ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第六十話

翌日。

まだ朝靄が村を包んでいる頃。

長老の家では慌ただしい空気が流れていた。

「絶対に嫌だ……」

#朔夜が項垂れる。

その前には色鮮やかな衣装が広げられていた。

バウワンコ王国の祭礼衣装。

薄い布を何枚も重ねた独特の服装で、金糸の刺繍や翡翠色の飾りが縫い込まれている。

「諦めなさい」

ナツメは即答した。

「潜入するんでしょ」

「そうだけど……」

「だったら目立たないと意味ない」

正論だった。

反論できない。

 

 

結局。

数十分後。

#朔夜は完全に着替えさせられていた。

白と濃紺の毛並み。

翡翠の瞳。

そこへ祭礼衣装が加わる。

村の女性達は満足そうだった。

「綺麗じゃないか」

「まるで神話の精霊みたいだねぇ」

「やめてください……」

#朔夜は本気で恥ずかしかった。

[newpage]

一方のナツメも着替えている。

こちらは落ち着いた色合い。

黒を基調とした祭礼服だった。

濃い毛並みとの相性も良く、どこか武人のような雰囲気がある。

「似合う」

#朔夜が言う。

「ありがと」

ナツメは平然としていた。

「#朔夜も似合ってる」

「聞かなかったことにする」

 

 

昼近く。

村の鐘が鳴った。

一度。

二度。

三度。

村人達の顔色が変わる。

誰もが知っていた。

来たのだ。

[newpage]

村の広場。

住民達が集められる。

誰も大声を出さない。

子供ですら静かだった。

重苦しい沈黙。

その中。

遠くから蹄の音が聞こえてくる。

ドドドドド――。

 

現れたのは黒い馬車だった。

いや。

馬ではない。

巨大な狼のような獣が車を牽いている。

その後ろには武装した兵士達。

そして。

中央に立つ一人の男。

鋭い金色の瞳。

貴族のような衣装。

人狼幹部――

ウォルフガング。

[newpage]

「ご機嫌よう」

彼は笑った。

その笑顔に温かみはない。

獲物を見る目だった。

「今月の徴収に来た」

それだけで空気が凍り付く。

村長が前へ出る。

「ようこそ……」

「歓迎は不要だ」

ウォルフガングは軽く手を振った。

「私は仕事をしに来ただけだ」

その視線が広場を巡る。

一人。

また一人。

品定めするように。

見ていく。

そして。

止まった。

「……ほう」

#朔夜だった。

ナツメの隣。

白と濃紺の毛並み。

大きな耳。

翡翠の瞳。

祭礼衣装。

ウォルフガングの目が細まる。

「珍しいな」

誰も喋らない。

村人達は俯いている。

「その子は誰だ?」

村長の顔が引きつる。

ナツメは内心で息を吐いた。

(かかった)

#朔夜も思う。

(かかったけど怖い……)

ウォルフガングは馬車から降りる。

[newpage]

ゆっくり。

ゆっくりと。

目の前まで来た。

「名は?」

「……サク」

偽名。

とっさに短くした。

「サクか」

ウォルフガングは頷く。

「実に興味深い」

その時だった。

別の声が響く。

「待て」

サーベル隊長。

黒い鎧を纏った剣士が前へ出る。

広場の空気が一変する。

彼の目は鋭かった。

獲物を見極める猛禽のよう。

#朔夜を見る。

ナツメを見る。

数秒。

沈黙。

ドラえもん達は遠くから様子を窺っていた。

思わず息を呑む。

しかし。

サーベルはそれ以上何も言わなかった。

「……妙な気配がしただけだ」

そう言って下がる。

 

 

ウォルフガングは肩を竦めた。

「神経質だな」

そして。

再び#朔夜へ向き直る。

「気に入った」

村人達が青ざめる。

「そちらの黒い子も連れていけ」

ナツメを指差す。

「護衛役だろう」

計画通り。

だが。

思った以上に順調すぎた。

「連れて行け」

命令が下る。

兵士達が近付く。

#朔夜とナツメは抵抗しない。

ここで暴れれば終わりだ。

馬車へ乗り込む。

窓の外。

村が遠ざかる。

[newpage]

長老。

ドラえもん。

ケータ。

アキノリ。

トウマ。

全員が見送っていた。

そして最後。

サーベル隊長だけが振り返る。

じっと。

馬車の中を見る。

「……」

何かを考えるような目。

まるで違和感の正体を探しているようだった。

馬車は走る。

敵地へ向かって。

鬼太郎達が囚われているかもしれない城へ向かって。

潜入作戦が、ついに始まったのである。

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