水魔法とスライムで無双する魔法少女(男)   作:大崎 狂花

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第2話 魔法少女(男)の日常

 翌日シュロが学校に来ると、クラスの話題は魔法少女レイス一色に染まっていた。

 

「やっぱりレイスちゃんってすごいよな!」

 

「いやー、さすがだぜ」

 

 シュロはそのクラスメイトの近くを通りながら思う。

 

(あー、やっぱり少し恥ずかしいな。こういうのはいまだに慣れない)

 

 みんな当然のことながらシュロが魔法少女レイスだってことは知らないから、けっこうストレートに褒めてくるのだ。シュロはいつもそれに照れしまうのである。

 

 シュロが自分の席につくと、前の席の男が話しかけてきた。

 

「よっ! シュロ!」

 

 この男の名は田中。シュロの友達だ。

 

「よお田中。おはよう」

 

「おうおはよう! そういやさあ! 昨日魔法少女レイスちゃんが現れたんだって! 聞いた!?」

 

「・・・・・・聞いたよ」

 

 こいつもこの話をするのか・・・・・・勘弁してほしいな・・・・・・とシュロは思ったが、その話題はやめてくれ、なんていうわけにもいかないからシュロは仕方なく聞くことにする。

 

「やっぱさあ、レイスちゃんっていいよなー・・・・・・えっちだし」

 

「は? えっち?」

 

 知らないから仕方ないのだが、本人を目の前にしてとんでもないことを言う田中である。

 

「太もももなんかムチムチしてるしさあ! おっぱいも大きいしさあ! すっごいえっちなんだよねレイスちゃんってぇ!」

 

 本人を目の前にしてとか以前に普通に教室で話すことじゃなさすぎる。ていうか声がデカすぎる。

 

「ちょ、田中お前声デカいって・・・・・・」

 

「あ、ごめんごめん。でもお前もそう思わねえ!? 絶対抱き心地良さそうだよなレイスちゃんって!」

 

「・・・・・・」

 

「あれ? お前なんで顔赤くしてんの?」

 

「なんでもねーよ!」

 

 自分の体がそういう目で見られてるのとかなんか恥ずかしい。

 

「いやー、しかしレイスちゃんって執事服とか似合いそうじゃね? 着てほしいな、執事服」

 

「は? 執事服?」

 

「俺最近執事服着た女の子が好きになってきてさ」

 

「へー。・・・・・・いやでもレイスは執事服似合わなくねえか? だって、その・・・・・・おっぱいとか大きいし」

 

(自分で自分のおっぱい大きいとか言うの、どんな羞恥プレイだよ・・・・・・)

 

 一般男子高校生が通常感じることのない恥ずかしさだ。

 

「いや逆にそこがいいんじゃないか! おっぱい大きい女の子が、あえて晒しとかでも潰さずに着る執事服って、ギャップがあってさ! なんかこう・・・・・・いいんだよ! あえて男装を完璧にさせないことでしか醸し出せない味があるというか・・・・・・! シュッとした感じ凛とした感じとでっかいおっぱいとのアンバランス感がたまらないというか・・・・・・! 日本伝統の未完成の美ってヤツ!?」

 

「いや違うだろ」

 

 そんなことを話しているうちにチャイムが鳴って先生が来たので、そこで話を切り上げた。

 

(執事服、か・・・・・・)

 

 まあ、今度変身することがあったら友達サービスで着てやってもいいかな・・・・・・。なんてシュロはそんなことを考えつつ、連絡事項等を聞くのだった。

 

 ◇

 

 さて、学校も終わってシュロは家に帰る。

 

「今日も疲れたなー。まあ、ところどころサボったりしたけど」

 

 昨日、シュロは久しぶりに魔法少女に変身した。それによりけっこう体に負荷がかかってしまったので、サボらざるを得なかったのだ。

 

 体の調子が悪い・・・・・・ということは人に話すわけにはいかない。病院に入れられて検査なんかされたら、体の中に悪魔を宿していることがバレてしまうからだ。悪魔というのは人間を襲い、人間を喰らう敵性存在だ。そんな悪魔と契約し、その力を借りているというのはバレたらまずいことなのである。悪魔憑き、とかならまだしも悪魔と契約を交わすところまで行けばひょっとしたら人類の裏切り者扱いされるかもしれない。

