夕焼けが大地を赤く染めていた。
バウワンコ王国の外れにそびえる巨大な石像――巨神像。その周囲では、バックベヤード軍の兵士たちが厳重な警戒を続けている。
張り詰めた空気の中。
茂みに身を潜めていたペコが、小さく息を吸った。
「――行くぞ!」
その声と同時に飛び出した。
「巨神像に向かって走れ!!」
一斉に駆け出す一行。
当然、兵士たちも気付く。
「侵入者だ!!」
「止めろ!!」
怒号が飛び交う。
しかし、その直後だった。
「落下犬岩石!」
巨大な岩石が地面へ叩きつけられる。
「百烈肉球!」
紅い炎が兵士たちを吹き飛ばした。
さらに空からは朱雀が舞い降り、灼熱の羽ばたきで進路を切り開く。
反対側では麒麟が雷光を放ち、敵陣をかき乱していた。
「今のうちだ!」
ブルススが吠える。
巨体からは想像もつかない勢いで敵兵を薙ぎ払いながら道を作る。
その視線の先には、一人の男。
サーベル隊長。
かつて王国を守った忠臣。
今は敵として立ちはだかる存在。
互いの目が合う。
だが今は立ち止まれない。
一行は巨神像へ向かって走った。
「着いた!」
巨神像の足元へ辿り着いたペコは、首から下げたペンダントを握りしめた。
眩い光が放たれる。
すると巨神像の胸部に刻まれた紋様が輝き始めた。
ゴゴゴゴゴ……。
巨大な石の扉がゆっくりと開いていく。
「開いた!」
のび太が叫ぶ。
「急げ!」
ドラえもん達は次々と内部へ飛び込んだ。
ペコ。
ドラえもん。
のび太。
ジャイアン。
スネ夫。
しずか。
そして巨神像を起動するための仲間たち。
残る者たちは追撃を防ぐ役目だ。
作戦通りだった。
[newpage]
一方その頃。
地上では激しい戦闘が始まっていた。
トウマは妖怪ウォッチを構える。
「頼むぞ、お松!」
呼び出された幻魔・お松が妖力を解放する。
柔らかな光が周囲へ広がった。
その光に触れた鬼太郎ファミリーの妖怪たちが次々と動きを止める。
「……あれ?」
「なんじゃ?」
子泣き爺が目を瞬かせた。
砂かけ婆も周囲を見回す。
洗脳が解けたのだ。
その時だった。
大地が揺れた。
ゴゴゴゴゴゴゴ―――!!
巨神像が動き出したのである。
巨大な腕が持ち上がる。
空気そのものが震えた。
「動いた!!」
誰かが叫ぶ。
その瞬間。
戦場は完全に分断された。
崩れる地面。
巻き上がる土煙。
味方も敵も関係なく引き離されていく。
◇
#朔夜が気付いた時。
目の前には一人の男が立っていた。
鋭い瞳。
獣のような牙。
人狼ヴォルフガング。
「また会ったな」
低い声が響く。
#朔夜は弓を構えた。
「……。」
隣では猫娘も戦闘態勢に入る。
「今度こそ決着つけるわよ!」
猫娘の爪が閃く。
#朔夜の矢が飛ぶ。
だが。
速い。
異常なほど速い。
ヴォルフガングはまるで風のように攻撃をかわしていく。
「甘い」
猫娘の攻撃を紙一重で回避。
そのまま後方へ跳躍した。
「くっ……!」
「思ったより動く……」
#朔夜も表情を引き締める。
そこへ。
「待たした!」
白い布が空から舞い降りた。
一反木綿だった。
洗脳から解放されたらしい。
「無事!?」
「一反木綿!」
猫娘の表情が明るくなる。
[newpage]
そして。
「やれやれ……」
聞き慣れた声。
猫娘の髪の中から目玉おやじが顔を出した。
「目玉おやじさん!?」
「説明は後じゃ」
目玉おやじは真剣な顔で言った。
「鬼太郎は神殿じゃ」
その一言で#朔夜の表情が変わる。
目的は最初から決まっている。
鬼太郎の救出。
ここで足止めされるわけにはいかない。
「一反木綿!」
「おう!」
#朔夜は飛び乗った。
「猫娘!」
「分かってる!」
猫娘が前へ出る。
まるで撤退するように見えた。
ヴォルフガングもそう判断したらしい。
「逃がさん!」
追撃しようと踏み込む。
その瞬間。
#朔夜の目が細められた。
「――今だ」
振り向きざま。
弓を引く。
放たれた矢は夕陽を裂いた。
完全な死角。
完全な不意打ち。
矢は真っ直ぐ飛び。
ヴォルフガングの肩口へ突き刺さった。
「っ!?」
狼男の身体が大きくよろめく。
睡眠薬の影響もまだ残っているようだ。
反応が僅かに遅れる。
その隙を逃さず、一反木綿が急上昇した。
「行くぞ!」
「うん!」
みるみる距離が開いていく。
ヴォルフガングは追おうとした。
しかし足が止まる。
肩の痛み。
そして僅かな眩暈。
逃げていく#朔夜達の姿を睨みながら、低く唸った。
「……次は逃がさん」
夕焼け空を駆ける一反木綿。
その上には#朔夜と目玉おやじ。
目指す先は神殿。
囚われた鬼太郎がいる場所。
戦場ではそれぞれの戦いが始まっていた。
だが#朔夜たちには、果たすべき役目がある。
「急ぐぞい!」
「うん!」
鬼太郎を救うために。
二人は神殿へ向かって飛び続けた――。