「……みんな、なんでここに?」
ドラえもんの呟きは、驚きと困惑に満ちていた。
開いたハッチの向こう。
「ドラえもんさん! 本当にドラえもんさんですよね!?」
真っ先に駆け寄ってきたのは、小さな宇宙人だった。
いや、正確には小さな宇宙人が誰かの頭の上から顔を覗かせていた。
「もちろん私もいますよ!」
そう言って身を乗り出したその姿を見て、ドラえもんはさらに目を丸くする。
「パピまで!?」
パピは嬉しそうに頷いた。
その下では、犬をそのまま人間にしたような少年が苦笑している。
「急に身を乗り出さないで、パピさん」
「すみません、イチさん」
どうやら頭の上は特等席らしい。
その光景を見たナツメの肩がぴくりと震えた。
「か、可愛い……」
ぼそりと漏れた声は意外と大きかった。
パピの耳がぴくりと動く。
「か、可愛いって言わないでください……」
「ごめん!」
即座に謝るナツメだったが、パピの耳は真っ赤になっていた。
トウマが吹き出しそうになる。
緊張感のある状況のはずなのに、妙な空気になってしまう。
そんな様子を見ていたゴリ郎の父が苦笑した。
「積もる話もありますが、まずはこちらへ」
彼が示した先には長い通路が続いていた。
「事情を説明します」
一行は避難船の内部へ足を踏み入れる。
通路を進む間も、#朔夜は周囲を観察していた。
船内は決して広くはない。
だが、多くの人々が生活している痕跡があった。
簡易ベッド。
積み上げられた物資。
壁際に座る子供たち。
疲れ切った大人たち。
避難船。
その言葉が自然と頭に浮かぶ。
ここは軍艦ではない。
人々が生き延びるために身を寄せ合う場所だった。
[newpage]
やがて一行は大きな部屋へ案内された。
メインルーム。
壁一面が巨大なスクリーンになっている。
その前には多くの人々が集まっていた。
ドラえもんの姿を見るなり、あちこちから驚きの声が上がる。
だが、その表情に明るさはない。
皆どこか疲れ果てていた。
「まずは見てください」
ゴリ郎の父が静かに言った。
スクリーンが点灯する。
最初に映し出されたのは豊かな森だった。
どこまでも広がる緑。
しかし次の瞬間。
画面が切り替わる。
爆発。
炎
黒煙。
巨大な樹木が次々と倒れていく。
#朔夜は思わず息を呑んだ。
「これが……」
「俺たちが住んでいた星です。」
ゴリ郎の父が答える。
かつて平和だった星。
その景色は見る影もなかった。
映像はさらに切り替わる。
今度は都市。
高い建物。
広い道路。
そして避難する人々。
悲鳴。
崩壊。
瓦礫。
「ワンニャン国……」
イチが俯いた。
さらに映像が変わる。
宇宙港。
戦艦。
光の奔流。
爆発。
次々と沈黙する艦隊。
「ピリカ星系です」
パピの声は震えていた。
誰も言葉を発しない。
あまりにも酷い光景だった。
そこに映っていたのは戦争ではない。
一方的な破壊だった。
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「最初は事故かと思いました」
ゴリ郎の父が語り始める。
「隕石か何かだと」
「だが違った」
イチが続ける。
「警報が鳴った時には、もう都市部が壊滅していた」
パピも頷く。
「艦隊を出す時間すらありませんでした」
三人の言葉には共通点があった。
誰も戦えていない。
反撃すらできなかった。
「我々は逃げるしかありませんでした」
ゴリ郎の父の声が重く響く。
「宇宙へ脱出し、漂流している途中で他の避難船団と遭遇しました」
「そこで協力体制を築いたんです」
イチが説明する。
「そして救難信号を発信し続けていた」
パピが付け加えた。
その結果。
ミステリートレインが信号を受信した。
静寂が部屋を包む。
やがてマリンバが腕を組んだ。
「で?」
全員が彼女を見る。
「犯人は?」
単刀直入だった。
しかし誰も否定しない。
聞かなければならないことだった。
ゴリ郎の父は頷く。
「記録映像があります」
スクリーンが切り替わる。
監視カメラの映像だろう。
激しく揺れる画面。
逃げ惑う人々。
崩れる建物。
そして。
そこに現れた。
丸い球体。
巨大な機械。
その表面には、人間の生首をそのまま映し出したかのような不気味な顔。
無機質なのに。
どこか生きているように見える。
異様な存在感。
背筋を寒くする威圧感。
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#朔夜は知らない。
ナツメも。
トウマも。
アキノリも。
誰一人として知らないはずだった。
だが。
その瞬間だった。
ドラえもんの表情が凍り付く。
目を見開く。
信じられないものを見るように。
「そんな……」
かすれた声が漏れる。
全員の視線がドラえもんへ向いた。
ドラえもんはスクリーンから目を離せない。
そして。
震える声で、その名を口にした。
「ディアボロ……!?」
その場にいた誰もが息を呑んだ。
ドラえもんだけが知っている。
この機械の恐ろしさを。
そして。
避難船団を襲った悪夢の正体を。
スクリーンの中で、ディアボロの不気味な顔が静かにこちらを見つめていた。