ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第五十四話

轟音。

白い水煙。

そして――

「うわああああああっ!?」

のび太の悲鳴が洞窟中に響き渡った。

蒸気船は巨大な滝へと突っ込んだまま、そのまま落下することなく水の壁の向こうへ滑り込んでいく。

「え?」

#朔夜は思わず目を瞬かせた。

そこに広がっていたのは、巨大な空洞だった。

滝の裏側。

天然の洞窟。

外からでは決して見えない秘密の通路である。

「なるほど……」

トウマが感心したように呟く。

「だから回避しなかったのか」

「昔もここを通ったんだよ」

のび太が懐かしそうに言う。

「最初は僕たちもすごく驚いたんだ」

「いや、そりゃ驚くだろ」

ジャイアン以外の全員が心の中で同意した。

やがて蒸気船は岸へと接岸する。

一行は荷物を持って上陸した。

 

 

洞窟の中は広かった。

天井は高く、壁面には長い年月をかけて形成された鍾乳石が無数に並んでいる。

足元には地下水が流れ、

冷たい空気が絶えず漂っていた。

昼間までの蒸し暑さが嘘のようだ。

「寒っ」

ケータが肩をすくめる。

「上着着たら」

ナツメが呆れながら言った。

しかし。

しばらく進んだところで、一行は違和感を覚える。

ヴォォォォ……

低い音が響いた。

まるで。

誰かが苦しそうに呻いているような音だった。

[newpage]

「……」

アキノリが足を止める。

「今の聞いた?」

「聞いた」

トウマも真顔になる。

ヴォォォォ……

再び音が鳴った。

今度はよりはっきり聞こえる。

まるで巨大な何かが洞窟の奥で唸っているようだった。

「お、おい……」

ケータの顔が引きつる。

「何かいるんじゃないのか?」

「……」

#朔夜も思わず周囲を見回した。

さらに。

洞窟の奥から、ふわりと青白い光が現れる。

一つ。

二つ。

三つ。

やがて十数個。

いや、それ以上。

まるで魂のような光が空中を漂い始めた。

「ひっ」

ケースケがナツメの後ろへ隠れる。

「幽霊!?」

アキノリが叫ぶ。

「絶対幽霊だろ!」

「妖怪かもしれない」

トウマが警戒する。

その隣では。

カチッ。

ナツメが妖怪ウォッチを構えていた。

「反応は……」

完全に戦闘態勢だった。

#朔夜も弓を持つべきか迷う。

だがその時だった。

「はいはい、落ち着いて」

ドラえもんが呆れたように言う。

全員の視線が集まる。

「幽霊じゃないよ」

「え?」

アキノリが振り返る。

ドラえもんは洞窟の天井を指差した。

「まず、あの音」

ヴォォォォ……

ちょうどその瞬間、また呻き声のような音が響いた。

「風だよ」

「風?」

「この洞窟、奥まで複雑に繋がってるんだ。風が細い通路を通る時に音が鳴るんだよ」

「つまり……」

ケータが首を傾げる

「自然現象?」

「そういうこと」

ドラえもんは頷いた。

「ホラー映画でよく使われるやつ」

「なんだよぉ……」

アキノリが力を抜く。

そしてドラえもんは青白い光へ目を向けた。

「あとあれも」

一匹を指差す。

近付いてみると。

確かに何かが羽ばたいている。

「虫?」

#朔夜が呟く。

「発光する昆虫の群れだよ」

ドラえもんが答える。

「洞窟によっては結構いるんだ」

「紛らわしい!」

ナツメが思わず叫んだ。

妖怪ウォッチを構えたまま。

[newpage]

「私、本気で警戒してたんだけど!

「俺もだ」

トウマが頷く。

「幽霊かと思った」

「いや、普通そう思うだろ」

アキノリも同意した。

すると後ろから、

「俺は全然怖くなかったけどな!」

ジャイアンが胸を張る。

「さっき俺の後ろに隠れてたの誰だっけ?」

スネ夫が即座に突っ込んだ。

 

 

気付けば外は暗くなっていた。

洞窟内なので分かりづらいが、入口付近から差し込む光はほとんど消えている。

「今日はここで休もう」

ドラえもんが言った。

「夜の洞窟探索は危険だからね」

全員が賛成した。

そこでドラえもんは頭に被っていた帽子を外す。

「キャンピングハット」

そして地面へ置いた。

数秒後。

ゴゴゴゴ……

帽子が震え始める。

「……え?」

#朔夜が固まる。

帽子はどんどん大きくなっていった。

一メートル。

二メートル。

三メートル。

やがて巨大なテントへと変化する。

「ちょっと待って」

アキノリが言う。

「それ帽子だったよな?」

「帽子だった」

ケータも頷く。

「帽子だったよな?」

「帽子だったわね」

ナツメも同意する。

「秘密道具だから」

ドラえもんは当然のように答えた。

全員が納得できない顔をした。

[newpage]

やがて食事を終え。

それぞれ寝る準備を始める。

洞窟内には静かな時間が流れていた。

誰も気付いていない。

その時。

洞窟の高い天井付近。

鍾乳石の陰に。

一匹の蝙蝠がぶら下がっていた。

じっと。

微動だにせず。

まるで一行を観察するかのように。

赤く光る瞳だけが、暗闇の中で静かに輝いていた。

そして。

蝙蝠は羽を震わせる。

まるで。

誰かへ報告するかのように――。

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