ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第六十八話

巨神兵とバックベヤードの激突によって揺れる大地を背に、#朔夜達は神殿へ向かっていた。

遠くでは巨大な咆哮が響き、時折閃光が空を照らしている。

「急ぐぞい」

目玉おやじの声に、朔夜は頷いた。

その隣では猫娘が険しい表情のまま前を見据えている。

鬼太郎が捕らわれている。

その事実だけが、彼女を突き動かしていた。

神殿へ近付くにつれ、一行の足取りは慎重になった。

巨大な石柱。

古代神殿のような構造。

薄暗い通路。

敵の気配を探りながら進んでいく。

すると。

「いたぞい」

目玉おやじが小声で告げた。

神殿内部の広間。

そこには多数の見張り兵が配置されていた。

正面突破は不可能。

#朔夜は背中の矢筒から一本の矢を抜く。

そして小さな筒状の道具を括り付けた。

ドラえもんから渡されていた催涙弾である。

「いくよ」

静かに弓を引く。

放たれた矢は柱の陰へ飛び込み――

次の瞬間。

ボンッ!!

白煙が一気に広がった。

「ぐあっ!?」

「目がぁぁぁ!!」

「な、なんだこれは!?」

兵士達が一斉に悲鳴を上げる。

涙。

鼻水。

咳。

広間は大混乱になった。

 

 

「今じゃ!」

全員がゴーグルを装着する。

これは作戦会議で決めていたプランC。

催涙弾使用を前提とした突入作戦だった。

#朔夜もゴーグルを装着し、煙の中へ飛び込む。

視界は悪い。

だが敵はさらに見えていない。

その時だった。

煙の向こう。

高い天井付近。

巨大な鉄製の鳥かごが吊るされているのが見えた。

中には――

鬼太郎。

間違いない。

[newpage]

「いた」

#朔夜は即座に弓を構える。

狙うのは鳥かごそのものではない。

吊り下げている連結部分。

鉄鎖と金具。

わずかに露出した一点。

呼吸を整える。

世界の音が遠ざかる。

視界が一点に収束する。

指が弦を離れた。

ヒュッ―――

放たれた矢は、微かに青白く輝いていた。

だが誰も気付かない。

#朔夜自身ですら。

ただ異様なほど速かった。

空気を裂く音すら遅れて聞こえるほどに。

ガギンッ!!

金属が砕ける音。

続いて。

ゴゴゴゴゴッ!!

巨大な鳥かごが大きく傾いた。

「えっ」

#朔夜は思わず目を見開いた。

まさか本当に落ちるとは思っていなかった。

せいぜい揺らせれば十分だと考えていたのである。

しかし現実には。

連結部が完全に破壊されていた。

次の瞬間。

ドォォォン!!

鳥かごが地面へ激突した。

神殿全体が揺れる。

兵士達の悲鳴がさらに大きくなった。

「鬼太郎!」

猫娘が駆け出した。

迷いはない。

一直線だった。

煙をかき分けるように走り、崩れた鳥かごへ飛び付く。

「大丈夫!? 怪我は!?」

「猫娘……」

鬼太郎は目を瞬かせた。

朔夜も周囲を警戒しながら近付く。

まだ敵が潜んでいる可能性がある。

弓を構えたまま辺りを見渡す。

しかし今のところ増援はない。

鬼太郎が顔を上げた。

[newpage]

そして。

#朔夜の姿を見た瞬間。

その表情が変わる。

「君は……!?」

驚愕。

そして。

怒り。

「来るなと言っただろう!!」

神殿に響くほどの大声だった。

猫娘ですら驚く。

目玉おやじも目を丸くした。

「こんな場所まで来て……!」

「何を考えてるんだ!」

「危険だって分かっているだろう!」

怒鳴る。

本気で怒っている。

いや。

怒っているように見える。

#朔夜は少しだけ肩を竦めた。

「でも助けに来た」

「……っ」

鬼太郎が言葉に詰まる。

沈黙。

数秒。

やがて鬼太郎は視線を逸らした。

そして。

本当に小さな声で。

「……でも」

呟く。

「助かった」

その横顔を見て。

#朔夜は気付いた。

鬼太郎の頬を一筋の涙が流れていた。

(あ、催涙弾か)

#朔夜は妙に納得した。

煙はまだ神殿内に残っている。

妖怪だから効かないということは無かったらしい。

鬼太郎も。

猫娘も。

目玉おやじも。

少し涙目になっている。

だが。

何故だろう。

鬼太郎のその涙は。

催涙弾だけではないような気もした。

[newpage]

「ほれ、積もる話は後じゃ」

目玉おやじが咳き込みながら言う。

「まずはここから脱出するぞい!」

「そうね!」

猫娘も頷く。

鬼太郎を救出した一行は、再び動き出す。

まだ戦いは終わっていない。

仲間達はそれぞれの戦場で戦っている。

そして、この先にはバックベヤードとの決着が待っている。

だが今だけは。

鬼太郎が無事だったことに、誰もが安堵していたのだった。

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