ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第六十四話

捕らわれた女性達の中に、ひときわ落ち着いた様子の少女がいた。

どこか気品のある佇まい――それは幸か不幸か、スピア姫だった。

「あなた達……ここに来たということは、外の状況を知っているのですね?」

彼女は状況を悟ったように静かに言う。

そして、#朔夜たちにとって重要な情報を口にした。

「クンタック王子なら……この城の地下牢のさらに奥にいるはずです。正確な場所までは分かりませんが、配置の記憶はあります」

それは収穫だった。

だが同時に、今すぐ救出に踏み込むには危険すぎる情報でもあった。

ナツメが小さく通信機を取り出す。

「ドラえもん、聞こえる? 今スピア姫と接触。クンタック王子の位置情報あり。ただし救出は別動で行う」

すぐに短い応答が返る。

『了解。無理はするな。撤退優先で』

作戦は二手に分かれることになった。

ナツメは他の女性達を安全に城外へ誘導する役目。

そして#朔夜はスピア姫と共に、地下牢の位置確認へ向かう。

スピア姫は静かに頷いた。

「王族として、責任は果たします」

#朔夜は短く息を吐き、頷き返す。

「行こう。情報だけでも持ち帰れば十分だから。」

秘密通路は湿った石壁に囲まれ、蝋燭の火が不規則に揺れていた。

 

 

進むたびに空気は重くなり、まるで城そのものが“生きている”かのような圧迫感があった。

やがて、奥から声が漏れ聞こえる。

聞き覚えのある声だった。

「ここだ……確かにこの先だ!」

#朔夜はスピア姫と視線を交わし、慎重に覗き込む。

そこには――捕らわれたクンタック王子と数名の犬人族の姿があった。

「やはり……ここに」

スピア姫の表情がわずかに強張る。

朔夜は低く問いかけた。

「鬼太郎は?」

クンタック王子は顔を上げる。

「……彼は神殿へ連れて行かれた。あの“黒い太陽”の中心へ」

その言葉に、空気が一瞬だけ凍る。

神殿――それは城よりさらに深い場所。

この戦いの“核”に近い領域だった。

「まずいな……」

#朔夜は小さく呟く。

これ以上の深入りは危険だ。

情報は十分に得た。今は撤退するしかない。

[newpage]

「村に戻ろう」

スピア姫も頷いた。

城内を抜け、来た道を引き返す。

しかし、戻る途中で違和感が生まれる。

通信機が微かにノイズを拾った。

「ナツメ達はもう外に出てるはずだよな……」

スピア姫も眉をひそめる。

「私たちより先に出ていなければおかしい距離です」

嫌な予感がした。

そして―彼らは城外で“それ”を見つけた。

ナツメ達だ。

しかし、どこかがおかしい。

「……おかしい」

#朔夜は足を止める。

本来なら、彼女達はとうに村へ戻っているはずだった。

だが、そこにいるナツメはまるで“待っていた”かのように立っている。

ゆっくりと、こちらへ近づいてくる。

その表情は――空虚だった。

「"朔夜……」

声は確かにナツメのもの。

だが、その奥に“別の気配”が混ざっている。

次の瞬間。

ナツメが一気に間合いを詰めた。

「っ――!」

#朔夜は反射的に身を引く。

その直後、ナツメの口元から鋭い牙が覗いた。

「カミーラ……!」

スピア姫が叫ぶ。

カミーラは、最初から何もしていなかったわけではないようだ。

むしろ――すでに仕込みは終わっていたらしい。

#朔夜は即座に動いた。

「離れろ!」

ポケットに手を突っ込み、ドラえもんの道具を引き抜く。

目くらまし用の小型デバイス。

それを地面に叩きつける。

閃光。

視界が白に塗りつぶされる瞬間、朔夜はスピア姫の手を掴んだ。

「こっち!」

背後から獣じみた気配が追ってくる。

ナツメの姿をした“何か”が、確実に距離を詰めていた。

城の中は、すでに安全圏ではなかった。

カミーラは――最初から、この瞬間を待っていたのだ。

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