「ミステリートレイン」
「ドラえもん!」
展示スペースに響いた大きな声。
振り返ると、そこには腕を組んだジャイアンが立っていた。
その表情は明らかに不満げである。
「なんで黙ってたんだよ!」
「え?」
突然の抗議にドラえもんは目を丸くした。
「何のこと?」
「とぼけんな!」
ジャイアンはさらに一歩前へ出る。
「ミステリートレインのことだよ!」
その言葉を聞いた瞬間。
ドラえもんの表情が固まった。
「あ……」
後ろに立つ三人の姿を見て、何かを察したらしい。
「なるほど……」
小さく額を押さえる。
「やっぱり聞いたんだね……」
「聞いたも何も!」
ジャイアンは大げさに両手を広げた。
「運行予定まで決まってるじゃねぇか!」
「え、えっとね……」
ドラえもんは珍しく歯切れが悪い。
「黙ってたわけじゃないんだよ?」
「じゃあ何だよ」
「その……」
言葉を探すように視線を泳がせる。
そして観念したように肩を落とした。
「……だから話したくなかったんだよ」
「え?」
反応したのはのび太だった。
「ミステリートレインって言った?」
その瞬間。
ドラえもんはさらに頭を抱えた。
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「ほら」
「え?」
「ほら見ろ」
「何が?」
「だから話したくなかったんだって」
ドラえもんは深いため息をつく。
「のび太の今年の自由研究、天体観測だろ?」
「うん!」
「絶対食いつくと思った」
「当然だよ!」
のび太は目を輝かせた。
「ミステリートレインだよ!? 宇宙列車だよね!?」
「まだ乗るって決まったわけじゃ――」
「乗るんだ!」
「話聞いてた?」
ドラえもんが呆れる。
その様子を見ていた#朔夜は、ようやく口を開いた。
「盛り上がっているところ悪いんだけど」
全員の視線が向く。
「ミステリートレインって何?」
「あ」
「そういえば説明してなかった」
ドラえもんは咳払いをした。
「えっとね――」
そこから簡単な説明が始まった。
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[chapter:未来世界で人気の観光列車]。
[chapter:銀河を巡る長距離路線。]
[chapter:様々な惑星を旅する特別列車。]
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話を聞くうちに、#朔夜たちも少しずつ興味を引かれていく。
「つまり宇宙旅行か」
「そういうこと!」
のび太が勢いよく頷いた。
「すごそうだな」
アキノリなら間違いなく喜びそうだ。
そんなことを考えていると、ドラえもんが後ろの三人へ目を向けた。
「そうだ。紹介するね」
三人も前へ出る。
「久しぶりだね、ドラえもん」
最初に声を掛けたのは快活そうな少年だった。
「こちらこそ」
ドラえもんは笑顔になる。
「この子がアストン」
少年が軽く手を振る。
「よろしく」
続いてもう一人の少年。
「こっちがドン」
「どうも」
最後に少女。
「それからジェーン」
「よろしくね」
三人とも未来世界の子どもらしい雰囲気を持っていた。
#朔夜たちは順番に挨拶を返す。
「未来人って実際に会うと不思議だな……」
思わず呟くと、
「よく言われるよ」
アストンが笑った。
和やかな空気が流れる。
その様子を見届けるように、リーゼが一歩下がった。
「じゃあ、私はこれで」
赤いポニーテールが揺れる。
「仕事に戻らないといけないから」
「色々ありがとうございました」
ドラえもんが頭を下げる。
「いえいえ」
リーゼは柔らかく微笑んだ。
「妖怪のお話、とても面白かったわ」
ケータとトウマも慌てて礼を言う。
「またね」
そう言い残し、リーゼは展示スペースの奥へと歩いていった。
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その後ろ姿を見送りながら――
#朔夜は再び違和感を覚える。
まただ。
さっきからずっと感じている。
初対面のはずなのに。
どこかで見たような。
どこかで会ったような。
そんな奇妙な感覚。
「#朔夜?」
ナツメが首を傾げる。
「……いや」
首を振った。
考えても分からない。
今はそれよりも――
「おーい!」
聞き覚えのある声が飛んできた。
見ると少し離れた通路からアキノリが駆けてくる。
どうやら見学を終えたらしい。
「そっちは終わったのか?」
「うん」
ドラえもんが頷く。
「ちょうど合流したところ」
これで全員が揃った。
ジャイアン。
スネ夫。
のび太。
しずか。
ドラえもん。
そして#朔夜たち。
さらにアストン、ドン、ジェーン。
賑やかな集団になっている。
「それで?」
ジャイアンが腕を組む。
「ミステリートレインには乗るんだろ?」
ドラえもんは苦笑した。
「まぁ……その予定だよ」
「よっしゃ!」
ジャイアンが拳を握る。
のび太も歓声を上げた。
こうして一行は、銀河を駆ける夢の列車――ミステリートレインへ向かうことになる。
その胸に期待を抱きながら。
そして#朔夜だけは、胸の奥に残る小さな違和感を抱えたまま。
赤い髪の職員――照海リーゼの後ろ姿を、最後まで見つめていたのであった。