ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第四十六話

「君、大丈夫かい?」

穏やかな声だった。

#朔夜は少しだけ警戒しながら振り返る。

そこには眼鏡を掛けた少年が立っていた。

片目を長い前髪で隠した、不思議な雰囲気の少年。

けれど。

何故だろう。

怖くなかった。

むしろ――

この人なら大丈夫。

そんな感覚があった。

「……ここ、どこなの?」

思わず聞いていた。

少年は少し笑う。

「妖怪縁日だよ」

「妖怪縁日?」

「うん」

そして続ける。

「それと」

「無理して敬語使わなくていいから」

「え?」

「同じくらいの歳でしょ?」

そう言って笑った。

どこか親しみやすい笑顔だった。

[newpage]

妖怪縁日。

そう聞いていたが、歩いてみると意外だった。

射的。

金魚すくい。

綿あめ。

焼きそば。

りんご飴。

人間のお祭りと大差ない。

違うのは店員や客の中に妖怪が混ざっていることくらいだった。

「なんか普通だね」

「だろ?」

少年は笑う。

「みんな祭りは好きだから」

その言葉に#朔夜も少し納得した。

 

 

その時だった。

ふと。

ある屋台が目に入る。

#朔夜は足を止めた。

「……」

宝石屋だった。

棚の上には色とりどりの宝玉が並んでいる。

その中で一つだけ。

青い宝石。

黒い組み紐。

まるで夜空を閉じ込めたような深い青。

視線が離れない。

欲しい。

自分でも驚くほどそう思った。

[newpage]

「へぇ」

隣で少年が笑った。

「渋いなぁ」

「え?」

「それ選ぶんだ」

少年は宝玉を見つめる。

そして少しだけ考えるように目を細めた。

「本当ならダメなんだけど……」

「?」

「君なら大丈夫かな」

意味深な言葉だった。

何か言いたげだったが、それ以上は語らない。

代わりに屋台へ近付く。

「これ、お願いできる?」

店員の妖怪が目を丸くした。

「マ、マオ様!?」

「え?」

#朔夜も驚く。

様?

偉い人なのか?

だが本人は気にした様子もない。

「これで」

会計を済ませてしまう。

「あっ!」

#朔夜は慌てた。

「代金払う!」

「いいよいいよ」

マオは手を振る。

「でも――」

「いいから」

優しく笑う。

「また会った時でいいから」

そこまで言われると反論できなかった。

「……ありがとう」

「うん」

マオは満足そうに頷いた。

 

 

しばらく歩く。

「それにしても」

マオが宝玉を見る。

「なんでこれだったの?」

「え?」

「もっと派手なのもあったのに」

#朔夜は少し考える。

「弓を習ってるから」

「なるほど」

「弓に合うかなって」

「……」

マオは何故か笑った。

「敬語」

「あ」

またやってしまった。

「だから弓に合うかなって」

言い直す。

マオは満足そうに頷いた。

「うん」

「そっちの方がいい」

[newpage]

話しているうちに。

気付けば祭りの賑わいは少しずつ遠ざかっていた。

石段。

そして大きな鳥居。

山の頂上に近い場所だった。

「ここ?」

「うん」

マオが頷く。

「出口」

そう言って鳥居をくぐった。

#朔夜も後に続く。

その瞬間。

――ドォン。

夜空に大輪の花が咲いた。

花火だった。

鮮やかな光が空を染める。

風景が一瞬揺れる。

そして。

次の瞬間には。

見慣れた祭りの通りへ戻っていた。

人間達の声。

屋台の灯り。

さっきまでとは違う景色。

「帰れたね」

マオが微笑む。

#朔夜はほっと息を吐いた。

「あれ?」

その時だった。

「君も来たの?」

#朔夜も振り返る。

そこには一人の少女――いや、女性が立っていた。

昼間。

トウマと一緒に荷物運びを手伝った相手。

犬山まなだった。

花火の光に照らされながら、

彼女は少し困ったような顔でこちらを見ていた。

「えっと……」

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