ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第七十話

夕暮れの森。

ブルススとのび太に追い詰められたサーベル隊長は荒い息を吐いていた。

肩で呼吸をする。

鎧は傷だらけ。

剣を握る腕も震えていた。

「力が欲しいか?」

頭上から響く声。

サーベル隊長が睨み上げる。

木の枝に立つ人影。

深いフードで顔は見えない。

人影は小さな瓶を投げた。

サーベル隊長は反射的に受け取る。

中には黒い液体。

まるで闇を溶かしたような色だった。

「使うも使わないも、お前の自由だ」

「これは何だ」

サーベル隊長が問う。

しかし人影は肩を竦めるだけだった。

「使えば分かる」

それだけ。

説明はない。

ブルススとのび太が近付いてくる。

もう時間はない。

サーベル隊長は瓶を見る。

そして。

遠くに見える王国を見る。

かつて守るはずだった場所。

今は失った全て。

 

 

「……まだ終われん」

栓を抜く。

そして。

一気に飲み干した。

数秒後。

異変が起きる。

「がっ……!」

全身を激痛が走る。

膝をつく。

剣が地面へ落ちる。

「サーベル隊長!?」

のび太が叫ぶ。

しかし。

返事はない。

骨が軋む。

肉が膨張する。

全身から黒い霧が噴き出した。

「ぐあああああああああああ!!」

咆哮。

森全体が震えた。

身体は巨大化し続ける。

二メートル。

三メートル。

五メートル。

顔が裂ける。

首が増える。

牙が伸びる。

赤い瞳が三対開く。

獣。

魔獣。

いや。

神話の怪物。

三ツ首の狂犬、ケルベロスが今ここに顕現したのである。

その瞬間。

戦場にいた全員が異変を感じた。

[newpage]

一方。

巨神兵の足元。

鬼太郎の加勢により、バックベヤードは押され始めていた。

髪の毛針。

リモコン下駄。

妖力砲。

「バックベヤード!」

鬼太郎が叫ぶ。

黒い太陽が後退する。

すると。

空間が揺らいだ。

バックベヤードの隣に人影が現れる。

深いフード。

顔は見えない。

だが。

鬼太郎は警戒した。

「お前は……!」

人影は笑う。

「そろそろ潮時ね」

まるで世間話をするような口調。

「撤退するわ」

「待て!」

鬼太郎が飛び出す。

だが。

その瞬間。

ゾワッ。

全身の毛が逆立った。

空気が震える。

大地が唸る。

森が悲鳴を上げる。

とてつもない妖気。

鬼太郎は反射的に振り返った。

遠方。

王国側。

巨大な黒い柱のような妖気が天へ伸びている。

「な……」

猫娘も息を呑む。

目玉おやじの顔色が変わった。

「あれは……まずいぞ……」

煙の向こう。

三つの頭。

六つの赤い眼。

巨大な牙。

顕現したばかりのケルベロスが咆哮を上げていた。

「オオオオオオオオオオオオオッ!!」

森が揺れる。

空が震える。

鬼太郎は再び振り返る。

しかし。

そこにはもう何もなかった。

バックベヤードも。

謎の人物も。

既に姿を消していた。

残されたのは。

暴走したケルベロスと。

新たな絶望だけだった――。

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