東方幻夢鬼 The voices of wailing ghosts   作:ronyvic

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鬼蛇熟睡中…


山の技術革命

『こち……応……ません』ザザッ

 

(……ん?)

 

(……空耳かな?)

 

『制塔……ルフォ……せよ』ザザッ

 

(…空耳じゃないみたい)

 

『管………こち………ません』ザザッ

 

「これから聞こえてくるな」

 

途切れ途切れ聞こえてくる謎の男の声。その声が発せられているのは両手に収まる程度の大きさの、アンテナが壊れたラジオだった。

 

「電源なんて入れてたっけ?」

 

電源ボタンを探してみるとボタンがとれ、シリコン部分がむきだしだった。シリコン部分がむきだしではあったが、埋めこまれていて先の細い物で押さなければ電源を入れたり切ったりすることは難しいようだった。

 

「あ〜爪楊枝かなんかないかなー」

 

地面に落ちていた先の潰れた爪楊枝を拾い、シリコン部分を1回つついて電源を切ろうとした。

 

「……あれ?おかしいな……」

 

『管制……応答……』ザザッ

 

「切れないな……」

 

シリコン部分をつついても電源が切れなかったので、電池が入っているフタを開けた。

 

「……え?」

 

乾電池の単四を二つはめ込めば動くラジオには、その乾電池の単四がはめ込められてはいなかった。

 

「分解してみよ」

 

気になることは納得の行く所まで突き詰める彼女の性格は、その電池が入っていないのに動くラジオに対しての何故、どうしてそうなってしまったのか知りたいという知識欲を駆り立てた。

 

「精密ドライバーは~っと」

 

ラジオの裏側にある五つのネジを外すために精密ドライバー探し始めた。

 

「あっれ~どこやったかな〜……あ、作業台の上だった」

 

ラジオを作業台の上に持って行き、プラスドライバーで五つのネジを外しはじめた。

 

「ご開帳〜、ほう中身は意外とシンプルな構造でできてるのか」

 

「…壊れてる」

 

電波を送受信するためのユニット部分はさびて使い物にはなっていなかった。

 

「うーん、壊れてるし電池は入ってないし……こりゃ相当強い思念だね」

 

「誰がこの思念を発してるんだろう……」

 

「まぁいーや、特に害は無いみたいだしほっとこ。将棋する約束もあるし。」

 

ラジオを作業台の隅に置いておき、帽子をかぶって将棋の対戦相手の所に向かおうとしたその時、

 

「……ォリィイイイイイ!!!!!」

 

「…今度は女の声、しかも聞き覚えのある泥棒の声だ……」

 

「ニィトォリィィイイイイ!!!!!」ドンガラガッシャーン

 

いきなり窓を突き破りながらダイナミックお邪魔しますしてきたのは、ほうきをまたいで魔女っぽい帽子が飛ばないように手で押さえていた白黒の泥棒であった。

 

 

「よっ!ニトリ、また八卦炉が壊れちまったんだ!直してくれよ!」

 

ニトリ「……いい加減、普通に入ってきてよ……魔理沙。いや、泥棒。」

 

魔理沙「ごめん、ごめん!きゅうりあげるから許してくれよ!さ、八卦炉直して!」

 

ニトリ「無理だよ、魔理沙がダイナミックお邪魔しますの被害額いくらかかってきてると思ってるの!?今ので被害額七桁いっちまったんだよ!?」

 

魔理沙「まぁまぁ怒ってる顔も可愛いけど、そう怒るなよきゅうりあげないぞ?」

 

ニトリ「怒ってない!!……はぁお店もだいぶクライアントが減っちゃったんだよ…魔理沙が何回もダイナミックお邪魔しますするからだよ?自覚あるの?」

 

魔理沙「よく潰れないなw」

 

ニトリ「はぁ、ほんとに……もうほんとに!お店が成り立ってるは皮肉にも魔理沙のおかげでもある……」

 

魔理沙「なんで?w」

 

ニトリ「……魔理沙大好き人形使いさんが「魔理沙が現れると聞いてやってきました!ついでにこれください」って言ってやってくるんだよ」

 

魔理沙「あいつか……」

 

何故かさっきまでニトリをいじってほくそ笑んでいた魔理沙が、ニトリと同じ尻子玉を抜かれた顔をしていた。だが、

 

魔理沙「でも店が潰れなくて良かったじゃないか、私のおかげだな!」

 

ニトリ「…そのポジティブ思考が羨ましいよ」

 

魔理沙「んで、直してくれるよな!八卦炉!」

 

ニトリ「………」

 

魔理沙「な!」

 

ニトリ「………」

 

魔理沙「きゅうり!」

 

ニトリ「………」ピク

 

魔理沙「えー………(ダメか…ならば)」

 

魔理沙「……もみじ」

 

ニトリ「……!」ピク

 

魔理沙「…ここにもみじのあられもない姿をおさめた写真がある」

 

ニトリ「ひゅい!?」

 

魔理沙「…欲しいか?」ピラピラ

 

ニトリ「くっ…どんな感じなのか見せておくれ…!」

 

魔理沙「おっと、目の前で八卦炉を直してくれるのならいいぜ☆」ピラピラ

 

ニトリ(うおおおおおお!!見てえええええ!!!)

 

ご覧の通りニトリは妖怪の山の警備員である犬走椛のことが好きなのである。

待機中の間、将棋の対戦相手であるニトリは初めは真面目に相手をしていたものの、真剣に数十手先を読んでいる椛の表情、特に冷ややかに見える目が次第にニトリの奥底に眠っていたマゾの部分を引きずられて行ったのである。

以来、将棋するという口実で椛の冷ややかな目を見ながら己の性欲を満たしていたのである。

 

とんだエロがっぱである。

 

ニトリ「わ、わかった!直そう」

 

魔理沙「お、サンキュー」

 

ニトリは壊れた八卦炉を受け取りすぐさま修理に取りかかった。写真が欲しい一心で。

 

ニトリ「うおおおおおお!!椛モミジもみじぃぃぃいい!!!」

 

魔理沙(とんだエロがっぱであるw)

 

魔理沙が心の中でほくそ笑んでいる間に八卦炉は新品同様になっていた。

 

ニトリ「できた!さぁよこせ!!」

 

魔理沙「はいはい、ありがとな。お礼に私は使えないけどニトリなら使えそうなガラクタ置いとくぜ、じゃな☆」ピュー

 

そう言うと魔理沙はダイナミックお邪魔しますした所から飛んでいった。

 

ニトリ「んほおおおお椛もみじぃぃぃいい…………は?」

 

椛、マキ科の常緑針葉高木、園芸植物。

秋になると綺麗な紅葉を魅せる。

そう写真に写っていたのは白狼天狗の犬走椛ではなく、植物のもみじの葉っぱだったのである。

 

ニトリ「……騙された、ぁああんまぁりぃだぁ〜」

 

泣き叫ぶニトリ。そうであろう当然であろう、気持ちは誰しもが分かるだろう。非常に同情する。

 

その時、ニトリの泣き叫ぶ声で聞こえなかったが魔理沙が置いていったガラクタが小刻みに震えていた。

それと同時にラジオがまるで共鳴するかの様に謎の男の声を発していたのである。




ああ、スネークごめんよ

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