星々の海を、青い龍が駆け抜ける。
ミステリートレインから飛び出したドラえもんたちは、車掌から渡された通信機の示す座標を目指していた。
先頭を飛ぶのは青龍。その背にはナツメとドラえもんが乗っている。
少し後方ではコマさんとキュウビが並走し、その背に朔夜やトウマがしがみついていた。
さらに最後尾。
マリンバだけはなぜか自前の小型推進装置を使い、宇宙空間を泳ぐように飛んでいる。
「なんで普通について来れてるの……」
#朔夜が呟く。
「賞金稼ぎだから」
マリンバは当然のような顔で答えた。
「その説明で納得できるわけない」
トウマが即座に突っ込む。
そんなやり取りをしているうちに、通信機の反応が急激に強くなった。
ドラえもんが前方を指差す。
「あれだ!」
一同が視線を向ける。
そして――言葉を失った。
巨大だった。
救難信号の発信源は一隻ではなかったのである。
宇宙空間に無数の船が漂っていた。
大型船。
中型船。
貨物船のようなもの。
改造したような居住船。
形も大きさもバラバラだ。
まるで街そのものが宇宙へ逃げ出してきたかのような光景だった。
[newpage]
「避難船団……?」
ナツメが呟く。
「そんな感じだな」
ドラえもんも表情を引き締める。
その時だった。
船団の一隻から光が点滅する。
通信信号だ。
そして次の瞬間。
大型船の側面にあるハッチがゆっくりと開き始めた。
ゴォォォ……
重々しい音が宇宙空間に響くような錯覚を覚える。
開いたハッチの内部は暗く、何も見えない。
だが明らかにこちらへ向けて開いている。
「入れってことかな?」
トウマが眉をひそめる。
マリンバは腕を組んだ。
「怪しい」
「え?」
「普通に怪しい」
断言だった。
「こういうのね。賞金首を追ってる時によくある」
「いや、宇宙で?」
「宇宙でも」
なぜか説得力がある。
マリンバは続けた。
「救難信号出す」
「善意の人が近づく」
「閉じ込める」
「終了」
「簡潔だな……」
#朔夜は少し納得しかけた。
確かに可能性としてはあり得る。
だがドラえもんは首を振る。
「助けを求めてるなら放っておけないよ」
その言葉にマリンバは肩をすくめた。
「だから私は止めないよ」
「ただし警戒はする」
「それは賛成」
ドラえもんも頷く。
結局、一行はその船へ向かうことになった。
青龍がゆっくりとハッチ内部へ降り立つ。
続いてコマさんとキュウビも着地した。
[newpage]
全員が船内へ入った瞬間。
――ゴォン!
背後のハッチが閉じた。
「!?」
トウマが反射的に身構える。
#朔夜も弓へ手を伸ばした。
周囲は真っ暗だ。
何も見えない。
完全な闇。
その中で機械の駆動音だけが響く。
ガコン。
ガコン。
ガコン。
「閉じ込められた?」
トウマが小声で言う。
マリンバはすでに武器へ手をかけていた。
「ほら来た」
「まだ決まってないって」
ドラえもんが慌てて止める。
だが彼自身も緊張しているのは分かった。
数秒。
あるいは数十秒。
暗闇の時間は短かったはずなのに妙に長く感じる。
そして。
パッ。
天井の照明が点灯した。
「うわっ」
急な明るさに目を細める。
どうやら気圧調整区画だったらしい。
機械音も徐々に静まっていく。
何事も起きない。
罠でもなさそうだ。
皆が少しだけ安堵したその時。
正面の巨大なハッチがゆっくりと開き始めた。
ゴォォ……
眩しい光が差し込む。
その向こうに人影が見えた。
一人ではない。
複数人いる。
誰だ?
#朔夜たちが身構える。
そして。
通路の向こうから驚いた声が響いた。
「ドラえもんさん!?」
聞き覚えのあるような、ないような声。
だが。
その反応は明らかにドラえもん個人へ向けられていた。
一同が反射的に振り返る。
視線の先。
ドラえもんは固まっていた。
目を大きく見開き。
信じられないものを見るような顔をしている。
「え……?」
普段のドラえもんからは想像できない反応だった。
知り合いなのか。
#朔夜がそう思った時。
ハッチの向こうの人物たちもまた、驚愕の表情を浮かべていた。
まるで奇跡でも見たかのように。
そしてドラえもんは小さく息を呑む。
[newpage]
「そんな……」
その声には驚きと困惑が入り混じっていた。
#朔夜は思わず前を見る。
通路の向こう。
照明に照らされた数人の姿。
彼らが何者なのかはまだ分からない。
だが一つだけ確かなことがあった。
この遭難船団は。
ドラえもんにとって決して無関係な存在ではない。
そして――
彼らもまた、ドラえもんを知っているのだった。