コズミック・イラ異伝『輝きのアマナ』   作:残響楽団和太鼓担当

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紫紺の死神

「こっちだ!」

 

 カガリはキラを連れ、目的地であるGAT-Xの保管場所へと急ぐ。

 

「カガリ、君は避難したほうが良いんじゃない?GAT-Xシリーズの開発協力がサハク家の独断だったってことは多分もう連合側にも伝わっているんでしょ?このまま工廠に向かってモビルスーツを弄っているところを見られたら...」

 

 キラが言わんとする事が何であるかはカガリにもわかっていた。

 

「私が手引きしたと思われると?」

 

「その可能性は十分あると思うよ、確か連合側にはブルーコスモスがバックについていたよね?彼らは前々からオーブを潰す機会を虎視眈々と待ってる...もし口実を得れば即座にオーブ本国を攻撃するかもしれない!」

 

 キラの言うことも一理あるのだ。

 

 この襲撃のどさくさに紛れてGAT-Xを破壊したとしよう、確かに当初の目的は果たせるだろうが...もしもその瞬間を連合側に目撃され、なおかつそれがよりにもよってオーブ首長国連邦代表の娘だったとすれば、連合側の新兵器を破壊したという事実だけでオーブを攻める大義名分は十分だろう。

 

「まさか...お前1人で行くつもりなのか!?」

 

「それも違うよ、僕がカガリの弟だってことはもう知れ渡ってしまっているからね、僕が捕まった場合もまずいことになる」 

 

「じゃあどうするんだ!このままでは最悪は場合GAT-Xがザフトの手に渡ってしまうんだぞ!?」

 

「大丈夫だよカガリ、今こそこれを使う時がきた」

 

 そう言ったキラの手には、カガリも見たことがない端末が握られていた。

 

------------------------ー 

 

【連合軍モビルスーツ保管庫】

 

「ストライクの搬出はまだ終わらないの!?」

 

「ダメです!ザフトの攻撃のせいで輸送用レールが壊れてるみたいで、このままではストライクを動かせません!」

 

 ザフトによる急な襲撃により、GAT-Xシリーズをどうにか戦艦アークエンジェルに運ばなければならなくなった連合側は急ピッチで作業を進めていた。

 

 技術士官であるマリュー・ラミアス大尉もまたその中の1人である。

 

 PS装甲の開発に携わっていた彼女はストライクの稼働テストのためにヘリオポリスへ来ていたのだが、よりにもよってそのタイミングでザフトの襲撃が起こってしまった為に慣れないながらもなんとか現場の指揮を取っていた。

 

「せめてOSが完成していればストライクを起動してここから脱出できたのに!」

 

 ストライクを含め、GAT-Xシリーズはあくまで試作実験機であり開発もまだ初期の段階だ。

 

 故に専用のOSがまだ用意されていないのも仕方のないことであり、ここで現地の技術者たちを責めてもどうにもならないことはマリュー・ラミアスも理解していた。

 

「本来なら今日の今頃OSが届く予定だったんですが、ザフトの襲撃によって完成したOSを持っている教授との連絡が取れなくなってしまい...」

 

「今はなるべく早くレールを復旧させてストライクを運び出すことだけを考えて!早くしないとザフトの襲撃がここまで届いてしまう」

 

 焦りと恐怖により冷静さを欠いてしまった技術者たちは、普段ならば簡単にやってのけるであろう作業すら手が震えてまともにできなくなっていた。

 

 もういっそのことストライクを置いて逃げようと、誰かがそう言おうとしたその時だった。

 

「すいません!GAT-Xシリーズの保管されている工廠というのはここでしょうか!?」

 

「!?貴方は誰!」

 

 いきなり現れた青年に対して警戒心を露にするマリューだったが、直後青年が発した発言によりその警戒心を解くことになる。

 

「僕はオーブ首長国連邦所属キラ・ヤマトです!オーブ首長国連邦代表ウズミ・ナラ・アスハの娘であるカガリ・ユラ・アスハからの命令でGAT-Xシリーズ用のOSを届けにきました!」

 

「私は連合軍所属マリュー・ラミアス大尉です!早くこちらに!」

 

 そう、マリューの前に現れたのはキラだったのである。

 

 そして、当然ながらキラが持っているのはOSなどではない。

 

「完成したOSを持っている教授との連絡が取れなくて困っていたの、でも大丈夫なのかしら?GAT-Xシリーズの扱いに関しては現在オーブと連合側で揉めているのでは?」

 

「今回は緊急時の特例として連合側に協力するようにカガリから言われてきました!早速OSを!...!?」

 

 キラがマリューの元へ行こうとしたその瞬間である。

 

 工廠を凄まじい衝撃が襲った。

 

「なに!?」

 

「まずい!」

 

 その衝撃によりそこら中が崩れ始め、瓦礫がマリューたちに降り注いだのだ。

 

 辺り一面から聞こえる呻き声は無事な者がほとんどいないことを暗示していた。

 

 マリューもまた酷く負傷しており状況はかなりまずいものであると言えよう。

 

「ケホッ...!早くストライクを移動させないと」

 

