。
そして小さく笑った。
どうやら今回の作戦は大成功だったらしい。