ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第八十五話

クルトの案内で一行は展示区画を離れ、職員専用の裏通路へと足を踏み入れた。一般来館者用の華やかな展示空間とは打って変わり、そこは機械音と静かな足音だけが響く無機質な空間だった。

壁面にはひみつ道具の保管リストや座標ログが並び、定期的に光る表示が、ここが単なる博物館ではなく“研究施設”であることを示している。

「こっちだよ。近道になる」

クルトの案内に従い、#朔夜たちは薄暗い通路を進んでいく。

その途中だった。

前方から歩いてきた職員らしき人物が、軽く手を上げてクルトに声をかけた。

「あ、クルト。あの件は?」

一瞬だけ、空気が変わる。

クルトは足を止めず、淡々と返す。

「データは既に送っているはずです。リーゼ先輩」

そのやり取りはあまりにも自然で、まるで日常会話の延長のようだった。

しかし、その名前が耳に残る。

リーゼ。

のび太が小声で首をかしげた。

「え?誰?」

クルトは歩きながら軽く説明する。

「僕の先輩だよ。遺跡とかを調べてる工芸科の人なんだ。今日は出張でいなかったはずだけど……」

通路の向こうで、リーゼと呼ばれた人物は軽く手を振ると、そのまま別の区画へと消えていった。

#朔夜はその背中を見送りながら、胸の奥に小さな違和感を覚えていた。

(……どこかで、会ったことがある気がする)

だが思い出せない。初対面のはずだ。それでも、記憶の奥に引っかかる“気配”だけが残っている。

「どうしたの?」

ナツメに声をかけられ、#朔夜は首を振った。

「いや……気のせいだと思う」

その言葉で無理やり違和感を押し込めるようにして、再び歩き出す。

やがて一行は、クルトの私室前へと到着した。

通路の最後は一転して静かで、扉の向こうからは微かな生活音のようなものが漏れている。

「ここだよ」

クルトはそう言うと、扉の前で一瞬だけ眉をひそめた。

中から、何かを咀嚼する音が聞こえている。

ずるずる、と麺をすする音。

そしてスープを啜る気配。

クルトはため息をついた。

「……また勝手に入ってる」

そして次の瞬間、勢いよくドアを開け放つ。

[newpage]

「何しているんだ!」

そこにいたのは。

テーブルに足を投げ出し、インスタントラーメンを堂々とすすっている少女だった。

金髪の少女

その姿を見た瞬間、ナツメと#朔夜は固まる。

「……誰?」

ナツメの声には警戒が混じっていた。

しかしジンジャーは気にした様子もなく、麺を飲み込みながら顔を上げる。

「ん?ああ、来客か」

クルトは呆れたように腕を組む。

「ここは僕の私室なんだけど」

「知ってるよ。だから居心地がいいんじゃない」

堂々とした態度だった。

まるで“侵入している”という意識すらない。

ナツメが小さくクルトに耳打ちする。

「この人も博物館の人?」

クルトは一拍置いてから答えた。

「……正式には、違う」

その一言で、空気が少しだけ変わる。

ジンジャーは箸を止めずに続ける。

「まあいいじゃない。どうせ君らも“黒いドア”の話をしに来たんでしょう?」

その言葉に、#朔夜の視線が鋭くなる。

初対面のはずの少女が、核心を最初から知っているような口ぶりだった。

クルトが低く言う。

「ジンジャー。その話はまだ外には──」

「外じゃないからいいじゃん?」

ラーメンをすすり終え、彼女は笑った。

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