11/22。今日はいい夫婦の日だな、とふと思いを巡らす少女は想い人である男子生徒と出くわす。普段朴念仁な男子生徒なら気づかないだろう、と思ってしまった少女の取った行動は…?甘い甘い、たった10分の休み時間。

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いい夫婦の日

「ねぇねぇサタン、今日って『いい夫婦』の日らしいわよ!」

「でも学生の俺たちには関係無くね?」

「そ、そうだけど...雰囲気というか...」

「んだよそれ」

そんな他愛もない会話を小耳に挟みながら、この学園の生徒会長である私は、そよ風に髪を揺らしながら読書に勤しむ。

「(いい夫婦の日、か)」

悪戯な木枯らしが、私の本のページをぱらぱらとめくる。ページを見失ってしまったのでまた後で読むか、と思い、私はぱたんと本を閉じ、雲一つない秋空を仰ぎながら物思いにふける。

日付の語呂合わせ程度で一喜一憂するなど馬鹿らしいにも程がある...以前の私ならそう考えていたであろう。

でも今は違う。

あの人に会えたから、私は変われた。

変わってしまった。

人の温かさを知ってしまったから。

もう元には戻れない。

戻りたくもない。

以前の私が今の私を見たら呆れ果ててしまうだろう。今の私は、どうもどんな物事もあの人へと無意識に関連付けてしまう。

まるで、普通の、恋する女の子の様に。

今だって、いい夫婦の日、と聞いて、言葉にするのも恥ずかしい事を考えてしまった。

表情には出ていない...はずだ。

しかし思ったが、数年後、あの人の隣には誰が立っているのだろう。

それが自分じゃない誰かなのを、ふと考えてしまう。たまらなく嫌だ。

あの人の隣に立っているのが、あの人と笑っているのが、あの人と生活しているのが、私じゃないというのがたまらなく嫌だ。

そしてそんな事に嫌気を感じてしまう私に嫌気が刺す。

しかし、それが人間というものなのだろう。

感情というものなのだろう。

嫉妬というものなのだろう。

恋というものなのだろう。

当然というものなのだろう。

その当然が私には欠如していた。

しかし今はある。あって当然のものが。

私は前の私より今の私の方が断然好きだ。

そして恐らく、前の私は今の私より自分を好むだろう。

それでいいのだ。

今が良ければ、それで。

でも、少しだけ考えたっていいだろう。

将来あの人の隣に立って。

あの人と一緒に笑って。

あの人と同じ生活をして。

あの人と愛し合っている自分を。

そんな事を考えるだけで自然と頬がゆるんでしまい、慌てて回りに人がいないか確認する。そんな事をしている自分も滑稽で、また笑みが溢れてくる。

夢のような話だが、もし自分が将来、あの人とそういう関係になれたのなら。

あの人の心の拠り所となれるような存在になれるように頑張ろう。

今、あの人が私の心の拠り所であるように。

 

そこまで考えた所で、足音が近づいてきた。誰かと思い、顔を向けると。

...全く、いつもこういうタイミングは、偶然すぎる程に完璧なんだから。

「もう昼休み終わるぞ」

呼びかけられ、すくっと立つ。彼は少し驚いたようで、困惑が怯えか受け取り難い表情でこちらを見ていた。

「...ねぇ」

手を後ろで組み、目を見据える。

「将来は、この日を一緒に祝えたらいいわね」

ふふっと笑い、踵を返す。どうせこの朴念仁には何を言っても伝わらないので少しくらい自分の気持ちを吐露してもよいだろう。今まで散々辛酸を舐めてきたのだからよく分かっている。この男の事だから、恐らく今日がいい夫婦の日であること自体...

「...いい夫婦の日の事か?」

知っていた。

「一緒に祝うって...それって夫婦ってこと?」

しかも読み取っていた。

一瞬で顔が熟れた林檎のように赤くなる私。何故、何故今日に限って察しが良いのか。あまりにも酷い仕打ちだ。恥ずかしくて死んでしまうではないか。

そこで私が取った行動は。

「って、あ、おい!待てよ!」

逃げる事だった。羞恥心を全て脚力に変え、一目散に教室へと雪崩れ込んだ。

教室の生徒は目を白黒させていたが、私は未だばくんばくんと脈打っている心臓を無理やり抑えつけ無表情を保つ。そして、席に座った瞬間、予鈴が鳴った。

とりあえず今日一日は彼を避けなければいけない事となってしまった。なんと嘆かわしい事だろうか。

しかし私の心は踊っていた。今回の事に気付いたのなら希望が持てるのではないか?そんな事を考えていたのだ。もしかしたら顔もにやけていてしまったかもしれない。そんな時、先生が教室に入ってきて、私が彼を遅刻に追いやってしまった事に気付く。

がらっ、と引き戸が開き、彼が教室に入り、罪悪感が私の心にのしかかる。

「遅刻ですよ」

その先生の言葉が更に私を抉る。でも彼は。

「すみません、昼寝してたら寝坊しちまって...ごめんなさい」

そんな事を言うのだ。勿論昼寝など嘘に決まっている。私のせいだ。なのに。

席に着いた彼は、私の方をちらっと見ると照れ臭そうにそっぽを向く。

ああ、私は彼のこういう所に惚れたんだ。

心の中で呟き、ノートを開ける。

授業が終われば生徒会の仕事だ。今日はやるべき仕事が多いので遅くまでかかるだろう。

そんな事を思い、私はまた、私の愛すべき日常へと身を投じるのだ。

 

 

 

 

 




どうも管理人です。「いい夫婦の日」どうでしたか?こちらは見出しにもある通り、いい夫婦の日記念に書いたものです。休み時間でのオリガは大体読書しているか生徒会の業務に勤しんでいます。ストライクは男子友達とはっちゃけたり散歩したりしています。ご意見、ご感想等あれば、次回作の参考に致しますので、どしどし送ってくれたら嬉しいです。Twitter→(@mnst_gakuen)

あぁ、こんな学園生活が送りたk(ry

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