ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#五十三話

どこでもドアを潜った瞬間。

むわり、と湿った熱気が全身を包み込んだ。

「うわっ……暑っ!」

ケースケが思わず顔をしかめる。

目の前に広がっていたのは、見渡す限りの熱帯雨林だった。

空を覆い隠すほど巨大な木々。

複雑に絡み合う蔦。

濃い緑の匂い。

そして絶え間なく聞こえてくる鳥や虫の鳴き声。

日本ではまず見ることのない光景だった。

「ここがアマゾン……」

#朔夜は思わず呟く。

地図や映像で見たことはあったが、実際に立つと圧倒される。

「懐かしいなぁ」

のび太が辺りを見回した。

「前に来た時もこんな感じだったよね」

「いや、前より暑くなってない?」

スネ夫が額の汗を拭う。

「気のせいだろ」

ジャイアンが笑う。

その横でドラえもんは川辺へ向かっていた。

「さて、それじゃ移動手段を出そうかな」

ポケットから取り出したのは、小さな船の模型だった。

「探検ごっこ用蒸気船!」

船を水面へ置く。

するとみるみる巨大化し、本物の蒸気船へと変化した。

白い船体。

木製の甲板。

後部には大きな外輪。

まるで探検家の乗る冒険船そのものだった。

「おおー!」

ケースケが目を輝かせる。

「かっけぇ!」

「探検なんだから雰囲気も大事だろ?」

ドラえもんは得意げだった。

やがて全員が乗り込み、蒸気船はゆっくりと上流へ向けて進み始める。

航海は順調だった。

川岸には色鮮やかな鳥が止まり、

巨大な花が咲き、

時折見たこともない動物の姿も見える。

ケースケとジバニャンはその度に騒ぎ、

ナツメとトウマに叱られていた。

「平和だなぁ」

アキノリが呟く。

「嵐の前の静けさかもよ?」

ケータが笑う。

その時だった。

川面に何かが浮かび上がる。

二つの黄色い目。

続いてもう一つ。

さらにもう一つ。

「……ワニ?」

#朔夜が言った瞬間。

バシャッ!

巨大なワニが姿を現した。

「うおっ!?」

ケースケが飛び上がる。

しかしドラえもん達は妙に落ち着いていた。

[newpage]

「あー、いたいた」

のび太が言う。

「懐かしいな」

「前はここで大変だったんだよな」

スネ夫も苦笑する。

ワニ達は船を追いかけてくるものの、蒸気船には追いつけない。

しばらくすると諦めて去っていった。

「昔は苦労したんだぞ」

ジャイアンが笑う。

「今回は余裕だな」

過去の経験者達と、新メンバー達。

その差がよく分かる場面だった。

だが。

アマゾンの日暮れは早い。

まだ昼過ぎだと思っていたのに、いつの間にか太陽は傾き始めていた。

夕焼けが川を赤く染める。

そして。

気付けば辺りは暗くなり始めていた。

「もう夜!?」

しずかが驚く。

「熱帯地方だからね」

ドラえもんが説明した。

「ここは日が落ちるのが早いんだ」

「じゃあ今日は野宿?」

トウマが尋ねる。

「その必要はないよ」

ドラえもんは再びポケットへ手を入れた。

取り出したのは小さな瓶。

「植物改造エキス!」

一行は川辺にそびえる巨大な樹木の前へ降り立った。

幹だけで家ほどの大きさがある。

「この木を使うの?」

#朔夜が尋ねる。

「うん」

ドラえもんはエキスを振りかけた。

すると木が震え始める。

ゴゴゴゴ……

幹が広がり。

窓が生まれ。

扉が現れる。

さらに内部には階段や部屋まで形成されていった。

数分後。

巨大なツリーハウスが完成する。

「すご……」

#朔夜は思わず見上げた。

しかも内部は予想以上だった。

[newpage]

各自に個室が与えられ、

簡易ベッドや机まで設置されている。

「ホテルじゃん」

トウマが呆れる。

「秘密道具だからね」

ドラえもんは満足そうだった。

夕食後。

それぞれが自由に過ごしていた頃。

「お風呂入りたい」

しずかが真顔で言った。

男子陣が一斉に固まる。

「まあ言うと思った」

ドラえもんが苦笑する。

「こんなに汗かいたんだもの」

しずかは当然と言わんばかりだった。

「私も入りたい」

ナツメが頷く。

二人は相談すると、小さな部屋へ入っていった。

しばらくして戻ってきた二人は妙にさっぱりしていた。

「どうしたんだ?」

ケータが尋ねる。

「妖怪に手伝ってもらったの」

ナツメが答える。

「水や炎を扱える妖怪を呼んだから」

「本当に風呂作ったのか……」

アキノリが呆れた。

「快適だったわよ」

しずかは満足そうだった。

男子陣は顔を見合わせるしかなかった。

[newpage]

翌日。

蒸気船は再び出航した。

朝の霧が晴れ。

昼を過ぎ。

午後になる。

川は少しずつ狭くなり、両岸の崖も高くなっていった。

「そろそろかな」

ドラえもんが呟く。

「何が?」

#朔夜が尋ねる。

だがドラえもんは答えない。

その代わり、のび太やジャイアン達がどこか懐かしそうな顔をしていた。

そして夕方。

太陽が赤く染まり始めた頃だった。

ゴォォォォォォォ……

遠くから地響きのような音が聞こえる。

次第に大きくなる轟音。

やがて。

その正体が見えた。

巨大な滝。

まるで山そのものが崩れ落ちるような大瀑布だった。

「うわぁぁぁ!?」

ケースケが叫ぶ。

「滝じゃん!!」

「おいおいおい!」

アキノリも立ち上がる。

「ドラえもん!回避!」

ナツメが叫ぶ。

だが。

蒸気船は止まらない。

むしろ真っ直ぐ進んでいる。

滝へ向かって。

「ドラえもん!?」

#朔夜も思わず声を上げる。

しかし当の本人は落ち着いていた。

「大丈夫」

「何が!?」

全員が叫ぶ。

その中で。

のび太だけが笑った。

「懐かしいなぁ」

「ここだったよね」

スネ夫も頷く。

「そうそう」

ジャイアンまで笑っている。

経験者組だけが妙に余裕だった。

そしてドラえもんは言った。

「このままでいいんだ」

轟音はさらに大きくなる。

滝は目前。

逃げ場はない。

蒸気船はそのまま水煙の中へ突っ込み――

巨大な滝へと飲み込まれた。

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