ドラえもんのび太の異世界からの来訪者   作:セナドライ

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#第九十五話

「……救難信号だって?」

その一言が機関室の空気をさらに重くした直後——。

ガタッ。

背後で、明らかに“何かが動いた音”が響いた。

#朔夜は反射的に振り返る。

「今の音……」

マスタード警部の表情が一瞬で変わる。

「そこにいるのは誰だッ!?」

鋭い声が機関室に響き渡った。

ドラえもんも車掌も、一斉に扉の方へ視線を向ける。

沈黙。

一拍遅れて、影がゆっくりと姿を現した。

「やれやれ……バレるのが早いね」

軽い調子の声。

そこに立っていたのは、マリンバだった。

腕を組み、まるで最初からそこにいたかのような顔をしている。

「私に黙っているとは、寂しいじゃないか」

マスタード警部が眉をひそめる。

「君は……いつからそこにいた?」

「最初から、かな?」

さらりと答えるマリンバに、ドラえもんがため息をつく。

「勝手に機関室の近くまで来ないでよ……」

だがマリンバは気にしない。

むしろ面白がっている様子だった。

「で?救難信号だっけ?」

彼女は端末をちらりと見て、肩をすくめる。

「助けに行ってあげなよ。万年警部」

「万年警部ではないッ!」

マスタード警部が即座に食い気味で否定する。

「そういう問題ではなく、これは航路上の重大な——」

「はいはい、重大重大」

マリンバは軽く手を振って遮った。

その態度に、空気がさらにピリつく。]

[newpage]

#朔夜はそのやり取りを見ながら、内心で思う。

(この人、絶対話をややこしくしてる……)

するとマリンバは、ふと思い出したように視線を後ろへ向けた。

「あ、そうだ」

「この子たちも気になっってるみたいから、連れて来といたよ」

その言葉と同時に、機関室の入口付近の影が動く。

そこから現れたのは——

ナツメ、トウマ。

一瞬、場の空気が止まった。

「……なんで君たちも……」

ドラえもんが頭を抱えるように言う。

「いや、それはこっちの台詞なんだけど」

ナツメが呆れたように返す。

「朔夜の行動が明らかにおかしかったから、追いかけてきた」

トウマも頷く。

「これ……完全に“話し合いの場”じゃなくなってない?」

一気に機関室の密度が上がる。

マスタード警部は眉間を押さえ、車掌は無言で端末を見つめている。

そしてドラえもんは、静かに一言。

「……どうしてこうなるの」

その呟きには、明確な疲労がにじんでいた。

マリンバはというと、楽しそうに腕を組んでいる。

「いいじゃない。人が増えた方が話は早いでしょ?」

「早くなるどころか混乱している!」

マスタード警部が叫ぶ。

だがその声を遮るように、端末が再び鳴った。

ピッ——

機関室の中央スクリーンに、波形が表示される。

車掌が低く告げる。

「救難信号……増幅しています」

その瞬間、空気が変わった。

#朔夜は気付く。

(さっきより、近い……?)

ノイズ混じりの声が、はっきりと形を持ち始める。

「……こ……こ……」

途切れ途切れだった信号が、少しずつ輪郭を持つ。

ドラえもんが小さく呟く。

「これ……単一じゃない」

マスタード警部が顔を上げる。

「どういう意味だ?」

ドラえもんは画面を見つめたまま答える。

「複数の信号が、同じ座標を目指して収束してる」

一瞬の沈黙。

その言葉の意味を理解したのは、#朔夜だった。

「……一つの救難信号じゃなくて?」

その問いに、誰もすぐには答えられなかった。

だがスクリーンの波形は、明確に“同じリズム”へと揃い始めている。

まるで——

遠く離れた誰かたちが、同じ方向へ呼びかけているかのように。

マリンバがぽつりと言う。

「……これ、ただの遭難じゃないね」

普段の軽さが、わずかに消えていた。

その言葉の直後。

列車が、ほんのわずかに揺れた。

動いているのか、それとも——

“何かに引かれているのか”。

誰も、それを判断できなかった。

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