ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

44 / 165
#第四十四話

海風が吹く。

波の音が聞こえる。

青い空。

白い砂浜。

絶好の海水浴日和だった。

「海だぁぁぁーっ!」

のび太が全力で海へ突撃する。

「待てのび太!」

「浮き輪忘れてるぞ!」

ジャイアンとスネ夫が追いかける。

しずか達は浜辺でパラソルを広げていた。

そんな賑やかな光景の中。

#朔夜は少しだけ離れた場所で座っていた。

「……」

ラッシュガードの襟元を引っ張る。

その下には、先ほどナツメ達に無理やり着せられた水着。

慣れない。

とにかく慣れない。

肩が出る感覚も。

スカートが風で揺れる感覚も。

全部落ち着かない。

「暑い……」

六月末とは思えない日差しだ。

ラッシュガードを着ているせいで余計に暑い。

その時。

海の家から聞こえてきた。

「かき氷売り切れでーす!」

「えぇぇぇぇぇ!?」

誰かの悲鳴。

朔夜は思わずそちらを見る。

(かき氷……)

少し食べたかった。

だが売り切れらしい。

代わりに何か冷たい物でも――

そう思った時だった。

(アイス……)

食べたい。

とても。

しかし。

問題があった。

[newpage]

近くのスーパーまで行けば買えるだろう。

だが。

この格好で?

絶対嫌だ。

とても嫌だ。

海ならまだいい。

だが町中は無理だ。

恥ずかしい。

非常に恥ずかしい。

そこで#朔夜は周囲を見回した。

ちょうど近くにいた人物を発見する。

トウマだった。

「トウマ」

「ん?」

「アイス食べたくない?」

数秒。

トウマは考えた。

そして。

「食べたいな」

即答だった。

(よし)

巻き込めた。

一人じゃない。

重要である。

「買いに行こう」

「おう」

こうして二人は浜辺を離れることになった。

近くにいたドラえもんへ声を掛ける。

「少し買い物行ってくる」

「分かったー」

ドラえもんは気軽に手を振った。

「気を付けてねー」

[newpage]

海岸沿いの道。

照り返しが強い。

「暑いな」

「うん」

歩きながらトウマが呟く。

その時だった。

前方に見える。

大量の買い物袋。

そして。

その中心でふらついている女性。

「大丈夫かな」

「大丈夫には見えないな」

近付く。

よく見ると額には大量の汗。

腕も震えていた。

「持ちます」

#朔夜が声を掛けた。

女性は驚いたように振り返る。

「あっ」

「え?」

「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫だけど……」

全然大丈夫そうではなかった。

トウマも苦笑する。

「半分持つよ」

「助かる……」

女性は心底ほっとした顔をした。

荷物を分担する。

思った以上に重い。

飲み物。

野菜。

肉。

魚。

とにかく量が多い。

「すごい量だね」

#朔夜が言う。

女性は苦笑した。

「実はね」

「叔父さんが急に漁師仲間を連れて帰ってきたの」

「なるほど」

トウマが納得する。

「それで買い出し?」

「そう」

女性は肩を落とした。

「冷蔵庫ほぼ空だったのに」

「いきなり増えるんだもん」

「大変だ」

「でしょ?」

少し笑いが起きる。

歩きながら話しているうちに、自然と打ち解けていた。

「そういえば」

#朔夜が尋ねる。

「名前は?」

「あ、まだ言ってなかった」

女性は笑った。

「犬山まな」

「私は犬山まな」

「よろしくね」

「#朔夜です」

「俺はトウマ」

「よろしく」

まなはにっこり笑った。

[newpage]

目的地へ到着する。

荷物を運び終えると、まなは深々と頭を下げた。

「本当に助かった」

「気にしないで」

「困った時はお互い様」

#朔夜が答える。

すると。

まなは何かを思い出したように家の中へ入っていった。

しばらくして。

戻ってくる。

手には小さな箱。

「お礼」

「え?」

「限定アイス」

「限定?」

トウマが反応した。

「この辺でしか売ってないやつ」

その一言で。

二人は少し心が揺れた。

結局。

ありがたく受け取ることにした。

[newpage]

帰り道。

アイスを食べる。

冷たい。

美味しい。

とても美味しい。

「うまいな」

「うん」

沈黙。

数秒後。

「……」

「……」

二人は顔を見合わせた。

同じことを考えていた。

「俺たちだけ食べてるな」

トウマが言う。

「そうだね」

#朔夜も頷く。

海には。

のび太達。

ナツメ達。

ドラえもん達。

みんながいる。

「なんか」

「少し罪悪感あるな」

「あるね」

再び沈黙。

そして。

「買っていこうか」

「そうしよう」

意見は一致した。

もともとの目的もアイスだった。

二人は方向転換する。

スーパーへ向かうために。

その途中。

#朔夜はふと思った。

犬山まな。

少し不思議な人だった。

初対面なのに話しやすかった。

それに――

この町そのものが、どこか妙に気になる。

海。

漁港。

人々の暮らし。

黒いドアの向こうにある世界。

まだ何かありそうな気がした。

だが今は。

まずアイスだ。

「急ごう」

トウマが笑う。

二人は足を速めた。

仲間達へのアイスを買うために。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。