ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第七十三話

運命とは無情なものである。

あの日々が永遠に続くと、どこかで信じていた。

王の笑顔。

騎士団の仲間たち。

訓練場で木剣を振るう王子。

王国の未来。

守るべきものは確かにそこにあった。

だが。

それはあまりにも突然だった。

[chapter:王が倒れた。]

晩餐の席だったという。

毒殺。

発見された時には既に手遅れだった。

王城は混乱に包まれた。

騎士団は犯人捜しに奔走し、貴族たちは責任を押し付け合い、民衆は不安に怯えた。

その中で。

サーベルは呼び出された。

執務室。

そこにいたのは大臣ダブランダーだった。

疲れ切った表情。

赤く腫れた目。

悲しみに沈む声音。

あまりにも自然だった。

「……信じたくはありませんでした」

ダブランダーはそう言った。

「しかし、証拠が揃いすぎているのです」

机の上へ書類が並べられる。

目撃証言。

出入りの記録。

毒物の保管記録。

不自然な行動履歴。

そして。

「犯人はクンタック王子です」

サーベルは絶句した。

「馬鹿な」

即座に否定した。

あり得ない。

あの王子が。

自分が剣を教えたあの少年が。

だが。

証拠が多すぎた。

あまりにも。

多すぎた。

[newpage]

しかも王子は姿を消していた。

逃亡。

その事実が全てを決定付けてしまう。

サーベルは拳を握った。

信じたくなかった。

だが騎士として。

王へ忠誠を誓った者として。

見過ごすことは出来なかった。

王子の捜索が始まった。

そして。

数日後。

雨の夜。

ついに見つけた。

崖の上だった。

激しい雨。

吹き荒れる風。

その中に。

クンタック王子が立っていた。

「隊長……」

悲しそうな顔だった。

だがサーベルの胸は痛む。

何故だ。

何故そんな顔をする。

罪を犯したのはお前ではないのか。

「王子」

剣を抜く。

「おとなしく投降してください」

王子は首を振った。

「僕はやっていない」

その言葉に心が揺れる。

だが。

証拠は揃っている。

何より。

王子は逃げた。

それが全てだった。

「……それでも」

サーベルは構える。

「私は騎士です」

戦いが始まった。

そして。

驚いた。

強い。

いつの間にか。

王子は自分でも驚くほど成長していた。

いや。

当然だった。

剣を教えたのは自分なのだから。

[newpage]

王子は必死に抗う。

生きようとしている。

真実を伝えようとしている。

だが。

サーベルには届かなかった。

届いてはいけなかった。

もし信じれば。

今まで信じてきたもの全てが崩れる。

だから。

剣を振った。

最後の一撃。

王子の身体が大きく揺れる。

足元が崩れた。

「サーベルッ!」

落ちていく。

暗い谷底へ。

雨の中。

その姿が消えていく。

サーベルは立ち尽くした。

そして。

小さく呟く。

「あなた様の為なのです」

前王の顔が浮かぶ。

「どうか……」

雨に紛れる声。

「もう戻らないでください」

そう願った。

心から。

だが。

運命とは皮肉なものだ。

王子は帰ってきた。

しかも。

希望そのものを連れて。

[newpage]

彼らによって王国は変わった。

人々は笑顔を取り戻した。

ダブランダーの正体も暴かれた。

その光景を見ながら。

サーベルは初めて思う。

もしかすると。

間違っていたのは。

自分だったのではないか。

だが。

もう遅かった。

巨神像が目覚める。

戦場が崩壊する。

王子一行を追って内部へ侵入した。

最後の使命だった。

騎士として。

決着を付けたかった。

しかし。

敗北した。

完膚なきまでに。

負けた。

巨神像の内部が崩れ始める。

轟音。

崩落。

落下する瓦礫。

逃げ場はない。

サーベルは静かに空を見上げた。

不思議と恐怖はなかった。

むしろ。

安堵していた。

「これで……」

終わる。

王に顔向け出来るだろうか。

分からない。

だが。

せめて。

王子には生きて欲しい。

そう思った。

その時だった。

崩れ落ちる巨石の向こう。

暗闇の中から。

誰かの声が聞こえた。

「――力が欲しいか?」

サーベルは目を見開く。

聞いたことのない声。

男とも女とも分からない。

不気味なほど穏やかな声。

「まだ終わりたくないだろう?」

瓦礫が迫る。

死が迫る。

それでも。

その声だけは鮮明だった。

「騎士よ」

闇の奥で。

何かが笑った。

「もう一度戦う力をやろう」

世界が黒く染まる。

そして。

サーベルの意識は闇へ沈んだ。

[chapter:――騎士は死んだ。]

だが。

それは終わりではなかった。

新たな悪夢の始まりに過ぎなかったのである。

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