 

 まあ、シュロの中にいる悪魔は話した限り悪いやつではなさそうだからシュロは契約を交わしたことに関してそこまで不安に思ってはいない。妹に取り憑いてたことは謝ってくれたし、悪魔が離れてもまだ後遺症に苦しんでいた妹を治してくれたので、そこまで悪い奴ではないと思うのだ。

 

「ただいまー」

 

 帰宅して、2階にある自分の部屋に入ると

 

「あ、おにい。おかえりー」

 

 ベッドの上に寝っ転がって漫画を読んでいる妹がいた。

 

「おい、勝手に部屋に入るなよルラ」

 

「いいじゃーん。私もこの漫画好きだからさ。読ましてよ」

 

「自分で買えよ、全く・・・・・・」

 

 ルラには、悪魔憑きとかのことは全て内緒にしてある。そのせいで自分の兄が現在進行形でボロボロになりつつあるということを知ったら、自分を責めてしまうかもしれないからだ。ルラが昔倒れたことは普通に体調不良ということになっている。

 

 しかし・・・・・・

 

 シュロはベッドの上に寝っ転がっている自分の妹を見た。胸がでかい。明らかにでかい。

 

(やっぱり血筋とかあるのかな・・・・・・どうなんだろ、魔法で変身した体にそういうのあるのか・・・・・・?)

 

「何、どうしたのおにい。妹の体に欲情でもした?」

 

「するか」

 

 シュロはとりあえず、ベッドの上に寝っ転がっている妹を無視して服を着替えると、

 

「じゃ、俺はちょっと用事があるから出かけてくるわ」

 

 そう言ってシュロはどこかへと出かけて行ったのであった。

 

 ・・・・・・

 

 シュロはレイスへと変身し、その上でキャップを被ってサングラスをかけて一応変装すると家からちょっと遠いところにある廃工場の中に入っていった。

 

 廃工場の中、隅の方に体育座りしている女性がいた。いかにも怪しげな女性だ。その女性はレイスを見ると片手を上げて

 

「よっ、レイスさん。来ると思ってましたよ」

 

 と言った。

 

「さすがだな。やっぱりもう来ていたのか、商人。お前の嗅覚はやはり相当なものだな」

 

「いやいや、あれだけニュースとかでやってたら誰だってわかりますよ」

 

「早速だが、これを売りたい」

 

 シュロはそう言って肩から下げていたカバンの中から、昨日倒した悪魔から取ったツノを取り出した。首ごと落とした悪魔の頭から切り取ったのである。

 

「おー、なかなか上質なツノですね」

 

 商人と呼ばれた女性はそれを見てそう言った。

 

 この女性は商人・・・・・・それも闇商人だ。本来悪魔のツノとかそういった素材は、きちんと許可証を得なければ 取り扱えない代物なのだが、この闇証人は許可証を持たず活動しているのである。呪殺等を生業とするような裏で活動する呪術師に法外な値で売り捌いている人間だ。

 

 普通ならこういう奴らに素材は売らない。しかし、シュロにはこういう奴らにしか売れない事情があるのだ。それは──

 

「いやー、しかし色んな人からまさに英雄の如くに祭り上げられているあの魔法少女レイスさんが、まさか免許無しで活動している非合法のハンターだとは誰も思わないでしょうね」

 

 そうなのだ。悪魔や魔物を倒すためには国から発行されている免許が必要なのだ。しかし、レイスはそれを持っていない。ちゃんと免許を持って活動している者たちはハンターと呼ばれるが、レイスは正式な免許を持っていない、いわば非合法なハンターなのだ。

 

 ハンターの申請をする上では、いろいろ検査とかさせられるし、その結果、悪魔と契約して体の中に悪魔を宿らせているなんてことが知られたらヤバいことになる。

 

(というか、普通に政府の人たちに男子高校生が魔法少女やってるってバレたくないもんな・・・・・・)

 

 政府の人たちは多分魔法少女レイスの正体について言いふらしたりなんてしないと思うが、そういう問題ではないのだ。男子高校生が魔法少女やってるってバレるのが恥ずかしいのだ!!

