翌日の午後。
野比家には、いつもの面々が集まっていた。
居間のテーブルには地図やノート、ドラえもんが取り出した古い記録が山積みになっている。
「うーん……」
ドラえもんは腕を組みながら唸った。
「確かあの時は……」
のび太が首を傾げる。
「新しい方ではアマゾンだったはずだぜ」
ジャイアンが言う。
「いや、でも途中の経路が思い出せないんだよなぁ」
スネ夫も記憶を辿る。
当時の冒険からかなりの年月が経っている。
しかもドラえもん達自身、ペコの王国へ辿り着くまでに様々な出来事があったため、細かな経路までは曖昧になっていた。
「とりあえず確認しよう」
ドラえもんは古い記録をめくった。
「ペコの本名はクンタック王子。そして彼が治めていた国は――」
「バウワンコ王国」
のび太が懐かしそうに呟く。
その名前を聞いて、#朔夜は少し驚いた。
「本当に王子だったんだ……」
ペコ本人から直接聞いたわけではない。
だから半信半疑だったのだ。
「すごいよね」
しずかが微笑む。
「最初はただの犬だと思ってたのに」
「いや、今思い返してもだいぶすごい話だよな」
スネ夫も頷いた。
犬だと思っていた相手が実は異世界の王子だった。
普通なら信じられない。
しかし彼らにとっては実際に体験した事実だった。
「それで、その王国の近くにあったのが神像だったよな」
ジャイアンが言う。
「神像……」
その言葉に、#朔夜は反応した。
神像。
どこかで聞いたことがある。
記憶の引き出しを探る。
[newpage]
ある日の学校の光景が浮かんだ。
数か月前。
昼休み。
珍しく出木杉君が興奮気味に話しかけてきたことがあった。
『見てくれないか、#朔夜くん』
そう言って見せられた写真。
海外の遺跡だった。
巨大な石像。
人を模したような不思議な姿。
そして。
出木杉は確か言っていた。
『アマゾンの奥地で発見された神像らしいんだ』
『ヘビー・スモーカーズ・フォレストと関係があるかもしれないって』
――そこまで思い出した瞬間だった。
「ヘビーなスモーカーってやつだっけ……」
無意識に言葉が漏れる。
その瞬間。
部屋の空気が止まった。
「……え?」
#朔夜は顔を上げる。
すると。
ドラえもん。
のび太。
しずか。
ジャイアン。
スネ夫。
全員がこちらを見ていた。
「な、何?」
思わず後ずさる。
ドラえもんが立ち上がった。
「それだ!!」
「へ?」
「ヘビー・スモーカーズ・フォレスト!!」
ドラえもんは机を叩いた。
「思い出した!」
「僕も!」
のび太が叫ぶ。
「神像!」
「そうだ!」
ジャイアンも拳を握る。
「神像の近くだった!」
「入口の目印だったのよ!」
しずかも思い出したように言う。
一斉に盛り上がり始める面々に、#朔夜だけが置いていかれる。
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「え、えっと……?」
スネ夫が説明してくれた。
「魔境へ行く手掛かりだよ!」
「昔の冒険で見つけた神像があったんだ!」
「その場所が入口に繋がってたんだよ!」
次々に飛んでくる説明に、朔夜はようやく理解した。
つまり。
出木杉が見せてきた写真。
あれが重要だったのだ。
ドラえもんは急いで四次元ポケットを探り始める。
「よし!」
取り出したのは世界地図だった。
「場所はアマゾン!」
「細かい位置は調べ直さないといけないけど、方向性は確定だ!」
のび太が勢いよく立ち上がる。
「ペコを助けに行こう!」
「おう!」
ジャイアンが拳を突き上げる。
「待ってろよペコ!」
「鬼太郎さん達より先に着けたりしてな」
スネ夫が笑う。
「それは無理だと思う」
冷静にアキノリが突っ込んだ。
だが誰も気にしていない。
久しぶりの大冒険。
しかも助けに行く相手は昔の友人だ。
その場にいる全員の目が輝いていた。
#朔夜も思わず笑う。
昨日までの重苦しい空気が少しだけ軽くなった気がした。
[newpage]
こうして。
ドラえもん一行。
妖怪探偵団。
そして#朔夜。
彼らは魔境への手掛かりを掴み、新たな冒険へ向けて動き始める。
一方その頃。
遥か遠く。
深い森に囲まれたバウワンコ王国では。
黒い太陽が、不気味な光を放ちながら空に浮かんでいた。