コズミック・イラ異伝『輝きのアマナ』   作:残響楽団和太鼓担当

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それは悪夢の始まりでした。

 C.E.55年 メンデルG.A.R.M. R&D所有研究所

 

 僕という自我が芽生え、記憶が脳にインストールされたのはC.E.50年とても暑い夏の日のことであった。

 

 機動戦士ガンダムSEED

 

 この身体に生まれる前の最後の記憶は、友人たちと一緒にそのアニメを視聴していたところで途切れている。

 

 おそらく、その後すぐに僕は何らかの理由で死亡したのであろう。

 

 僕はガンダムという作品に対して、そこまで熱意を持っていなかったことは覚えている。

 

 だが、友人たちは初代ガンダムから最新のGQuuuuuuXまで全てを網羅していた。

 

 そんな友人たちが僕にどうしても見せたいといって家に持ちよったのがSEEDのBlu-ray Discだったのだ。

 

 SEED、DESTINY、そして劇場版であるFREEDOMや外伝作品の数々。

 

 そこまで興味のなかった僕でさえ、いつしか作品に引き込まれていた。

 

 そうしているうちに、友人たちとはさらに話が合うようになり、あの日は全員でSEED系列の全作品を一気見する予定で...

 

 もう友人たちと語らえないのは残念だが、それはもはや過去のこと。

 

 今は現実に目を向けよう。

 

「アマナ、サンプルA1からB6までを持ってきてくれ」 

 

「はいはい、今持って行きますね」

 

 僕の名前はアマナ・ヒビキ、ユーレン・ヒビキとヴィア・ヒビキの娘にしてキラ・ヤマトとカガリ・ユラ・アスハの姉にあたるもの。

 

 本来の歴史では有り得ざる存在。

 

 要するに、イレギュラーというやつだ。 

 

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 僕が作られた経緯を簡単に語ると。

 

 本格的にスーパーコーディネイターを作る前の段階で、偶然求めていた水準に達した個体が生まれた。

 

 それが僕だ。

 

 だけど、そんな僕も残念ながら失敗作だと言わざるを得ない。

 

 脳の演算能力は確かに通常のコーディネイターをはるかに超え、身体能力なども軒並み高水準ではあったが、よりにもよって空間把握能力が一般人並みしかないという致命的な欠陥が存在した。

 

 だけど、ユーレンはなんの気まぐれか僕を娘として育て始めた。

 

 僕より前に失敗作と判断された子どもたちは全員廃棄処分され、限りなく完成に近い個体であるカナード・パルスさえ遠く離れたユーラシア連邦に譲渡して以来干渉していない。

 

 ならば、僕は他の失敗作子どもたちと何が違ったのだろうか?

 

 正直ユーレンの考えは理解不能だが、その気まぐれによって僕は生きているのだから、今はそれで良しとしよう。

 

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 現在、僕はユーレンの娘兼助手として研究所で働いている。

 

 ヴィアは反対していたが、僕からするとありとあらゆる情報が入っている研究所は、とても都合の良い場所であり、またユーレンの研究から自分にとって有益な技術を抜き取ることで様々な派生技術を生み出せたりしたので、この世界に生まれて初めて楽しいと思えた時間だった。

 

 そんなある日、ヴィアが僕をとある部屋に案内した。

 

「アマナ、実は貴女にサプライズがあるの」

 

「サプライズ...もしやユーレンの研究成果が遂に結実したのですか?」

 

 その言葉を聞いた彼女の反応から僕は察した。

 

「やはりそうですか、おめでとうございます」

 

「貴女は、何か思うところはないの?」

 

 そう訪ねてきたヴィアは、どこか悲しそうな顔をしていた。

 

「...今回ユーレンが完璧なスーパーコーディネイター完成させるまでに数多くの失敗作たちが生まれ、そして処分されてきました。

 

 今さらどう反応すれば良いのか僕にはわかりませんし、そもそも僕がどう思おうと研究が終わることはない、どうせ彼はこの結果に満足せずにまた新たなる禁忌に手を出すでしょう。

 

 僕にそれを止める手立ては...ひゃっ!」

 

 気づくと、僕はヴィアに後ろから抱きしめられていた。

 

「アマナ、もうユーレンを手伝わなくても良いのよ?あの人は貴女たちを実験体としか見ていない、このままあの人の手伝いを続けたら、いつか貴女まで!」

 

 やはり、この人は優しい人だ。

 

『完成したスーパーコーディネイター』つまり己の子供であるキラのことで頭がいっぱいだろうに、失敗作である僕まで気にかけてくれている。

 

 だからこそ、この先に待っている運命が憎らしい。

 

「Lady.ヴィア、貴女の心遣いはありがたいですが、私は自ら望んでユーレンの手伝いをしています。ですから貴女はこれから生まれるであろう自分のお子さんのことだけを考えてください」

 

「アマナ、私には妹がいるの...もし貴女さえ良かったら」

 

「Lady.ヴィア、やめておいたほうが良い...貴女の子供たちと違って、私は貴女とは血の繋がりのない他人です。さっきも言った通り、貴女はご自分のお子さんのことだけを考えたほうが良い、こんな得体の知れない化物に構う必要はないんです」

 

 その言葉を最後に、僕はヴィアとの会話を打ち切り部屋を出た。

 

