ヒョーガ・ヒョーガ星の空は、どこまでも白かった。
吹き荒れる冷気の中、一行は凍りついた大地の上を飛んでいく。
「うぉぉ寒っ!」
ケータが肩を縮めた。
「口の中まで凍りそうなんだけど!?」
「だから厚着してきなさいって言ったでしょ」
ナツメが呆れたように言う。
タケコプターを頭につけた妖怪ウォッチ勢は、まだどこかぎこちない飛び方だった。
特にアキノリ。
「これ本当に大丈夫なの!?」
「落ちない!?」
「落ちないよ」
ドラえもんが即答する。
トウマは風を切りながら周囲を見回した。
「……便利すぎ、この道具」
「未来の道具だからね!」
ドラえもんは少し得意げだ。
「空飛ぶ妖術みたいなもの?」
「いや絶対違うでしょ」
ケータがツッコむ。
その少し後ろ。
巨大な影が、静かに空を進んでいた。
コマさん。
シャドウサイド化した姿のまま、気絶中のカーラを抱えて飛んでいる。
白銀の鬣。
鋭い角。
獣じみた巨大な身体。
吹雪の中だと余計に迫力があった。
「……不思議なこともあるんだのう」
コマさんが呟く。
その隣で、
『いや、そもそもアンタもウィスよね?』
ウィスパーが冷静にツッコんだ。
「え?」
コマさんが振り返る。
『飛んでることに今さら驚くの変でウィス』
『たしかにニャン』
「言われてみればそうズラ……」
本人も納得していた。
#朔夜はその会話を聞きながら、苦笑する。
(基準がわかんないな、もう)
◇
妖怪。
未来道具。
異星文明。
全部が混ざっている。
なのに、不思議と誰も置いていかれてはいなかった。
――その時。
「……ん」
小さな声。
カーラがゆっくり目を開けた。
「ここ、は……」
「カーラ!」
しずかが顔を明るくする。
カーラはぼんやりと周囲を見回し――。
そして。
真正面にいたコマさんと目が合った。
『起きたズラ?』
「――――ッ!!?」
カーラの顔が凍りつく。
「い、いかつい犬が喋ってる!!?」
『犬!?』
コマさんがショックを受けた。
「いや気持ちは分かる」
#朔夜が静かに頷いた。わかる。物凄っごい分かる。
初見のインパクトは凄かった。
正直、朔夜も最初はかなり怖かった。
「犬じゃないズラ! 狛犬ズラ!!」
『そこなんでこだわるニャン』
空中でわちゃわちゃが始まる。
その様子を見て、カーラは少しだけ表情を緩めた。
「……変な人達」
「よく言われる」
ケータが即答した。
その時だった。
カーラの顔色が変わる。
◇◇
「……あれ!」
彼女が前方を指差す。
一同の視線が向く。
凍てついた大地。
その遥か先。
白い氷原の中に、不自然な建造物が見えていた。
「あれって……」
ドラえもんが目を細める。
「ヒャッコイ博士のラボ!」
カーラが叫ぶ。
近づくにつれ、その異様さがはっきりしていく。
半分以上、氷に埋もれている。
周囲には巨大な氷柱。
吹雪に削られた外壁。
まるで、世界そのものに呑み込まれかけているみたいだった。
「なんか……嫌な感じだな」
トウマが低く呟く。
誰も否定しなかった。
一行は速度を落とし、慎重にラボへ降下を始める。
ヒョーガ・ヒョーガ星の風だけが、不気味に唸っていた。
ヒャッコイ博士大丈夫かな~?