轟音。
白い水煙。
そして――
「うわああああああっ!?」
のび太の悲鳴が洞窟中に響き渡った。
蒸気船は巨大な滝へと突っ込んだまま、そのまま落下することなく水の壁の向こうへ滑り込んでいく。
「え?」
#朔夜は思わず目を瞬かせた。
そこに広がっていたのは、巨大な空洞だった。
滝の裏側。
天然の洞窟。
外からでは決して見えない秘密の通路である。
「なるほど……」
トウマが感心したように呟く。
「だから回避しなかったのか」
「昔もここを通ったんだよ」
のび太が懐かしそうに言う。
「最初は僕たちもすごく驚いたんだ」
「いや、そりゃ驚くだろ」
ジャイアン以外の全員が心の中で同意した。
やがて蒸気船は岸へと接岸する。
一行は荷物を持って上陸した。
◇
洞窟の中は広かった。
天井は高く、壁面には長い年月をかけて形成された鍾乳石が無数に並んでいる。
足元には地下水が流れ、
冷たい空気が絶えず漂っていた。
昼間までの蒸し暑さが嘘のようだ。
「寒っ」
ケータが肩をすくめる。
「上着着たら」
ナツメが呆れながら言った。
しかし。
しばらく進んだところで、一行は違和感を覚える。
ヴォォォォ……
低い音が響いた。
まるで。
誰かが苦しそうに呻いているような音だった。
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「……」
アキノリが足を止める。
「今の聞いた?」
「聞いた」
トウマも真顔になる。
ヴォォォォ……
再び音が鳴った。
今度はよりはっきり聞こえる。
まるで巨大な何かが洞窟の奥で唸っているようだった。
「お、おい……」
ケータの顔が引きつる。
「何かいるんじゃないのか?」
「……」
#朔夜も思わず周囲を見回した。
さらに。
洞窟の奥から、ふわりと青白い光が現れる。
一つ。
二つ。
三つ。
やがて十数個。
いや、それ以上。
まるで魂のような光が空中を漂い始めた。
「ひっ」
ケースケがナツメの後ろへ隠れる。
「幽霊!?」
アキノリが叫ぶ。
「絶対幽霊だろ!」
「妖怪かもしれない」
トウマが警戒する。
その隣では。
カチッ。
ナツメが妖怪ウォッチを構えていた。
「反応は……」
完全に戦闘態勢だった。
#朔夜も弓を持つべきか迷う。
だがその時だった。
「はいはい、落ち着いて」
ドラえもんが呆れたように言う。
全員の視線が集まる。
「幽霊じゃないよ」
「え?」
アキノリが振り返る。
ドラえもんは洞窟の天井を指差した。
「まず、あの音」
ヴォォォォ……
ちょうどその瞬間、また呻き声のような音が響いた。
「風だよ」
「風?」
「この洞窟、奥まで複雑に繋がってるんだ。風が細い通路を通る時に音が鳴るんだよ」
「つまり……」
ケータが首を傾げる
「自然現象?」
「そういうこと」
ドラえもんは頷いた。
「ホラー映画でよく使われるやつ」
「なんだよぉ……」
アキノリが力を抜く。
そしてドラえもんは青白い光へ目を向けた。
「あとあれも」
一匹を指差す。
近付いてみると。
確かに何かが羽ばたいている。
「虫?」
#朔夜が呟く。
「発光する昆虫の群れだよ」
ドラえもんが答える。
「洞窟によっては結構いるんだ」
「紛らわしい!」
ナツメが思わず叫んだ。
妖怪ウォッチを構えたまま。
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「私、本気で警戒してたんだけど!
「俺もだ」
トウマが頷く。
「幽霊かと思った」
「いや、普通そう思うだろ」
アキノリも同意した。
すると後ろから、
「俺は全然怖くなかったけどな!」
ジャイアンが胸を張る。
「さっき俺の後ろに隠れてたの誰だっけ?」
スネ夫が即座に突っ込んだ。
◇
気付けば外は暗くなっていた。
洞窟内なので分かりづらいが、入口付近から差し込む光はほとんど消えている。
「今日はここで休もう」
ドラえもんが言った。
「夜の洞窟探索は危険だからね」
全員が賛成した。
そこでドラえもんは頭に被っていた帽子を外す。
「キャンピングハット」
そして地面へ置いた。
数秒後。
ゴゴゴゴ……
帽子が震え始める。
「……え?」
#朔夜が固まる。
帽子はどんどん大きくなっていった。
一メートル。
二メートル。
三メートル。
やがて巨大なテントへと変化する。
「ちょっと待って」
アキノリが言う。
「それ帽子だったよな?」
「帽子だった」
ケータも頷く。
「帽子だったよな?」
「帽子だったわね」
ナツメも同意する。
「秘密道具だから」
ドラえもんは当然のように答えた。
全員が納得できない顔をした。
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やがて食事を終え。
それぞれ寝る準備を始める。
洞窟内には静かな時間が流れていた。
誰も気付いていない。
その時。
洞窟の高い天井付近。
鍾乳石の陰に。
一匹の蝙蝠がぶら下がっていた。
じっと。
微動だにせず。
まるで一行を観察するかのように。
赤く光る瞳だけが、暗闇の中で静かに輝いていた。
そして。
蝙蝠は羽を震わせる。
まるで。
誰かへ報告するかのように――。