 

 まあそんなことで免許を持っていない。だから、ちゃんとしたところでは素材が売れないのでこういうとこで売っているのだ。

 

「レイスさんが非合法のハンターだなんてことがバレたら大変ですね〜」

 

「いや、そうは言ってもみんな薄々気づいているとは思うけどな。みんな薄々そうじゃないかなと思ってるけど、言わないようにしてるだけで・・・・・・」

 

「ああー、確かに。それっぽい感じはありますね」

 

 まあ、そういうことでシュロは悪魔のツノを闇商人に売って、家に帰った。

 

「しかしレイスさんってスタイルいいですよねー。羨ましい限りです。アイドル的なこととかやらないんですか?」

 

「いや、非合法なのにそんな目立ったこと出来ないよ・・・・・・というかその、普通に恥ずかしいし・・・・・・」

 

「は? かわいいかよ」

 

 闇商人とそんなやり取りを交わした後で、シュロは家へと帰っていった。バレないように、途中で変身を解いたり、スライムに自分に化けてもらって反対方向に行ってもらったりなどしつつ帰るのだ。

 

 さて、その帰り道の途中でドーナツ屋を見つけた。

 

(お金も入ったことだし、ドーナツでも買って帰ろうかな・・・・・・)

 

 せっかくだから、シュロはドーナツを買って帰ることにした。

 

 シュロはドーナツを買った。専用の紙袋に入れてもらって、持って帰る。しかし、その途中──

 

「うーん、どうしよう・・・・・・家まで我慢できないな・・・・・・」

 

 どうしてもドーナツ食べたい欲を我慢出来なくなってしまったのだ。死ぬほどドーナツを食べたくなってしまった。

 

「仕方ない。少々行儀が悪いけど、歩きながら食べよう」

 

 シュロはドーナツを食べながら帰ったのだった。

 

 ・・・・・・さて、その次の日。

 

 シュロが教室の中に入っていくとクラスメイトが昨日と同じくらいざわざわしていた。見ると、何やら雑誌のようなものを囲んでなんか話している。

 

「何かあったのか?」

 

 シュロが自分の席に座りながら田中にそう問いかけると、

 

「ああ、実はな。レイスちゃんの記事が週刊誌に載ってたんだよ」

 

「・・・・・・え?」

 

「いやー、なんでも偶然レイスちゃんを見かけた週刊誌の記者が写真を撮ったらしくてな。見るか?」

 

「見る」

 

 シュロは田中の手からひったくるようにして週刊誌を奪うと該当記事に目を落とした。

 

 シュロが免許無しの非合法ハンターとか、実は闇商人に素材を流してるとか、みんなが薄々気づいている公然の秘密みたいなもんだとしても、実際にその現場を押さえられて証拠を撮られるのはマズい。面倒なことになるのは確実だ。

 

(とりあえず、記事を読んでどうするか考えないと・・・・・・)

 

 そんなことを考えるシュロの目に飛び込んできたのは

 

『幻の魔法少女レイス、ドーナツを食べる!』

 

 という見出しと幸せそうな可愛らしい笑顔でドーナツを頬張るレイス──シュロの写真だった。

 

「・・・・・・は?」

 

「いやー、記者がたまたま通りがかったレイスちゃんの写真を激写したらしくてさ。いいよなあ、ありがたいぜ。普段しっかりしてる女の子の気の抜けたところなんて、どんだけあってもいいからね。そこにしかない栄養素がある。マスコミもたまにはいい仕事するよな」

 

「くだらねえよ・・・・・・なんだよこの記事・・・・・・」

 

 いやもう俺の心配を返せよという感じである。

 

 よく聞くと、周りのクラスメイトもこの記事のことについて話している。

 

「へー、あの魔法少女レイスもこんな普通の女の子みたいなことする時があるんだな」

 

「なんだか一気に親しみやすくなったかも!」

 

 闇商人との取引現場を見られたわけではなかった。それは良かったものの、よく考えたら思いっきり気を抜いていた時の表情をこうやって全国に晒されてしまったわけで・・・・・・。

 

「レイスちゃんドーナツ好きなのかな!? かわいいー!」

 

(やめろおおおー!!! 見るなあああー!!!)

 

 シュロは心の中で赤面しながら叫び散らかすが、どうすることも出来ずに悶え苦しむのだった。

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