ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第五十九話

翌朝。

長老の家に増設された部屋の窓から、柔らかな朝日が差し込んでいた。

ドラえもんが昨夜設置した秘密道具――「かべ神ハウス」によって、小屋の内部は見違えるほど広くなっている。外から見れば相変わらず質素な木造小屋だが、中はまるで小さな旅館のようだった。

「ふわぁ……」

のび太が欠伸をしながら起き上がる。

ジャイアンは既に起床して腕立て伏せをしており、スネ夫は鏡を見ながら犬耳の位置を調整していた。

「まだ付けるの?」

「当たり前だろ。外に出るんだから」

スネ夫が呆れたように言う。

バウワンコ王国では、今もなお正体を隠す必要がある。

そのため全員、犬への変装は維持したままだった。

一方。

しずかはまだ眠っていた。

その隣には猫娘。

昨夜ずっと看病を続けていたため、しずかの方が先に力尽きてしまったのである。

「寝かせておいてやろう」

目玉おやじが静かに言った。

猫娘も包帯姿のまま眠っている。

鬼太郎達がどれほどの戦いを経験したのか、それだけでも十分に伝わってきた。

 

 

「顔でも洗いに行こう」

トウマが言った。

「うん」

#朔夜は頷く。

二人は変装を確認すると、小屋を出た。

朝の村は静かだった。

しかし、その静けさにはどこか張り詰めたものがある。

住民達は笑っている。

だがその目は常に周囲を警戒していた。

誰が味方で誰が敵か。

誰が洗脳されているか分からない。

そんな状況が続いているのだ。

[newpage]

井戸へ向かう途中。

やはり朔夜は目立った。

「あらあら」

「珍しい毛色だねぇ」

「どこの集落の子だい?」

次々と声を掛けられる。

フェネックのような大きな耳。

白と濃紺が入り混じる毛並み。

翡翠色の瞳。

バウワンコ王国ではまず見かけない姿だった。

「えっと……」

返答に困る朔夜。

その横に立つトウマが軽く前へ出る。

銀色の毛並みを持つハスキー犬姿。

凛々しい雰囲気もあり、自然と牽制になっていた。

「すみません。人探し中なんです」

そう言うと村人達は納得したように去っていく。

「助かった」

「お前、本当に目立つな」

トウマが苦笑する。

#朔夜も否定できなかった。

▼こんな感じ?変装セットで決まる犬種はランダムなんでな。

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顔を洗い終えた頃だった。

井戸端で話し込んでいた村人達の声が耳に入る。

「今日らしいぞ」

「本当か……」

「また来るのか」

重い声。

不安を隠そうともしていない。

#朔夜は思わず足を止めた。

「何の話ですか?」

すると年配の村人が顔を曇らせる。

「……ウォルフガング様だ」

その名に聞き覚えはない。

しかし周囲の反応が異常だった。

誰もが顔を青くしている。

「それとサーベル隊長も一緒らしい」

「!」

トウマが眉をひそめた。

昨夜聞いたばかりの名だ。

バックベヤード軍団の幹部。

そして本来死んでいるはずの男。

「どうして来るんです?」

#朔夜が尋ねる。

村人達は顔を見合わせた。

そして。

誰かが小さく呟いた。

「徴収だよ」

 

 

長老の家へ戻ると、すぐに事情説明が始まった。

村長も呼ばれている。

話を聞くにつれ、部屋の空気は重くなっていった。

「ウォルフガングは気に入った者を連れていく」

村長が言った。

「若者も」

「兵士になりそうな者も」

「珍しい者も」

「逆らえば?」

ケータが尋ねる。

村長は苦々しく答えた。

「家族ごと消える」

沈黙。

誰も言葉を発せなかった。

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「今回も同じ目的だと思う」

長老が言う。

「そして――」

その視線が朔夜へ向いた。

嫌な予感がした。

「おそらく、この子じゃ」

「自分?」

「その毛並みじゃ」

長老は断言した。

「目立ちすぎる」

「確実に目を付けられる」

 

 

「絶対ダメだ!」

ドラえもんが即座に反対した。

「危険すぎる!」

「そうだよ!」

のび太も続く。

しかし。

その時だった。

ナツメが腕を組みながら言った。

「待って」

全員が振り向く。

ナツメの瞳は真剣だった。

「逆に利用できる」

「え?」

「ウォルフガングは朔夜を欲しがる」

「なら向こうから連れて行く」

部屋が静まり返る。

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「潜入するの」

ナツメは続けた。

「私も一緒に行く」

「危険だ!」

トウマが反論する。

だがナツメは首を振った。

「敵の本拠地を調べられる」

「鬼太郎達の居場所も分かるかもしれない」

誰もすぐには否定できなかった。

確かに理屈は通っている。

[newpage]

「私なら護衛として近付ける」

ナツメは言う。

「それに」

少しだけ笑った。

「#朔夜一人じゃ心配だし」

「……僕、信用ない?」

「ない」

即答だった。

ケータが吹き出しそうになる。

しかし。

作戦としては成立している。

ドラえもんも悩んでいた。

鬼太郎達を助けるためには情報が必要。

だが危険も大きい。

 

 

そして窓の外。

遠くの丘の向こうで。

黒い旗が揺れていた。

誰もまだ気付いていない。

ウォルフガングとサーベル隊長を乗せた一団が、確実に村へ近づいていることを。

その中には。

洞窟で彼らを監視していた蝙蝠の姿もあった。

静かに。

獲物を見定めるように。

赤い瞳が細められる。

#朔夜達の潜入作戦が始まろうとしていた。

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