ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第八十二話

満開の桜が咲き誇る異界を後にし、#朔夜は従兄弟のユウマを背負いながら山道を下っていた。

背中からは規則正しい寝息が聞こえてくる。

「……よかった」

思わず呟く。

途中で何度も転びそうになったが、それでも足取りは軽かった。ユウマは無事だったのだ。

山を下りる頃にはすっかり日も暮れていた。

遠くに祖母の家の明かりが見える。

 

 

その瞬間だった。

「#朔夜っ!!」

聞き慣れた声が夜空に響いた。

「げっ」

思わず変な声が出る。

庭先には大勢の人が集まっていた。

親戚、近所の人、消防団の人達。

そして――

「母さん……」

泣きはらした顔の母さんが立っていた。

目元は真っ赤だ。

その隣には父さんもいる。

「#朔夜!!」

母親は一直線に駆け寄ってきた。

#朔夜は反射的に身構える。

怒鳴られる。

そう思った。

だが。

「よかった……本当によかった……!」

抱き締められた。

予想外の行動に#朔夜は固まる。

「母さん……?」

「どれだけ心配したと思ってるの……!」

声が震えていた。

その姿を見て、さすがの#朔夜も少しだけ申し訳なくなる。

[newpage]

「ごめん……」

すると今度は別の女性が飛び出してきた。

「ユウマ!」

ユウマの母親だった。

#朔夜の背中から降ろされたユウマは、ようやく目を覚ましたらしい。

「……あれ?」

「ユウマぁぁぁ!!」

泣きながら抱き締められ、ユウマは何が起きたのか分からず目をぱちぱちさせている。

その光景を見た周囲からは安堵の声が上がった。

「よかったなぁ……」

「本当に無事で何よりだ」

「奇跡だな」

だが。

「いや、待て」

誰かが言った。

「#朔夜君も無事でよかったが、一人で山に入ったのは危険すぎるぞ」

「そうだそうだ」

「熊だっているかもしれんのに」

「子供が勝手に行く場所じゃない」

空気が変わる。

#朔夜は嫌な予感がした。

「よくやった」

そんな中、父さんがぽんと肩を叩いた。

「え?」

「危険だったのは事実だが、ユウマを助けたんだ。立派だったぞ」

「父さん……」

ちょっと嬉しかった。

だが。

その瞬間。

周囲の温度が下がった気がした。

「……あなた?」

母さんの声だった。

父さんが固まる。

「今なんて?」

「いや、その……」

「褒めた?」

「違う、これはだな」

「褒めたの?」

「待て、話せば――」

「待ちなさい!!」

脱兎のごとく逃げ出す父親。

「ひぃっ!?」

追いかける母親。

庭をぐるぐる走り回る二人を見て、親戚達から笑いが起きた。

[newpage]

「毎度のことだな」

「逃げるのだけは速い」

「いずれ、捕まるけどな」

#朔夜も少しだけ笑ってしまう。

だが。

「さて」

「ん?」

「#朔夜君?」

「え?」

振り返る。

そこには大人達が並んでいた。

にっこり。

全員が笑顔だった。

その笑顔が妙に怖い。

「少し話をしようか」

「大丈夫大丈夫」

「怒らないから」

「座ろうな」

絶対怒るやつだ。

#朔夜の本能が警鐘を鳴らした。

「えっと……」

じりじり後退する。

すると祖母の家の玄関が目に入った。

そうだ。

自分の部屋へ行こう。

今日は疲れた。

眠い。

説教は明日でいい。

そう決めた。

「じゃあ僕、疲れたから寝る――」

くるり。

踵を返す。

一歩。

二歩。

三歩。

「#朔夜?」

背後から声がした。

優しい声だった。

だからこそ怖い。

振り返る。

そこには。

叔父。

叔母。

祖母。

そして親戚一同。

全員が笑顔で立っていた。

「……」

「逃げるつもり?」

「……」

「話はまだ終わってないぞ?」

「……はい」

観念した。

どうやら今回は本当に逃げられないらしい。

 

 

数分後。

居間から。

「ごめんなさい!」

という#朔夜の声が夜空へ響き渡ったという。

なお、その頃。

「待てぇぇぇ!」

「許してくれぇぇぇ!」

外ではまだ父さんが母さんに追い回されていた。

こちらもまた、逃げ切ることはできなかったらしい。

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