ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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第魔境編もといバウワンコ王国編やっと終わった…約25話かかっているのである。ヒエッ!?


#七十五話

「……クンタック王子」

誰かの声が聞こえた気がした。

巨大な三つ首の魔獣――ケルベロス。

その中央の首から、大粒の涙が零れ落ちていた。

戦場は静まり返っている。

先程まで激しくぶつかり合っていた兵士たちも、妖怪たちも、鬼太郎ファミリーも、その異変に息を呑んでいた。

「……」

#朔夜は弓を構えたまま、その姿を見上げる。

攻撃しようとしているわけではない。

違う。

あの涙を見た瞬間、分かったのだ。

あれは敵ではない。

少なくとも今は。

サーベル隊長自身が望んで暴れているわけではない。

何かに苦しみ。

何かに縛られ。

そして今ようやく、その鎖から抜け出そうとしている。

そんな気がした。

「……救われてほしい」

小さく呟く。

自分でも不思議だった。

敵だったはずだ。

それでも。

胸の奥から込み上げてくる想いがあった。

どうか。

どうかこの人にも。

救いがありますように。

[newpage]

#朔夜は静かに矢を番える。

弦を引く。

意識が研ぎ澄まされていく。

世界から音が消える。

目に映るのはただ一つ。

涙を流す巨大な魔獣だけだった。

そして。

矢を放つ。

放たれた矢は、青白い光を纏っていた。

月明かりのような。

柔らかな光。

誰も見たことのない光だった。

矢は一直線に飛ぶ。

ケルベロスへ。

優しく。

まるで包み込むように。

光が降り注ぐ。

次の瞬間。

ケルベロスの身体がゆっくりと傾いた。

巨大な身体が崩れ落ちる。

轟音。

土煙。

戦場が揺れる。

だが。

もう誰も武器を構えてはいなかった。

「……終わった?」

のび太が呟く。

誰も答えない。

ただその時。

#朔夜の身体から力が抜けた。

視界が揺れる。

膝が崩れる。

「#朔夜!?」

誰かの声。

ドラえもんの叫び。

それを最後に。

#朔夜の意識は闇へ沈んだ。

[newpage]

次に目を開けた時。

知らない天井が見えた。

「……あれ?」

身体を起こす。

柔らかなベッド。

広い部屋。

窓の外からは陽光が差し込んでいる。

頭が少し重い。

その直後。

部屋の扉が勢いよく開いた。

「#朔夜!」

「大丈夫か!?」

「心配したんだから!」

仲間たちが雪崩れ込んでくる。

どうやらかなり寝ていたらしい。

聞けば。

丸一日近く眠り続けていたそうだ。

「えぇ……」

思わず間抜けな声が漏れる。

するとドラえもんが苦笑した。

「無茶しすぎなんだよ」

「そうかな……」

「そうだよ」

全員が頷いた。

 

 

その後。

#朔夜は食堂へ案内された。

そして。

固まった。

「……何これ」

目の前には豪華な料理の数々。

肉料理。

魚料理。

果物。

スープ。

焼き立てのパン。長いテーブルいっぱいに並んでいる。

「すご……」

思わず声が漏れる。

戦い続きだったせいか余計に眩しく見えた。

「遠慮しなくていいよ」

そう言って笑ったのはペコだった。

いや。

今はクンタック王子。

否。

王だ。

王国奪還を果たした彼は、正式に王位を継承していた。

皆で食卓を囲む。

笑い声が響く。

久しぶりの平和だった。

[newpage]

食事が終わる頃。

ペコが席を立った。

「どこ行くんだ?」

ジャイアンが聞く。

クンタック王は窓の外を見た。

「視察」

短い返答。

「城壁も壊れてるし、町もまだ被害が残ってる」

その声は落ち着いていた。

「確認しておかないと」

誰も何も言わなかった。

そこにいたのは。

昔の王子ではない。

一国の王だった。

#朔夜は思う。

ああ。

本当に王様になったんだな、と。

 

 

その日の午後。

クンタック王は城の地下牢を訪れていた。

牢の中には一人の男がいた。

サーベル隊長。

静かに立ち上がる。

そして。

深く頭を下げた。

「陛下」

長い沈黙。

やがてサーベルは口を開く。

「私は許されぬ罪を犯しました」

「……」

「いかなる処罰も受ける覚悟があります」

クンタック王は黙って聞いていた。

「ですが

サーベルの声が震える。

「願わくば」

ゆっくり顔を上げる。

その瞳には涙が滲んでいた。

「贖罪をさせて下さい

「……」

「王国のために」

「民のために」

「もう一度だけ剣を振るわせて下さい」

静寂。

長い沈黙。

やがて。

クンタック王が口を開いた。

「顔を上げて」

サーベルが顔を上げる。

「サーベル」

王は真っ直ぐ彼を見た。

「君にはまだ仕事がある」

「陛下……」

「王国を立て直そう」

「一緒に」

その言葉を聞いた瞬間。

サーベルの瞳から涙が溢れた。

[newpage]

止まらなかった。

何年ぶりなのか。

自分でも分からない。

ただ。

ようやく救われた気がした。

そして。

サーベルは跪く。

右拳を胸に当てる。

騎士としての礼。

「この命尽きるその時まで」

震える声で誓う。

「陛下に忠誠を」

「永遠に」

クンタック王は静かに頷いた。

こうしてこの日。

かつて道を違えた騎士は、新たなる王へ永遠の忠誠を誓ったのであった。

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