(展開でドッキリさせたい)
ヒャッコイ博士のラボは、静まり返っていた。
氷に閉ざされた通路。
薄青く光る壁。
機械らしき設備は沈黙し、時折どこかで金属音が響く。
「……なんか、やだなここ」
のび太が小声で呟いた。
その声すら吸い込まれていくような静けさだった。
#朔夜は周囲を見回す。
(寒いだけじゃない)
空気そのものが、妙に重い。
まるでこの場所全体が、“何か”に怯えたまま止まっているみたいだった。
先頭を進くカーラが、突然立ち止まる。
「……博士?」
その声に、一同が振り返った。
部屋の中央。
そこに、一人の老人がいた。
いや――。
「氷漬け……!?」
しずかが息を呑む。
ヒャッコイ博士は、分厚い氷の中に閉じ込められていた。
だが。
異様だったのは、その表情。
目を見開き。
口を歪め。
まるで、この世のものではない何かを見たような顔で凍りついていた。
◇
「……なんだよこれ」
ジャイアンですら声を潜める。
ケータが唾を飲み込んだ。
「こんなの、普通の凍り方じゃない……」
トウマも険しい顔をしている。
その時。
「任せて」
コマさんの隣から、ケータがが前へ出た。
ケータが妖怪ウォッチを掲げる。
その手にはコインのような絵が描かれたメダル。
「召喚!俺の友達!メラメライオン!」
炎が弾けた。
現れた炎を纏ったライオンの様な妖怪が、拳を鳴らす。
『燃えてきたメラァ!』
「氷だけ溶かせる?」
『余裕メラ!』
ぼうっ、と熱気が広がる。
メラメライオンは慎重に炎を操り、博士を包む氷だけを少しずつ溶かしていった。
やがて。
パキ、パキン――。
氷が崩れ落ちる。
ヒャッコイ博士の身体がぐらりと傾いた。
「危ない!」
しずかが駆け寄る。
ドラえもんも慌てて支えた。
「ドラえもん! 温かいお湯とか――」
◇◇
「ダメ!」
珍しく強い声だった。
しずかが目を丸くする。
ドラえもんは真剣な顔で言う。
「急に温めたら危険なんだ。」
すぐにポケットへ手を突っ込み、
「お医者さんカバン!」
白い医療バッグを取り出した。
自動で器具が展開されていく。
「うわっ」
ケータが引いた。
「未来の医療ってどうなってんの……」
ナツメも目を細める。
「便利、って言葉で片付けていいのかしらこれ」
だが、手は止めない。
「しずか、これお願い」
「うん!」
二人はすぐに看病を始めた。
濡れた布。
保温シート。
体温チェック。
未来道具が勝手に補助をしていく。
ナツメは若干困惑しつつも、それを冷静に観察していた。
「本当に理屈が分からないわね……」
「未来だからね!」
ドラえもんが言う。
「便利すぎ……」
トウマが呟いた。
◇◇◇
数分後。
「……う……」
ヒャッコイ博士の瞼が震えた。
「博士!」
カーラが駆け寄る。
博士はぼんやりと天井を見つめ――。
やがてドラえもん達を認識した。
「ドラ……えもん……?」
「博士、一体何があったの!?」
その瞬間。
ヒャッコイ博士の顔が強張る。
「ブリザーガだ……」
震える声。
「あれは……復活してはいけなかった……!」
ラボの空気が重くなる。
「わしは見た……」
博士の目が怯えていた。
「氷の中で、“あれ”が動いていた……!」
誰も口を挟めない。
「まるで星そのものが、喰われていくみたいだった……」
その時だった。
ぐぅぅぅぅぅぅ――。
盛大な音が響いた。
全員が振り向く。
ジャイアンが真顔で腹を押さえていた。
「…………」
沈黙。
そして。
「……あ」
のび太が呟く。
「そういえば、そろそろ朝ごはんの時間……?」
緊迫していた空気が、一気に緩んだ。
ケータが吹き出す。
トウマも肩を震わせた。
ナツメは呆れたように息をつく。
しずかが小さく笑い、
#朔夜も思わず口元を緩めた。
こんな状況なのに。
それでも、お腹は空くらしい。
低体温症は水から温めましょうね。いきなり温かいお湯だと、急激に上がった血行により、血管が傷付くそうです。そして腐り始めて…(*´∀`)!