「申し訳ありませんLady.ヴィア、僕の計画のためにも、ここでメンデルを離れるわけにいかないのです」

 

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 キラの完成から数日、研究所はとても慌ただしくなり始めていた。

 

 別部門のトップであるアウラ・マハ・ハイバルがユーレンのもとを訪れたのだ。

 

 おそらく想像はつくだろうが一応説明しておこう。

 

 2人は激しく揉めた。

 

 元々思想の違いから仲が悪かった2人だが、ユーレンがよりによってアウラの研究を侮辱するような発言をしたがために、彼女を完全に怒らせてしまっていた。

 

 このままではまずいなと思ったので、僕は研究所の外の廊下で彼女に話しかけたのだ。

 

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「ユーレンの奴め、わらわの研究を馬鹿にしおって!絶対に許さぬぞ!!!」

 

 廊下に出てすぐ完全にキレている彼女を見つけた。

 

「申し訳ありませんLady.アウラ」

 

「ん?そなたは確かユーレンの」

 

 良かった...ギリギリ会話が成立しそうな状態だ。

 

「先ほどはユーレンがとんでもないご無礼を、本来であれば互いの研究に関する進捗報告と意見交換を行う予定だったのですが、彼のあのような発言の後では流石にお二人がお話するのは難しいと思いましたので、私のほうから研究進捗をご報告いたします」

 

「ふむ、あやつの娘にしては礼儀正しいの、良い...申してみよ」

 

 今アウラが僕のことをユーレンの娘と言ったが、前回話した通り僕はキラを完成させるまでに大量に生まれた失敗作の1人に過ぎない。

 

 だが、ユーレンは何故かその失敗作である僕に執着して処分しようしなかった。

 

 何を思ったか、僕にヒビキの姓まで与えて娘として扱ったのだ。

 

 僕はそれを研究所の中だけでの扱いだと思っていたのだが、どうやらユーレンは外でも僕のことを娘として周囲に話したらしく、今では研究所の内外問わず僕はユーレンの娘として知られている。

 

 本当に吐き気がする。

 

「まずこちらからのご報告ですが、ユーレンがとうとう完全なスーパーコーディネイターを完成させました」

 

「ほう?ようやくか」

 

 よし、興味を持ってくれた。

 

「かなり難航しましたが、今回の成功により無事プロジェクトを完遂できそうです」

 

「ふむ、こちらからも進捗を聞かせよう、わらわのプロジェクト『アコード計画』は最終段階に入っておる。すでに何人かは生まれて教育段階に入っておる」

 

 おそらくこの時点でラクス・クラインは誕生しているはず、それを話さないということは...やはり彼女は相当な隠し球だったようだ。

 

「お互いの進捗報告も終わりましたし、どうでしょう?少し世間話でもしませんか?」

 

「世間話とな?まぁ良いじゃろう、ユーレンのやつをからかう話の種が見つかるかもしれぬしな」

 

 この会話の後、どうやら僕はアウラに気に入られてしまったらしく、彼女が研究所に訪問する度やたら可愛いがられるようになった。

 

 ユーレンはその度に苦虫を噛み潰したような顔や今にも血の涙を流しそうな顔をしていたが、正直非常に愉快な光景を見させてもらった。

 

 本当に良かった...SEEDの劇場版であるFREEDOMの事件が起こったきっかけは、ユーレン・ヒビキがアウラ・マハ・ハイバルの研究に対して侮辱にも近い否定的な意見を言ったことによる2人の仲違いが原因だ。

 

 今回僕が介入したことにより、依然として仲は悪いままではあるが共に研究について意見交換をする程度にはましになっている。

 

 いずれ世界に羽ばたくキラやカガリたちに負債は遺したくないからね。

 

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【Sideアウラ】

 

 アマナ・ヒビキ、弱冠5歳という幼さでありながら、その類い稀なる頭脳によりユーレンの助手を勤める天才児。

 

 本人は失敗作などと言っておるが、あれのどこが失敗作なものか。

 

「しかし、あの様子じゃとやはりまだ知らぬようじゃのぅ、ユーレンめ...本当に趣味の悪いことをするものじゃ、死んだ娘と同じ姿で新しい娘を作るなど」

 

 じゃがまぁ...無理もないかの。

 

 ユーレンの死んだ娘はナチュラルであったが、とても優秀な子じゃった。

 

 しかし、あの忌々しいS2インフルエンザによって命を奪われてしまったのじゃ。

 

 それからユーレンは狂ったように完璧かつ完全なコーディネイターを作ることに躍起になっておった。 

 

 そしてその実験の最中、奴はとうとう禁忌に手を出してしまった。

 

「遺伝子操作の際に、死んだ娘として限りなく近い遺伝子構造を組み込み、さらにそこへ無理矢理コーディネイターとしての遺伝子構造を組み込んだことで、あの子...アマナが産まれたと奴は言っておったな」

 

 もう少し素直になれば良いものを、おかげであの子は己という存在に全く価値を見出だしておらんではないか。 

 

「あの子がアコードであれば、オルフェの将来の妻として考えなくもなかったのじゃがのう」

 

 ふむ、妻は無理でも何とかあの子をわらわの手元に置く方法はないものかのう?

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