ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第四十五話

日が少しずつ傾き始めていた。

昼間はあれほど賑やかだった浜辺も、徐々に人影が少なくなっていく。

「もう帰るのかぁ……」

のび太が名残惜しそうに海を見つめた。

「まだ遊び足りないぜ!」

ジャイアンも腕を組む。

「でも楽しかったね」

しずかが微笑む。

海水浴は大成功だった。

泳いで、遊んで、BBQもして。

気づけば一日があっという間に過ぎていた。

そんな時だった。

『お知らせいたします』

放送が流れる。

『本日夜間、花火大会開催のため、会場設営を行います。安全確保のためビーチを一時封鎖いたします』

「花火大会?」

「聞いてないぞ?」

ケータが首を傾げた。

「自分も初耳」

#朔夜も驚く。

どうやら地元の祭りと花火大会が今夜開催されるらしい。

海の家のお姉さんが笑顔で教えてくれた。

「それなら近くの温泉に行ってきたら?」

「花火が始まる頃には屋台も並ぶよ」

「いいね!」

ナツメが目を輝かせた。

[newpage]

温泉を出る頃には空は茜色に染まっていた。

そして祭りの会場へ向かった一行は思わず足を止める。

昼間とは別世界だった。

提灯。

屋台。

人の波。

焼きそばの香り。

金魚すくい。

射的。

どこを見ても祭り一色だ。

「すごーい!」

のび太が歓声を上げる。

「祭りだ祭りだ!」

ジャイアンも上機嫌だった。

[newpage]

しばらく後。

#朔夜は一人、祭りの通りを歩いていた。

着せ替えカメラで変えられた浴衣姿。

淡い水色の浴衣に白い帯。

髪はいつものまとめ方ではなく三つ編みにして肩へ流している。

狐のお面を頭の横にずらし、

片手には綿あめ。

完全に祭りを楽しんでいる人だった。

(思ったより悪くないな……)

そんなことを考えながら歩いていると、

射的の屋台を見つけた。

(のび太たち好きそうだな)

そう思って振り返る。

しかし。

「あれ?」

誰もいない。

さっきまで歩いていたはずの道が違って見えた。

ざわざわと人はいる。

祭りの雰囲気も変わらない。

だが何かがおかしい。

赤い提灯の灯りは妙に妖しく。

屋台の作りもどこか古い。

木造の建物。

石畳。

時代劇のセットのような風景。

まるで教科書で見た江戸時代だった。

「お兄ちゃん、りんご飴どうだい?」

突然声を掛けられる。

#朔夜は反射的に振り返った。

そして固まった。

屋台の店主。

それは人間ではなかった。

角が生えていた。

いや。

もっと根本的に。

妖怪だった。

「え?」

思わず声が漏れる。

店主は首を傾げた。

「どうした?」

「い、いや……なんでも」

#朔夜は慌てて頭を下げる。

そしてその場を離れた。

心臓が嫌な音を立てている。

(妖怪……?)

(なんで普通に屋台やってるんだ?)

立ち止まる。

周囲を見渡す。

よく見ると。

歩いている人影の中にも。

人間ではない存在が混じっていた。

尻尾。

翼。

一本足。

見覚えのある妖怪もいる。

(夢……?)

頬をつねる。

痛い。

普通に痛い。

夢ではない。

[newpage]

「……どうしよう」

スマホは圏外。

ドラえもん達もいない。

帰り道も分からない。

完全に迷った。

境界。

黒いドア。

今まで経験した異変が頭をよぎる。

だが今回は様子が違う。

敵意がない。

むしろ――

ここにいる全員が当たり前のように祭りを楽しんでいる。

#朔夜は立ち尽くした。

その時だった。

「君、大丈夫かい?」

穏やかな声が聞こえた。

振り返る。

そこには一人の少年が立っていた。

中学生くらい。

長い前髪が片目を隠し。

眼鏡を掛けている。

どこか落ち着いた雰囲気を持つ少年だった。

彼は少しだけ首を傾げる。

「もしかして……」

「迷ったの?」

#朔夜は思わず息を呑んだ。

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