「ようやく見つけたぞ、最後の一機だけこんなところにあるなんてな」

 

 最悪のタイミングである、なんとよりにもよってこの瞬間にザフトの手がここまで届いてしまったのだ。

 

「連合が新型のモビルスーツを作ってるって聞いた時はナチュラルがそんなもん作れるわけないと思ってたが、こんな代物を作っているとはな」

 

 赤い服のザフト兵、それは彼らの中でもエリートである事を示す符合でありその兵がかなりの実力を持つ者であることを証明していた。

 

「...!」

 

 しかし一瞬のことである、いつの間にやらザフト兵の後ろに回っていたキラは近くで拾った瓦礫を大きく振りかぶった。

 

「ギャっ!?」

 

 頭に振り下ろされたその重たい一撃で、ザフト兵は一瞬にして気絶した。

 

「今のうちにOSをインストールしてそのモビルスーツを動かしましょう!」

 

「はい!急がないと」 

 

 キラとマリューがOSのインストールを行うためストライクに乗り込んだその瞬間、再び大きな衝撃が工廠を襲った。

 

「あれは!」

 

 キラの視線の先、そこにあったものはザフトのモビルスーツ『ジン』であった。 

 

-------------------------

 

「見つけたぞ!」

 

 ジンのパイロットであるミゲル・アイマンは非常に焦っている、敵の攻撃が偶然モビルスーツの頭部アンテナに当たってしまい通信が不可能になってしまったのだ。

 

 直前まで通信していたアスランやイザークたちの居場所もわからず、仕方なく当初の予定通りGAT-Xシリーズがあるという工廠を目指したのだ。

 

 そこにつけばアスランたちと合流できるだろうと思っていたが、蓋を開けてみればそこには仲間は誰もおらずそれどころか襲撃により生じた衝撃で瓦礫まみれと化した景色が広がるばかり。

 

 もはや撤退しかないかと思ったその瞬間、なんと目の前に奪取予定のGシリーズが2機も横たわっているではないか。

 

 これはなんとかして他の隊員に伝えねば!と思った瞬間である。

 

 横たわっていたはずの2機のG、その内の一機『GAT-X105ストライク』が起動していたのだ。

 

-------------------------  

 

「なんとかしないと...!この機体がザフトに渡れば多くの人が犠牲になってしまう、この腕さえ動けば!」

 

「ラミアス大尉、あなたは今このモビルスーツを操縦できる状態ではありません。

 本来なら機密事項であるこの機体に民間人である僕が関わってはいけないことは重々理解しています...ですが今は!」

 

「えぇ、緊急時の特例として貴方をこのモビルスーツ『GAT-X105ストライク』のパイロットとして認めます」

 

「了解!すぐにOSをインストールします!」

 

 許可を取ったキラは、迅速に動き出した。

 

「キャリブレーションを取りつつゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定……

 

 っ……!!なら擬似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結…!!

 

 ニューラルリンゲージ・ネットワーク再構築。メタ運動野パラメータ更新。 

 

 フィードフォワード制御再起動、伝達関数、コリオリ偏差修正。

 

 運動ルーチン接続、システムオンライン、ブートストラップ起動!!」

 

「...この子」

 

 キラによるOSインストール、いや凄まじい速度の書き換えを見たマリューは驚愕を隠せなかった。

 

 無理もない、民間人と名乗ったやつが目の前で軍事機密の塊で普通動かすどころか起動自体できないであろうモビルスーツのOSをとんでもない速度で書き換え始めたのだから。

 

 なお、後にこの時のことをキラがマリューに聞いたところ「正直引いたわ」と言われてキラがめちゃくちゃへこむのは当分先の話である。

 

「全システムオールグリーン!ストライク出ます!」 

 

 OSの書き換えが終わり立ち上がったストライク。

 

 その眼前には重斬刀を振り上げ、今にもストライクに切りかからんとするジンの姿があった。

 

「全武装チェック、アーマーシュナイダー...今はこれだけでなんとかするしかない!」

 

 瞬時に唯一の武装であるアーマーシュナイダーを引き抜いたストライクは、ジンの懐に入り込みそのコックピットを一刺しで貫いた。

 

「これで...うわぁ!」

 

 ジンを倒したその瞬間、ストライクに凄まじい衝撃が走った。

 

「よくもミゲルを!!!」 

 

 ストライクの横に安置されていたもう一機のGシリーズ『GAT-X303イージス』その機体が起き上がり、近くに転がっていたジンの重突撃機銃をストライクに向けて撃ったのだ。  

 

「くっ!?今の攻撃でストライクの姿勢が崩れて!」

 

 姿勢を崩したストライクにイージスが更なる追撃を仕掛ようとしたその瞬間。

 

『Kyurrrrrrrrrrr』

 

 つんざくような、鳥の鳴き声と金属音が混ざったような音と共にイージスに向けて鋭い一撃が振るわれた。

 

「なんだ!?」

 

 舞い上がった土煙が晴れると、其処にはキラの乗るストライクと全く同じ形で全身を紺色に染め上げた謎のモビルスーツが、そのカメラアイを鮮血の如き赤色に揺らめかせながら立っていた。

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