ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第七十話

夕暮れの森。

ブルススとのび太に追い詰められたサーベル隊長は荒い息を吐いていた。

肩で呼吸をする。

鎧は傷だらけ。

剣を握る腕も震えていた。

「力が欲しいか?」

頭上から響く声。

サーベル隊長が睨み上げる。

木の枝に立つ人影。

深いフードで顔は見えない。

人影は小さな瓶を投げた。

サーベル隊長は反射的に受け取る。

中には黒い液体。

まるで闇を溶かしたような色だった。

「使うも使わないも、お前の自由だ」

「これは何だ」

サーベル隊長が問う。

しかし人影は肩を竦めるだけだった。

「使えば分かる」

それだけ。

説明はない。

ブルススとのび太が近付いてくる。

もう時間はない。

サーベル隊長は瓶を見る。

そして。

遠くに見える王国を見る。

かつて守るはずだった場所。

今は失った全て。

 

◇

 

「……まだ終われん」

栓を抜く。

そして。

一気に飲み干した。

数秒後。

異変が起きる。

「がっ……!」

全身を激痛が走る。

膝をつく。

剣が地面へ落ちる。

「サーベル隊長!?」

のび太が叫ぶ。

しかし。

返事はない。

骨が軋む。

肉が膨張する。

全身から黒い霧が噴き出した。

「ぐあああああああああああ!!」

咆哮。

森全体が震えた。

身体は巨大化し続ける。

二メートル。

三メートル。

五メートル。

顔が裂ける。

首が増える。

牙が伸びる。

赤い瞳が三対開く。

獣。

魔獣。

いや。

神話の怪物。

三ツ首の狂犬、ケルベロスが今ここに顕現したのである。

その瞬間。

戦場にいた全員が異変を感じた。

[newpage]

一方。

巨神兵の足元。

鬼太郎の加勢により、バックベヤードは押され始めていた。

髪の毛針。

リモコン下駄。

妖力砲。

「バックベヤード!」

鬼太郎が叫ぶ。

黒い太陽が後退する。

すると。

空間が揺らいだ。

バックベヤードの隣に人影が現れる。

深いフード。

顔は見えない。

だが。

鬼太郎は警戒した。

「お前は……!」

人影は笑う。

「そろそろ潮時ね」

まるで世間話をするような口調。

「撤退するわ」

「待て!」

鬼太郎が飛び出す。

だが。

その瞬間。

ゾワッ。

全身の毛が逆立った。

空気が震える。

大地が唸る。

森が悲鳴を上げる。

とてつもない妖気。

鬼太郎は反射的に振り返った。

遠方。

王国側。

巨大な黒い柱のような妖気が天へ伸びている。

「な……」

猫娘も息を呑む。

目玉おやじの顔色が変わった。

「あれは……まずいぞ……」

煙の向こう。

三つの頭。

六つの赤い眼。

巨大な牙。

顕現したばかりのケルベロスが咆哮を上げていた。

「オオオオオオオオオオオオオッ!!」

森が揺れる。

空が震える。

鬼太郎は再び振り返る。

しかし。

そこにはもう何もなかった。

バックベヤードも。

謎の人物も。

既に姿を消していた。

残されたのは。

暴走したケルベロスと。

新たな絶望だけだった――。

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