ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第四十七話

「地元の人しか知らないはずなんだけどなぁ……」

犬山まなは不思議そうに首を傾げた。

その言葉に、#朔夜はハッとして振り返る。

「え?」

さっきまで隣にいたはずの少年。

眼鏡を掛けた、不思議な雰囲気の少年。

だが――

そこにはもう誰もいなかった。

「……いない」

思わず呟く。

人混みの中を見回しても見つからない。

まるで最初から存在していなかったかのようだった。

「知り合い?」

まなが尋ねる。

「いや……たぶん」

#朔夜自身もよく分からなかった。

名前は聞いた。

マオ。

それだけだ。

それなのに、妙に印象に残る。

首元の宝玉に触れる。

ひんやりと冷たい感触が伝わってきた。

「まあいいや」

まなが笑う。

「せっかくここまで来たんだし、一緒に見ようよ」

そう言って夜空を見上げた。

ちょうど次の花火が上がるところだった。

[newpage]

ドォン――。

低い音が響く。

夜空に大輪の花が咲いた。

赤。

青。

金。

次々と広がっては消えていく。

#朔夜も空を見上げる。

不思議だった。

今まで何度か花火は見たことがある。

けれど。

今夜の花火は少し違って見えた。

風が心地いい。

潮の匂いがする。

遠くから祭りの賑わいも聞こえる。

音楽は流れていない。

だからこそ。

ただ花火だけが夜空に咲く。

その美しさが際立っていた。

「綺麗だね」

まながぽつりと呟く。

「うん」

#朔夜も頷いた。

その時だった。

ふと視線を感じる。

何気なく横を見る。

そしてさらに上を見る。

神社の屋根。

そこに誰かが座っていた。

長い髪。

鋭い目。

見覚えがある。

「――」

猫娘だった。

思わず目を見開く。

すると向こうもこちらに気付いたらしい。

一瞬だけ固まる。

そして。

「あっ」

そんな表情をした。

次の瞬間。

人差し指を口元へ。

シー。

静かに。

言うな。

そういう意味だった。

朔夜は思わず頷く。

[newpage]

なるほど。

護衛だ。

まなの近くにいる理由も理解できた。

まな本人は気付いていない。

今も花火を見上げている。

だから#朔夜も何も言わなかった。

 

 

花火は次々と打ち上がる。

大きな花。

細かな花。

夜空いっぱいに広がる光。

やがて。

終盤が近付いてきた。

「そろそろかな」

まなが腕時計を見る。

「帰るの?」

「うん」

少し残念そうに笑う。

「バスの時間があるから」

なるほど。

花火大会の帰りは混む。

乗り遅れたら大変だ。

「じゃあ私、先に下りるね」

「分かった」

#朔夜も頷く。

そして。

二人は石段を下り始めた。

[newpage]

途中で朔夜は何気なく振り返る。

さっきまで猫娘がいた屋根。

しかし。

もう姿はなかった。

月明かりだけが静かに降り注いでいる。

(帰ったのかな)

そう思った。

きっと。

まなが無事ならそれでいいのだろう。

 

 

山を下りる。

祭りの灯りが近付いてくる。

その瞬間だった。

「#朔夜ー!!」

聞き覚えのある声。

次の瞬間。

複数の足音が近付いてきた。

「いた!!」

「見つかった!」

「無事だった!」

のび太。

しずか。

スネ夫。

ジャイアン。

ドラえもん。

さらにナツメ達までいる。

全員がこちらへ駆け寄ってきた。

「え?」

#朔夜は目を瞬かせる。

「探したんだからな!」

ジャイアンが叫ぶ。

「本当に心配したんだぞ!」

スネ夫も珍しく真面目な顔だった。

「急にいなくなるんだもん」

しずかが安堵したように胸を撫で下ろす。

「ごめん……」

#朔夜は素直に頭を下げた。

すると。

ドラえもんが腕を組む。

「ごめんじゃないよ!」

「え」

「どれだけ探したと思ってるの!」

完全に説教モードだった。

「いや、その……」

「いやじゃない!」

即座に返される。

反論できない。

[newpage]

そんな様子を見ていたまなが苦笑する。

「じゃあ私はここで」

「あ」

「今日はありがとう」

そう言って手を振る。

「またね」

まなは人混みの中へ消えていった。

その背中を見送りながら。

#朔夜は再びドラえもんへ向き直る。

「聞いてよドラえもん」

「聞かない!」

「えぇ……」

即答だった。

 

 

結局。

その後も説教は続いた。

のび太から。

しずかから。

ナツメから。

トウマから。

順番に。

「一人で行動しない」

「連絡する」

「迷ったらその場で待つ」

などなど。

次々と注意される。

#朔夜は大人しく聞いていた。

だが。

心の中では少しだけ思う。

(自分、そんなに悪かったかな……)

妖怪縁日に迷い込んだ。

マオに会った。

花火を見た。

猫娘を見た。

全部自分の意思ではない。

なのに。

「反省してる?」

ナツメが聞く。

「……してる」

朔夜は小さく答えた。

その首元では。

誰にも気付かれないまま。

青い宝玉が月明かりを受けて静かに輝いていた。

そしてその小さな光が、

これから訪れる新たな出来事の始まりであることを、

まだ誰も知らなかった。

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